俺の貯金が半分くらいに減ってから一か月。 「ほんとごめん。いい加減許してマジで」 「なんで謝る側が高飛車なんだよ。そんないい加減な詫びじゃ許せねえから」 銀時はまったく反省していなかった。俺はなんてダメ旦那を持っちまったんだろう。泣けてくる。 だが泣いてても金は入らないし俺の貯金が戻ってくるわけでもない。 だから俺はがっつり働くことにした。 ていうかコイツら、役割分担てことを知らないのか。なんで全員で猫探しとかしちゃうんだ。一人でいいだろ。 「今度から俺が仕事を割り振りする」 と宣言してやった。 銀時は嫌な顔をした。失敬な。 「いいけど最終的に決めんのは、俺な」 「テメェ俺に指図する気……」 「するよ。ココ、俺が家主だからね」 「……」 なんでこういう時だけは無駄に煌めくんだろう。なんで俺はいつもこれに騙されるんだろう。ちょっと惚れ惚れした、ほんのわずかな隙に、銀時はもう決定事項として話を打ち切ってしまった。俺の後ろで神楽が諸手を挙げていたのは、俺の知るところではない。 翌日、引越し手伝いの依頼が来た。同時に犬の散歩と、ストーカーに遭ってる女から犯人を取り押さえて警察に突き出してほしいという依頼があった。 「神楽。犬の散歩」 「え、いいアルか」 「当たり前だ。ストーカーのほうは、俺は面が割れてるかもしれねえから銀時。引越しは俺と、できれば新八で行く」 「電話番はどうするネ」 「留守電にしとけ」 文句ねーだろ。妥当だろ。 見ろ、仕事ってのはこうやってこなしてくんだ。そうすりゃより多くの仕事量を効率良く…… 「ダメだ。ストーカー被害に遭ってんのは女だろ。神楽が行け。やり過ぎんなよ」 「やっぱりアルか……アイサー」 「引越しは手伝いだけだから俺一人でいい。犬の散歩は新八に頼むから、十四郎は電話番で残れ」 「な、なんだと!?」 この俺が、たかが電話番だとぅ!? 「たかがって言うけど、お前少し慣れたほうがいいよ」 「ンなもん、慣れるもなにも……」 「ココは客商売なの。役所じゃねんだからカンジ悪かったらリピーターになってくんねえだろ? おめーの対応、怖えーんだよ」 「は? なにが?」 「高飛車でおっかねーの。この際言うけど。なんつーか、ソフトな対応っつの? ちょっと研究しといて」 「え……」 「新人さんはまずは電話の取り方だろ。これ世間のジョーシキな」 「おい、」 「てェ訳で解散」 「ちょっと待てェ! 俺はともかく、神楽が用心棒ってオカシイだろ!?」 こんだけ男が顔揃えてるってのに、いちばん危険な仕事を年端もいかない少女に任せるってどういうことだ。恥ずかしくないのか。 「あのな。神楽ナメんなよ」 「ナメてんじゃねえよ! アブねえだろって話だ」 「さっきも言ったけど、ストーカーに遭ってる女ンとこに俺たちオッサンが行ったって、ビビらすだけだろ。神楽なら上手くやれるから」 「そんでなんで新八が犬の散歩なんだ!?」 「あいつ忙しいし。長時間拘束はできねえから」 「〜〜〜っ、じゃあ俺が犬の散歩でもいいだろ!」 「ああ……ま、いいっちゃいいんだけどよ」 銀時は渋い顔をした。 |