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万事屋未来篇
会議を続ける【万事屋の仕事 3】


「あー、じゃ反省したトコで最初からな。屋号を変えようと思いまーす」
「なんでソコだよ! 反省してねーだろが!?」
「うん。考えたんだけどさぁ」


俺の天下はほんの一瞬だった。
銀時の顔を見たら元のヤル気ねえ顔にキレイに戻ってやがってびっくりした。やっぱりまるっと無視か。ちくしょう。どうしてだ。俺のフォロースキルが通じないとは万事屋侮り難し。


「俺がここの大将ってことでいいんだろ? んで、お前は俺の……なに? 股間?」
「……!!!!!?」
「まあ何でもいいよ。俺は頭部なわけよ」
「おおお俺が、どこだって!?」
「それは後で二人っきりで話し合うとして、屋号ってさあ、俺が考えなくて誰が考えんの?」
「!」
「俺の城よ? オメーらに問いかけてやっただけ譲歩してんのよ、俺は。だろ?」
「一人で決めたら許さないネ!」
「お前が決めんのも銀さん許さないから。てわけで、最初っからだ」
「おうヨ!」
「理屈はそうですね……しょうがないか」
「オイィィィィ! 納得してんじゃねェェェ!」


ダメだ。こいつら自我の塊だった。真選組みたいに、少しは俺の言うこと聞こうとするヤツらじゃなかった。
特に糞天パ! 大人げねーんだよいい加減にしろ頼むから。恥ずかしいから。


「万事屋銀ちゃんトシちゃん!」
「万事屋 with 真選組!」
「糖とマヨでいいネ」
「待てェェェ! 考え直せ」
「じゃあ間を取って『万事屋銀ちゃん(人妻つき)』」
「触れ歩かねえってどの口が言ったよ!? ついさっきだろ、びっくりするわ!?」
「人妻って銀さんの妻でしょ。桂さんみたいな勘違いした人が来ちゃいますよ。いいんですか」
「アイツ人妻好きなのかよ!?」
「いいじゃん、客増えるぜ? 十四郎は俺が護るし」
「護る気ゼロだろ!? なに客寄せに使ってんだよ!?」
「『糖とマヨ』がどこにも入ってないネ。やり直しヨ」
「もはや何屋だかさっぱりわかんねーよ!?」


新八だ。新八を落とそう。
この城はボロボロ過ぎて下手に落とせない。順番に始末しないと巻き込まれる。


「新八! イボを思い出せ、俺たちがボケたら世界が崩壊するぞ!」
「ここでツッコんでる暇ないんですよ最近。道場とココ掛け持ちなんで。向こうはツッコミどころ満載なんで」
「じゃあ道場に帰れェェェ! 向上心を見失うなァァア!」
「ええ、だから前に進むために新しい万事屋の形を考えてんじゃありませんか。土方さんこそ現状に満足したら銀さんみたいなマダオになりますよ」
「新しくする必要がねえっつってんだ! 今まで通りの万事屋の、どこが不満だ」


馬鹿野郎。
さっきも言っただろうが。
もっと言えば、俺が望んでんのは今まで通りの万事屋で、

――俺も一緒に




「無理ネ。無理。だってお前来たらココだって変わるヨ」
「……ッ、」
「だいたい新八が辞めたときにもう、万事屋は昔の万事屋とは変わったアル。 万事屋銀ちゃんグラさんになったアル」
「オーイそんなヤクザな名前つけた覚えはねーぞ」
「でもお前は銀ちゃんの片割れなんだから、看板の名前は譲ってやるヨ。新入りには変わりないけどな」
「……」
「ケッコンだかなんだか知らねーけど、ケジメはキッチリつけるヨロシ」
「そうだね。神楽ちゃんの言うとおりだと思います。いつか土方さんが万事屋に来ること、僕らも待ってましたから」
「……?」
「銀さんがこんなに好きになった人ですからね。このバカはいつかこっちに引っ張り込むに決まってるって、わかってましたし」
「なにソレ、悪の道に引きずり込んだみたいな言い方やめてくんない」
「うるせーよ! 似たようなもんだろーが! 土方さんが自分からこんなマダオのとこに来るなんて奇跡だかんな! 僕とお通ちゃんが結婚するくらい奇跡だかんな!」
「?」



要するに、なんだ。どういうことだ。


「早く来ればいいのにって思ってたのは銀ちゃんだけじゃないってことヨ」
「そうですよ。それこそずっと前から、真選組があった頃から。土方さんが家族になればいいのにって思ってたんですよ」
「……それは、」

つまり俺を加えたってことは、家族が一人増えたってことだから、


「表札も変えるっつーことか」


三人がそれぞれに反応した。どうやら間違ってはいないらしい。

なんつうか……照れ臭えような、むず痒いような。
だが確実に、悪い気はしてない。
むしろ安心した、なんてこっ恥ずかしくて言えねえけど。



「そーゆうこと。まあ俺は家族ってか、もっとアレだけど。家族と言うには生々しい……」
「生々し過ぎんだろォォォ!? 俺の感動を返せ!」
「わかったところで、続き考えんぞ。俺は『万事屋銀ちゃんトシちゃん』! あ、やっぱ『万事屋銀ちゃん十四郎ちゃん』」
「せめて縮めろ! ガキか俺は!?」
「トシって言うのやっぱりヤダもん」
「だから元真選組副長ってことがわかるようにしましょうってば! 勿体ないでしょ土方さんのキャリアが!」
「ぱっつぁんよ、そんな有難がるこたねえって。やってたことは万事屋と同じ、切った張っただろ?」
「違うわァァァア! 一緒にすんじゃねえ! あと俺の名前に『ちゃん』つけんの止めろっつっただろーが!」
「だから『糖と尿』でいいヨ、わかりやすいヨ」
「わかり過ぎだろいろいろ!? そこは伏せとけよ!?」
「糖尿じゃねーって何回言やわかんだ、寸前なだけだ」
「お前もう黙れ!」





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