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ぎんさんこばなし。
あったかいいばしょ(沖田と新八)
どうしてか


凡庸がいいのか、

いや、
真っ直ぐさと、

無償で与えられる心地良さ。



    ****


「はァ、毎朝良く懲りもせずにねェ」


地面にぶっ倒れている上司を見て思わずため息が零れた。
日課である熱烈なアタック(ストーキングとも言う)で、相手である女性にこてんぱんにのされて気絶している。
全く毎朝迎えに来なくちゃならねェ、俺の身にもなって欲しいもんでさァ。


「本当に、逆に生きてるのが不思議ですよ、もう」


目の前で黒髪が揺れる。ここ志村宅の住人である、志村新八だ。
あのプロレスラー顔負けの強靭な姉にそっくりな外見なのに、全く正反対な穏やかな性格の弟である。


「はい、お茶」
「菓子もあんのかィ?」
「ありますよー」


もう飽きる程の慣習になっている毎朝の事。
近藤さんが目を覚ますまで、縁側でのんびりと2人で一服するのだ。

気が良いのか、いつもにこにこしながら出してくれるお茶は苦くも無く、熱くも無くほっとする味だった。

だからつい通いたくなってしまう。

ジミーを黙らせてでも、この当番をするかいがあるってもんでィ。


「あー、良い天気ですねィ。こんな時には寝るに限りまさァ」
「沖田さんはいつも寝てるじゃないですか」


じゃなかったら、土方さんに悪さしてるでしょう?と付け足す様にしてから、くすくすと笑う。

優しい風が庭の木々を揺さぶって緑の匂いがした。
信じられない位穏やかな時間。暖かい縁側と、美味しいお茶。

普段の血生臭い日々とは大違いだ。
まァ、そっちも嫌いじゃ無いんですがねェ。

こういうのも良いと思えるのも、多分自分を特別扱いしないヤツが居るから。

異凝でもなく、

人殺しでもなく、

ただの人として、畏れる事なく接してくれる、

俺と同じ様な類の人間でもない、

普通のひと。


だから、万事屋の旦那もあのチャイナもご執心なのだ。

このメガネに。


「どうしたんですか?」


ほんわりと笑顔で、こちらを伺ってきた。
くすぐったいと心がゆれる。
どうやらまだ俺の中にもちょっとは優しい気持ちになれる部分があったみたいでさァ。


「あー、
こんな良い所に枕がァー」
「ちょ!
それ僕の膝なんですケドォ!」






☆☆☆☆
新八誕生日の連作その1。

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あきゅろす。
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