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万事屋未来篇
新規採用をする【人事担当側 3】



「書店は指定したの?」
「いんや」
「じゃあロケーションからして失敗ね。大型書店にはバーコードシステムがあるのは常識ですもの」
「ぴっ、てやつな」
「そうよ。文字通りレジを通さなきゃいけないんだから、目立たないようにお金置いて帰ったら万引きじゃない」
「小型書店でも犯罪だよね」
「犯罪じゃないわ。了承を得られてないだけで」
「それが犯罪だろ」
「でも店に損害は与えてないでしょ? バーコードは集計にもなってるんだから、お店に迷惑掛けてるもの」
「どっちもどっちだろ」
「あの男の肩を持つの!? そうやって私の嫉妬心を煽るつもりね、いいわ乗ってあげるわ! もっとイジメなさい!」
「そういうのいらないから。で、どうなったの」
「ああっ冷たい銀さん! もっと言いなさい、もっと!」
「いいから。どうなったんだよ」
「普通に出口で捕まってたわ。奥に呼ばれてたけど。逃げればいいのに変に常識ぶるから、店員にフルボッコにされてたわよ」
「フルボッコて……時が時なら『真選組である!』って叫んで終わりなんだけどなぁ」
「真選組なくなったんでしょ。いい気味だわ、私たちなんかとっくの昔にリストラされてたのに」
「ああ……そうね、それは言える」
「それにあの人目立ちすぎ。とても隠密としては使えないわね」
「あっそう」

あの試験が妥当かどうかは置いといて、本職の忍者がダメ出ししたんだからコレはダメだろ。



そんなわけで、ネタは割れてんだよ十四郎。
そもそも真選組が解散になったのに、真っ先に銀さんのこと思い出してくれないトコがもうダメだよね。
万事屋の前にゴリラにお誘い受けちゃってるなんて最悪だよね。まだゴリラの飼育員したいの。飼育員交代しただろ、飼育員っつか同類だけど。メスゴリラだけど。
ヅラに誘われるなんて論外だろ。昨日まで敵だったんじゃないの。なんで会っちゃうの。俺より先に。


銀さん、面白くないです。


激辛採点してやったら、初めぽかーんとして、だんだん顔色が悪くなってきた。
ふん。俺がいつでも甘いと思うなよ。

「でも、俺も十四郎が強くて頭イイのは良く知ってるからさ。最終面接は、しようか」
「……お願いします」
「もう遅いし神楽寝てるし、俺の部屋でいい?」
「お、おー……」

お願いしますだって! お願いしますだって!
半分許した!
残り半分は、

「てめッ、最初っから、これが目的で!」
「いやいや。ちゃんと全員に対抗してもらっただろ? 紹介も兼ねて」

むろん布団の上でお願いしてもらいますよ。

「あっ、まて、本屋! 本屋は」
「新八はメガネが本体だからアレでいいんだよ。つか別のこと考えてんじゃねえ。集中しろ」

新八もアレはアレで男だろ。お前布団の上で丸裸にされてんのに他の男の話なんかすんの。減点。

「三回イけたら採用ね。頑張って」


明け方まで弄くってたかな、うん。だってずい分長いことお預け食らってたんだぜ? しょうがねーよ、銀さんの銀さん待ちくたびれてたんだもん。

「なんか言うことないの?」
「おねが……も、やめ、」
「違うなァ。正解言えるまで終わんねーな」
「ぁ、あ、もっイッた! さ、さんかいイッた! も、できな……」
「ダメだよ十四郎、コレ試験だからね」
「ぁーーーッ! ごめ、なさい」
「何が?」
「ごめん、なさ、」
「だから何が」
「もうヤだァ……できないから、ごめんなさ、」
「違う」
「―――ッ! ひ、」
「もっと早く来ると思ってたんだよ、俺は」
「ぃ、ああぁ! う、ごかなっ、で、も、うごくのヤぁ」
「ヅラにゴリラに、あとなんだっけ? なんで真っ直ぐ俺んトコ来ないの」
「あっ、ぁ、ご、めんな、さッ」
「怒ってんだよ俺は。わかる?」
「ごめんなさい……ッ、あああ!」



外が明るくなり始めたころ、十四郎の面接試験を終わりにしてあげた。
声も出ないみたい。身体を拭いてあげてる最中から、早くもウトウトし始めた。

「十四郎、寝る前にさ」
「んぅ」
「契約書にサインして」
「ぅう」
「お前が面接に来たとき用に、ちゃんと用意してあんだからさ」
「うー、」
「はい、ここね」
「ん」
「おけー。ようこそ万事屋へ」



それだけは聞こえたらしい。
俺の花嫁さんは、嬉しそうに笑って目を閉じた。

どこに出す訳じゃねーが、書いておきたかったんだよ。
俺とお前の連名で。

「よろしくな、奥さん」


そんな俺の声は、ぐっすり眠る十四郎に聞こえるはずもなかった。





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