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3Z卒業後篇/半同棲【食べる】


僕の大好きなひとは、料理がとても上手です。






高校教師なのにレストランのシェフみたいなのも作れる。
そうじゃなくて、アル物でなんとかしちゃうことも簡単にできる。
初めてうちに来てもらった日、軽く夕食を取りたくて食べに行こうって誘ったら、自炊しないのかって呆れられて、冷蔵庫開けられた。や、もちろん『開けていい?』って聞いてからだぞ?

確か卵しか入ってないはずだったし、調味料だって俺はマヨネーズが作れれば問題ないから、塩と酢ばっかりで、その他は自分でも忘れてた。
なのに、ほんの15分か20分で、銀八は味噌汁と出汁巻き卵を作ってくれた。
ちゃんとかつおぶしで出汁も取ったんだって。そういや小分けのかつおぶし、買ったかもしれねえ。マヨネーズを和風にしたらどうなるかと思って。

もちろんマヨも手作りで、めちゃめちゃ美味かった。うっかり『次は材料揃えとく』的な、催促っぽいことを口走ったくらいだ。

あれからもう、何度も銀のご飯を食べた。
うちで作ってもらうことも多かったし、そんなとき銀は、いつも多めに作って冷凍してってくれた。ちゃんと喰えよって。
銀んちで食べるときは、野菜を無闇に食わされる。でもマヨネーズが美味いから、苦にならないな。肉が入らなくなるのが残念だけど。

ホントに何でも作れるんだ、あのひとは。
体調崩したってバレたらあったかいうどん作ってくれる。出汁が利いてて、マヨネーズなしでもいい匂いがして、匂いだけで腹が減る。
試合の後腹ぺこで訪ねれば、カラッと揚がったきつね色のとんかつが出てきた。衣がサクサクなんだ。この俺が一瞬マヨネーズ掛けるのを躊躇ったくらい。そんで、中身は肉の水分?肉汁ってーのか? とにかくじゅうじゅうなんだ。
夏バテして食欲が失せたら、そんなときこそあったかいモン喰えって野菜スープ作ってくれた。

『やーオメーに食わせると思うと、ちゃんとやるんだよねコレが。ガラスープなんか作り置きしちゃってさ』

……スゲー。
料理しない俺から見れば『ガラスープ』なる物を『作り置き』するってことは、ただ漠然とスゲーな、って感心するばかりだったけど、こないだ銀の手伝いをした。

『茹でこぼすんだぞ? わかる?』

それくらい簡単だと思ったら、

『まだ沸騰してないだろ。中まで火ィ通しちゃって……うぉい!? 噴いちゃダメ! 怪我すんだろ!?』
『野菜は固いのからな? 葉っぱ先に入れないでェェ!?』
『じゃあ、レモンの皮むいて。丸ごと入れるから、切るなよ……って、おまえの手も切るなァァァ!?』

見てていいよ、って優しく言われたけど、アレはやるなってことだよな。チクショー。次は見てろ。


でもこんな手間掛かることを、別の料理作りながらパパっと終わらせちまうくらい、銀は料理に慣れてるし上手い。
それも、お、俺のために作ってくれるなんて……


幸せだ、俺。




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