俺の大事な土方くんは、ひとつ事にとても深く情熱を傾けます。 大学の部活動なんて、ハンパなくキツイ。サークルとはテンションが違うし、もちろんレベルも違う。 再会した土方くんに、ある日サークル活動についてさりげなく訊いてみた(もちろん合宿だのイベントだので、俺の十四郎の時間を盗られたくなかったからだけど)。 『剣道部』 それ以外何があるんだ、と言わんばかりのびっくり顔で、十四郎は俺を二度見した。 『え……大学の?』 『え? 他になんかあんのか?』 『いや、アレだ……サークルじゃなくて?』 『いや、サークルに道場貸さねーし』 『まあ、そうだよな……ははは』 オメー何めんどくさいことに首突っ込んでんの!? 公認の部活って、どんだけ暑苦しいの!? って内心叫んだけど俺は賢明にもくちに出さなかった。 それで、体育推薦でも一芸入試でもないのに部活なんぞ始めた経緯が聞き出せた。だいたい俺が担任してたときにオメーは推薦蹴っただろ。どうしても一般入試を受けるって言い張っただろ。 「それは……文系転向だったし……、そもそも全体的に成績も良くなかっただろ」 「だから体育推薦にしとけって言っただろーが」 「でもっ! 俺が大学でヘマしたら、銀八に迷惑かかるし!」 「……」 まあ、あの時点ではある意味正しい判断だ。推薦されれば母校との繋がりが続く。すっかり忘れるべき俺とも、なんやかんやで吹っ切れなかったかもしれない。どっちでも同じだけど。吹っ切れやしなかったんだけど、2人とも。 「で? 剣道やりたかった、と」 「最初はそんなつもりなかった。けど、近藤さんも総悟もちょっと見ないうちにスッゲー強くなってて」 「あー、まあね……」 「ちょっと見学するだけのつもりだったんだ。少しだけ、竹刀触れたらって」 「それが、振るだけになって、1回だけ立ち合い稽古になって、気がついたら、ってか」 「……おー、」 筋がいいとかなんとか褒められたらしい。当たり前だ。高校生の時にもう有段者だったんだから。ついでに言えばなんちゃらの規定がなければ、中学のときに三段は行けたから。俺の土方くんが弱いはずがない。 案の定入ってみればレギュラー株になった。体育推薦の連中は面白くない。上級生なんか特に目の敵にする。 「知ったこっちゃねえよ」 男前な俺の恋人は、鼻で笑うのだ 「ソイツらより、強きゃいいんだ」 そのためにこの子はハンパない練習量をこなす。当然、帰りは遅い。 心配にもなるじゃん!? わかる? ただでさえめんどくせえ上下関係があるトコに飛び込んで、下なのに実力があって、愛嬌振り撒くことなんてこれっぽっちも考えなくて、ただひたすら練習に打ち込んでんだぜ? 男なんてなぁ、ちっさなプライドを守るために下らねえ嫉妬して、他人を引きずり下ろそうっていつもどっかで考えてる生き物なんだよ。俺は自他ともに地に落ちてるから考えないけど。あ、でもあのアナログスティックに給料減らされたらキレるわ。間違いなく。うん。 そこにキミみたいな可愛くてキレイでストイックな子を放り込んでごらんなさい、て。 「食われるって! いや、マジで!」 「は? 何を? 腹へったのか?」 「違アァァァう!」 |