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唯、一度──(MM配信中)



 力を抜いて吐いた息遣いが荒い。
 強情な彼だから、相当無理をしているのだろうが、努力空しくその吐息には甘さが滲み出している。
 私はその様子を眺め楽しんだ。

 足に力を入れて鋼のはソファーから立ち上がろうとするが、力が上手く入らないのか肘掛けに体重を掛けたままだ。
 眉を顰め、手が痺れてきたのか、手を二、三度握る。
 おかしい所を探すというより、突如躰を襲った症状に慄いていると表現するのが正しいようだ。

 ── もう冷静な判断は出来なくなっているのだろうね。鋼の。

「どうした? 具合でも悪いのかね?」

 ビクッと鋼のの肩が揺れ、か細い眸が此方を見遣る。額に触れようと伸ばした手が触れる瞬間、鋼のはキツく目を閉じた。

 胸が鳴る。
 あの鋼のが私の目の前で信じられないくらいに怯え、戦慄いたのだ。その姿を目の当たりにした私の体に熱が集まるのを感じた。
 同じ様に熱を帯びた躰に触れ、

「少し……熱いな」

 既に汗ばんだ額に貼り付いた髪を梳く。

「……ァ」

 鋼のは消えてしまいそうな程に小さく喘いだ。
 理性が途切れてしまいそうになった私は自らを諫め息を整えた。

「一体どうしたんだね? 鋼の」

 敢えて怪訝そうに訊ねると、鋼のはゴクリと生唾を飲み込んだ後、金の眸で私を見詰める。どうにかしてくれと訴え掛ける。

 はは…、私が君を貶めた張本人なのに。

 助けを求めるか?
 無知とは何と哀れな事か。

 心の中だけで蔑み嘲笑い。
 ─── 同時に、舌打ちした。

「随分苦しそうだな。
ベルトを緩めた方が良いだろう。少しは楽になる筈だ」

 ベルトを緩める為に鋼のの躰を仰向けに直すし宣言通りにベルトを緩めた。ついでに上着の留め具も外す。
 その間鋼のはずっと無抵抗でソファーに躰を預け此方を虚ろな目で仰ぎ見るだけだった。

「どうだい? 楽になったかな?」

 私は偽善的に微笑むと、鋼のはふるふると首を振った。

「大佐……、躰が……熱い……ッ」

 気を抜いたら直ぐ様理性のリミッターが外れそうな程にその様はか細く、鋼のの肩に触れる手に思わず力が籠もる。それと同時に鋼のは眸を細め、ハッと息を呑む。
 それは既に理性の限界を裏付けるようだ。

 ─── さぁ、ゆっくり堕ちておいで…‥。鋼の。


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