「オイどーいうことだ。なんで行かない」 「うーん……だいたい行き先はわかってるっつーか、もうついてる頃だっつーか」 「ハッキリしやがれ! 説明しろ!」 「恒道館だと思いマス」 「ますますわかんねえだろ! 今から恒道館に行くって話だったのに、なんで逃げ出すんだよ!?」 「わかってねーなあ十四郎は。ほんっとニブイんだから。銀さんそれでどんだけ苦労したことか」 「今はテメーの話なんかどうでもいいんだよ! どういうことか三分以内に説明しないと……」 「あっ刀ナシな! なんか法令出来るらしいから! 有事以外に使っちゃいけないみたいな!」 「嘘つけェェェ! とっとと喋れ糞天パ!」 銀時の話はこうだ。 神楽は真選組のあった頃から、総悟と張り合い続けていた。 そんなこた俺だって知ってる。たまに総悟の殺気が俺から逸れて『あのアマ今度こそ決着つけてやる』とか言ってたのも覚えてる。 途中で神楽なのか今井信女なのかわかんなくなってきたけど。どっちにしろ危険だろ。周りが。 そう言うと、銀時はやれやれとため息をついた。 「そうそう。その、どっちだかわかんなくなってきたのが問題なわけ。神楽にとっては」 「?」 「本人も意識しちゃいねーだろうけどさぁ。ほら、俺らが定定殺りに行ったとき二人で沖田くんの取り合いしてただろ?」 「食糧の取り合いじゃねーか」 「まあね。あの時はその意味合い強かったよね。肝心の沖田くんブッ潰してたしね……でも、そうじゃねーんだよ、問題はドーナッツじゃねーんだよ」 「?」 「お前さ、沖田くんにカノジョ出来たらどう思う?」 「は……?」 それは是非止めないと。 首輪付けて地面這いずり回される女が増えたら困るだろう。常識的に。つうか総悟がまともに女とつき合える訳がない。 「はあ……百聞は一見に如かずってヤツだな。そろそろ行くか」 「あ? 新八がどうしてっか見に行くんだろ?」 「うん。そうなんだけど」 「だけどなんだよ!? イラっとするなテメー」 「新八の苦境を見たい気もある。ホント。けどさー」 「なんだってんだよ!?」 「まあ……おめーにも知っといてもらわねえといけねーし、避けて通れないよなコレ」 「?」 「あのな。俺は行きたくない。恒道館」 「は?」 「神楽が単独で行っちまった後の恒道館には近寄りたくないんだよォォォォオ!!」 「……地球のお父さん的アレか」 「いやあの、それもないではないけど」 「?」 なに言ってんだコイツ。さっぱりわからない。百聞は一見に如かずって言ってたな。見ればわかる…….のか? バイクのケツに乗って(堂々と銀時の後ろに乗るのは未だにこっ恥ずかしい。街中に見られてる気がする)恒道館に行くと、 「オイ、中に入んなくても惨状が想像できンだけど」 「コレはいつもこんなもんなの! 多少賑やかになったみてーだけど」 爆音と破壊音と神楽の気合入れる声の後ろで、聞き慣れた声が微かに悲鳴を上げていた。 「ホアチャァァア!!」 「チャイナさん……勘弁してくださいィィィ!」 「あらあら神楽ちゃん、壊すのは人だけにしてね。人は自然に治るけど建物は直らないから」 「姉上ェェェ! 人の自然治癒力にも限度がありますからァァァ!」 「ねえ、ホントに入るの?」 この期に及んで銀時はまだ尻込みするんだ。 テメーそんなんだからダメ事業主とかマダオとか言われるんだぞ。 テメーんちの部下がどこで何してるか。把握しとくのは上司の務めだろうが。総悟みたいなケースは除く。当たり前だ、あんなん把握できるわけない。俺は悪くない。 というわけで渋る銀時をど突いて、俺は恒道館の門を潜った。 「ああ、お妙にた今度はなんて言えば切り抜けられるだろう……」 「そうじゃねーだろ!? なんだよコレ!? 戦争でもあったのか、大丈夫なのか!?」 「ダメだと思う。俺たちが」 「?」 門を潜ったら、見たことある光景だった。 近藤さんがストーキングしてた頃によく迎撃されて……あれ? ここだっけ? |