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万事屋未来篇
就職活動をする【万事屋】





バレてたとは思わなかった。なんでバレたんだ。しかも近藤さんって相当ニブいと思ってたんだけど侮れない。総悟あたりが勘付いて言いつけたのかもしれない。チクショウ。やっぱり抹殺しとけば良かったあのクソガキ。

二、三日恥ずかしくて表を歩けなかった。そうこうするうちに最後の隊士がいなくなり、俺だけ取り残された。
気まずい。早く出てってくんないかな、みたいな視線を感じる。ついこの間まで自宅だったのになんだこの居心地の悪さ。我慢ならない。

引き篭もってた間に良く良く考えたんだが……万事屋でいいんじゃないのか?

就職先としては確かに胡散臭い。
だが年がら年中付き纏ってきて『一緒に住みたい』『毎日顔が見たい』って散々喚いてたんだ。俺が行ってやればデレデレして両手広げてウェルカムだろ。
ただしアレが毎日続くのかと思うと若干ウンザリするのは仕方ないと思う。アイツが飯に納豆みたいに小豆掛けて食うのを毎日見ることを考えてみろ。誰だって嫌だろ。
納豆はいいよ。マヨネーズに合うし。だが小豆はダメだろ。マヨ掛けたって美味くなるとは到底思えない。マヨがもったいない。
そんで自分はそんなもん食ってる癖に俺のマヨネーズを否定するヤツと一緒にやっていけるのか俺は。
仮に通いにするとしても、アイツ給料払わなそう、てか実際メガネやチャイナに払ってねーし、俺が部屋借りられるほど金くれんのか。まあ俺が業績上げるけど。上げるけど、今現在借金とかないだろうな。ああ、家賃滞納してるって言ってたな。ダメだろ。俺に給料払えないだろ。まあ俺が稼ぐけど。

問題はまだある。チャイナと3人で住むとしたら、アイツどうすんだ。つまり……夜だけど。
つつ、つきあってる間はチャイナが道場に泊まり行ってるときくらいしか万事屋に行かなかった。そりゃ子どもに見せられないに決まってんだろ。子どもじゃなきゃいいかって、いいわけないだろォォオ! アホかチャイナが大人になるまで触るなとかアイツ無理。俺は平気だけど。多分。
だからと言って今までみたいに宿取る訳にもいかないだろう。今まで俺は高給取りだったからな。ラブホ代くらいなんてことなかったけど、アイツと財布がひとつになるってことはジリ貧生活な訳だろ。そんな勿体ない金の使い方できねえ。財布はひとつでいいけどカラダはふた……イヤなんでもない。

金銭面は俺がビシビシ指導するとしても、アイツのぐうたら度合いとか俺にベタベタしてくるのとか、俺は我慢できるのか。もしくはアイツを躾け直せるのか。
……やればなんとかなるかも。
そうだな、アイツ俺にベタ惚れだし俺の言うことはなんやかんやで結局聞くし、やめろって言ったらやめるだろ。うん、そうだ。

心を決めたら即行動だ。

俺は屯所だった屋敷を辞した。
上京してから俺の住まいはここ以外にあり得なかった。別の場所で暮らすことなど想像もしなかった。感慨は尽きない。
持ち主に礼を述べて、いつも通りに門をくぐった。この門を出る時にはいつでも、帰って来られない可能性を思っていた。だが俺は生のあるうちにここを出て、もう帰らない。なんだか不思議な気分だ。
銀時の野郎もさぞ喜ぶだろう。あんだけ屯所に帰るなウチに住めって大騒ぎしてたんだから。しょうがねえからテメーんち行ってやるよ。そんで根性叩き直して、バリバリ働かせてやる。





「ふーん。ウチで働きたいの。言っとくけどウチ、採用試験あるよ」

あれ、なんか想像してたのと違う。
もっとこう、歓迎されるかんじかと思って……

「ウソつけ! ガキが働いてんじゃねえか」

危ない危ない。騙されるとこだった。どうせ照れ隠しだろ。いつまで保つ訳でもないのに意地はるなって。

「あのねぇ土方くん。ウチの子は人並み以上だから。規格外だからね。知っての通り」

なのに銀時は死んだ魚の目でぼんやり俺を見るんだ。事務机の向こう側から。いつもみたいに駆け寄ってくることもなく。
おいおいテメーこそ知っての通り、俺は真選組の元副長だぞ。ガキ以下ってこたァねえだろう。何言ってんださっさと雇え。帰るとこねえんだコッチは。

「じゃあ、試験受けてみる?」
「あああ当ったり前だろーが! テメーの作った試験なんざ屁でもねえわ!」
「ああそう」

銀時はぼんやり頷いて、何やら机の中を漁っていたがやがて俺に向き直った。



「最初に神楽から酢昆布一箱、引ったくってくること」
「……は?」
「試験の公正を期すため神楽には連絡しませーん。それができたら定春を散歩に連れていけ。ただしその前にいちご牛乳を、そうだな、五本飲ませてやって。十四郎だから二時間でいいわ」
「犬の散歩? 犬にいちご牛乳飲ませるって虐待だろ」
「ハイハイ、質問は受け付けません。ちなみにいちご牛乳は虐待じゃありません。親衛隊長とのガチンコはもう終わってるからいいけど、お前負けてるからね。減点対象だからアレ」
「あれは俺じゃねえぞ! 俺が最後までやってたら勝ってたからな!」
「トッシーもお前の一部なんだろ。負けは負けだから。代わりに本屋で好みの雑誌を選んで、店員に気づかれないように……」
「万引きだろそれ!?」
「何言ってんの、金は払うんだよ? 気づかれないようにね。あ、今手持ちナイから自腹でね」
「なんだそれェェエ!?」
「全部クリア出来たら、銀さんが面接しまーす。じゃ、いってらっしゃい」



――と表に放り出された。
どういうことだってばよ。ああああいつ、俺に散々何か言ってたのは、うううウソだったのか?

知るか。売られた喧嘩、いや試験とやらは勝ってやろうじゃねえか。
後で吠え面かくなよクソ天パ、見てやがれ!






《土方十四郎の就活記録》
ベンチャー企業/求人募集なし
→第一次試験に挑戦中。



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あきゅろす。
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