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万事屋未来篇
起床する【万事屋の日常 1】




「十四郎」
「んー……」
「とうしろう」
「んんー」
「朝だよ、起きて」
「んー、」
「起きないと大変なことになるよ」
「んー」
「俺起こしたかんな。知ーらねっと」






ここはどこだ。
俺は誰だ。
なんか体痛い。
いい匂いがする。
腹減った。

「あっ!」

思い出した! あの野郎!
しかしとにかく腹が減ったので勝手知ったるリビングに出て行った。
そして俺は予想外の光景を見た。

「……俺の飯は?」
「寝呆けんのも大概にしろヨ初日から寝坊たァいい度胸アル」
「土方さんも要りました?」
「当たり前だろ!? ね、寝坊は……俺のせいじゃねーし」
「あれー? 銀さんのせい? 銀さん悪くないよね、アレ試験だもの、それに俺起こしたよ。親切ぅ」
「テメーが元凶なんだから当然だ! 起きるまで起こせよ!」
「ほらほら、そんなこと言ってるうちにご飯なくなっちゃいますよ。神楽ちゃん、土方さんの分残しとかないと」
「働きもしない新入りにご飯食べる資格はないネ」
「食わなきゃ働けねえだろーが!」

やっとチャイナから飯を一人前ぶん取った。あと、冷めた味噌汁と湿気った海苔も。卵はチャイナに全部やられてた。
どういうことだ。なんで人数分用意しないんだ。貧しいからか。でもあの炊飯器、デカイよな。なんで分けねえんだ。

「黙ってりゃ自分の飯が出てくるとでも思ってた? 真選組とはちげーんだよ。神楽の試験のとき言っただろ。生半可な覚悟じゃ生きていけないって」
「生存競争のことかァァァア!?」
「うるさいネむぐむぐ。ご飯ははぐ、静かにもごもご食べるネあぐあぐはむはむんぐんぐ」
「テメーこそもうちっと落ち着いて食え! なんで炊飯器抱えて食ってんだ!?」
「茶碗洗う手間が省けんだろ。これだから台所に入ったことのねえヤツは……」
「!」
「銀ちゃーん。私コイツの作った黄色いドロドロご飯食べたくないネ」
「あァ!? マヨネーズ嘗めてんのかゴラ」
「舐めたくないんだヨよく聞けヨ」
「め、飯くらい炊けるぞ……セットすりゃいいんだろ」
「ダメダメー。あのな、ウチは電気代ヤバくなったら鍋で炊くから。だいたい十四郎、米研げるの? 水加減わかる?」
「う、」
「銀ちゃーん私べちゃべちゃご飯食べるの嫌ネ」
「うっせーオメーも少し黙ってろカチカチご飯のTKGばっか食わせやがって! うんざりなんだよ俺も新八も!」
「まあまあ……これで万事屋もご飯作れる人の割合が二分の一になっちゃったわけですし、土方さんを食事当番にするのは、僕もちょっと」
「オィィィメガネ! どーいう意味だァァァ!?」
「そーゆう意味だ。オメーは黙って飯食ってろ。マヨ掛けんなよ」

どどど、どうせ俺は銀時みてえに器用じゃねえし。けど飯くらい、つか飯当番くらい屯所で……あれ?

「やったことねえんだろ。隊士諸君だって鬼の副長が炊いた飯なんざ喉通らねーだろうよ。心身ともに」
「どーいう意味だァァァア!?」
「飯当番は当分やんなくていいよ。追い追い教えたげるから」
「ぐぐぐ……」
「俺たちだって二分の一の確率じゃあ生きた心地しねーわ。神楽だけでも死に心地なのに」
「ぐぬぬぬぬ……」

ん?
確かメガネは退職して、道場主になったはず。

「オイなんでテメーここで飯食ってんだ」
「ああ、今朝は姉上が張り切って朝ご飯作り始めちゃったんですよ。だから僕は抜けてきまして。近藤さんが食べてると思いますよ」
「ああそうか、気の毒に……じゃねえよ! テメーがここで食ったらたたでさえ少ねえ飯がなくなんだろが!」
「オイオイ十四郎くん、口の利き方には気をつけなさいよ。まともな飯作ってんのは新八と俺だかんね」
「なんでだ」
「飯はねえ。生命線だからね。ウチも新八も利害が一致するわけよ。だから飯当番だけは万事屋でカウントしてんの」
「そ、そうか」

道場の飯当番こそ食客どもにやらせればいいのに。あいつら全員できるから。近藤さんでさえできるから。あれ、できないの俺だけ?
銀時とメガネで二分の一なら、残りの半分は……

「四人の二分の一は二人でしょうが。大丈夫?」
「四人……」
「そ。オメーも万事屋の一員になっただろ。今日から働けよ」



うーん、なんか引っかかる。
そういえば昨日、いや今朝か、

「契約書」
「そうそう。書いただろ」
「見せろ」
「はい?」
「なんかボヤッとしか覚えてねえ。見せろ」
「ええー!? 見たら撤回するの!?」
「撤回はしねーがどんな契約だかよく見せろっつってんだ。早くしろ」
「破棄しないよな?」
「? さてはなんか怪しい……」

「銀さん、もう腹括ってくださいよ。僕たちだって怒られるの嫌ですからね」
「そうネ。私もサインしちゃったアル」
「えー……じゃあ見せるけど、絶対見るだけだかんな」

なんかアヤシイ。なんかどこじゃない、非常にアヤシイ。
銀時が渋々出してきた紙切れを覗く。



あれ、見たことある気がする。
役所の届け出用紙ってこんな、薄っぺらい紙だったような気がする。
つうかコレ見たことある。
近藤さんがお妙に書かせようとしてぶん殴られてた気がする。



「すいまっせーーん! 調子乗って証人欄にサインしちゃいましたァァァア!」
「一度書いてみたかったネ、役所に私のサインが残るんでしょ? すごくね?」
「ハイ見せたから! この契約は一生モンです! 破棄は許しません!」


「……」


なんか違う。
スッキリしねえ。
契約って、ある意味そうなんだろうけど。
わかってるけど。阿呆らしいとは思うけど。

「えっ!? 土方さん!?」
「……っせえ」
「ニコチンコ、嬉し涙……アルよな?」
「うっせえ黙ってろよォォオ!」





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