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3Z卒業後篇【見られる】

「とうしろ……あ、ヤバかった?」
「えっ何が!? 何のことだか全然わかんないんだけど!?」
「そう。ならいいや。メシ出来たぞ」
「いま行く!」




今日は俺んちでデートだ。いくら恋人だって見せらんねえモノがあるから、隠してたとこだ。
(たとえば就職課に出す提出物とか。これは銀八には見せない。びっくりさせてやりたいから)

隠し事は、誰にだってあっていいと思う。


「え、これ!? 今作ったのかよ!?」
「まっさか。一部はウチで仕込んできたよ」
「すっげー!どうやって持ってきたんだ!?」
「ん? まあ、いろいろ。汁物は持ってきてないし」
「めちゃめちゃ 美味そう!」
「よかった。しっかり味染みてるし、あつあつだよ」
「うわぁ、いい匂い! いただきまふ」
「食う前に言えよ行儀悪ィなあ」
「出汁は? もしかして」
「作ったし冷凍もしてあるから。味噌汁とかうどんとかにも使って?」

今日はモツ鍋。そろそろ鍋のシーズンでもなくなるし、モツ鍋って俺は外で食べるヤツがあんまり好きじゃない。でも、銀が作ったのだけはすっげ美味いんだ。だから今シーズンの鍋の締めに、これをリクエストした。


仕込んできたって、モツの臭みを取るために家でなんかしてきてくれたんだろ?
野菜はここで煮込んだのかな。歯ごたえが少し残ってるのが、俺は大好きだ。

「店出せるって、これ」
「なーに言ってんの。売ってンのより美味いから」

知ってるよ、どうして?
あ……、そうか。
作った人にとっちゃ売り物と同じじゃあ面白くねえのか。

「美味い」
「ん。よかった」

教室で見てた緩い笑顔と変わらないはずなのに、なんでこんなにドキドキするんだろう。

「どうしたの?」

眼、かな。
眼が違うんだ。

「そんなマジマジ見られっとハズカシーんですけどぉ」
「見たことなかった。そんな顔」

銀には、通じたらしかった。


「見せねーもん。他の奴には」


重そうな瞼の奥で紅い瞳が煌めいてる。
こんな眼が見られるのは、俺だけなのか。

すげー、幸せだ。




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あきゅろす。
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