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万事屋未来篇
業務連絡をする【部下の考え】

「つき合ってたってのは、希望的観測かな」


 気が済むまで殴り倒して、心なしか神楽にやられたときの三倍くらいに膨れ上がった顔の銀時が言う。嘘ばっかりに決まってる。


「俺は好きだった。あいつはそうでもなかった。ただ俺に利用価値があったからヤッ」
「そこまで詳しく言わんでいいわァァア!?」
「ギャアアアアアア! もう勘弁してくださいィィィ! お前と被った時期なんて一秒もなかったし! つかお前がこの世に居るってことも知らなかった頃だし!」
「当たり前だァァア!」
「ちょ、やめてェェエ! お前が聞きたいって言ったんだろ!?」


そういえばそうだった。
それにもう少し詳しく聞かねえと落ち着かねえ。納得いかねえとも言う。それにはこれ以上ボコらないほうがいいだろう。


「んで?」
「はあ!? まだ何か言わなきゃダメなの!? そんだけだよ今度はマジで!」
「なんで……離れた」
「そりゃ戦況が戦況だったから分散しねーと一網打尽だったし! 鬼兵隊はバカみてーに強かったから切り離して単独で戦わせるのにちょうど良かったし」
「じゃあテメーは今度戦になったら、俺がバカみてーに強いからって切り離すんだな」


「そんなわけないだろ! おめーは別だ!」


銀時は叫んだ――それで俺の溜飲は清々しく下がった。なんだ、俺にベタ惚れか、バカめ。安心してねえから。ホッとなんかしてねーからな。ちょっと緊張が緩んだけど。それは認めるけど。


「十四郎だったらおんなじ目に遭っても一緒にいるよ。最後まで」
「ん?」
「あ……もういいよな、全部言うわ」
「テメッ、まだ何か隠してやがんのか」
「自分でもあんま認めたくないっつか。自慢じゃないし、当時結構ヘコんだからねコレ」
「?」


「あいつ、俺を囮にしようとしたんだ。俺の首持ってけば幕府は簡単に高杉を懐に入れるだろ。そこを内側からぶっ壊すつもりで、俺の寝首掻こうとしやがった」
「!?」
「好きだったからさ。俺ってそんなモン?て、ヘコんだ……俺の首ひとつでもしかしたらあの戦が終わってたかもって思ったこともあった」
「そんな……」
「でも、俺が死んだ後に上手く行くかどうかなんて、俺にはわかりっこないだろ? それは嫌だった。もしかしたら俺がいたほうが良かったかもしれないし、そんなのわかんねえだろ?」
「……」
「だから生きることにした。高杉を切り離せって言ったのは俺だ。あんとき止めてれば今、あいつは別の生き方してたかもしれねえ。それもこれも全部、仮定の話だ」
「仮定……か」
「そ。だからどっから話したらいいかわかんなくて。隠してた訳じゃないんだぜ?」


笑って見せるのが痛ましかった。
お妙はおそらく、桂に中途半端な話を聞かされたのだろう。あのバカ役人のことだから、アイツ独自の観点なんか付け加えたに違いない。もの凄くトンチンカンな。
そこへ持ってきて何でも信じちまう近藤さんや、ちょっとズレた女心の持ち主のお妙が、更に自分の主観を交え、俺をなんかエラく可哀想な生き物かなんかと思い込んだんだろう。


「おんなじ目に遭ってもってどういうことだ」


俺がお前を殺そうとしても、ということか。
そんな日がくるはずはない。


「いい加減、慣れろ。俺はテメーんとこに必ず帰ってくる。そのテメーを殺っちまったら、俺の帰るとこなくなっちまうだろアホ」


銀時はぽかんと俺を見上げて、銀色の睫毛を何度か動かしたあと、


幸せそうに笑った。
綺麗な笑顔だった。



「イテテテテテ、これ痛いって! しばらく顔の筋肉動かせない!」
「ガタガタ騒ぐなみっともねえ。しょうがねえなァ……氷出してくる」
「俺ってやっぱり愛されてるぅ」


(そうだな、なんて言わねえからな!)





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