俺の可愛い土方くんは、とても負けず嫌いです。 「もうコーヒーいらねっつの!? また今度教えてやっから! な?」 「もう覚えたわ!! 今度こそ成功すっから見てろ!」 十四郎はこう見えて不器用だって、最近確認した。 高校のときもよく沖田くんにケータイ取られたり物落としたりしてたっけ。 準備室を片付けてもらってたときも、何個かカップ割ったよ。 俺としては、この子のきれいな指が切れたりしたらどうしようって、そのたんびに頭から血が引く思いがして、思わず叫んじゃったもんだったけど、この子はいつも悲しそうに謝った。 『すいません。かえって散らかしちまって』 あの頃は失敗するたびに、もうここに呼ばれないんじゃないかって心配になって、もう一回やらせてくれなんて言い出せなかったって。 ごめんね。 そんなこと絶対ないって、あの頃の俺は言えなかった。 もちろん、怖くて。キミの輝かしさが。 「そんな難しくねーんだけどなぁ」 「んな!? わかってらァ!」 コーヒーをインスタントでしか飲んだことがないって言ってたから、昔使ってたメーカーを押し入れから引っ張り出して、豆轢いて淹れてやった。 それを見て、自分もやってみたいって言ったんだ。 イヤやってみたいなんて可愛い言い方じゃないのよ、もちろん。 『それくらいなら俺でもできるからセンセは休んでろよ』くらいの勢い。 かわいいなあ、とはもちろん思ったけど、ちょっと可笑しかった。 こないだ一緒に料理してみたら、結構な被害が出た。 さすがの俺も、もう見てるだけでいいよって言っちゃったからね。 しゅん、てしてるのが可愛くて、速攻料理終わらせてご機嫌とったけど。 あれが悔しいんだな。 「なあ、俺お腹ちゃぽちゃぽー」 「飲まなきゃいいだろ! 取っとけばいいだろ!」 「えー、淹れたてが美味いのにー」 「ちょっと待ってろ! 今回は成功だから!」 しょうがない。 アイスコーヒー用に凍らせとこうっと。 もちろん砂糖いっぱい入れちゃうもんねー。 |