「お、おい別に屋号変えるこたァねえだ……」 「黙ってろヨ新入りのくせに。今思いついたの忘れちゃったネ。思い出せヨ、私の代わりに」 「や、無理、」 「やれヨ土方、おまえならできるネ」 「嫌な野郎思い出すから止めろっつーか教わっただろ明らかに!?」 「うるさいな土方さん、ちょっと僕らが考えてる間に焼きそばパン買ってきてくださいよ。もちろん土方さんの金で」 「オィィィイ!? あのヤローやっぱ斬っとくか!?」 「十四郎うるさい。代案ないならジャンプと、あといちご牛乳も買ってきて」 「テメーは半端にオリジナルで腹立つわ!?」 どういうことだ。 俺には発言権がないのか。 つーかこいつらの耳はどうなってんだ。 反対意見は聞こえないようにできてんのか便利だなオイ。 「変える必要がないって言ってんだよ! 面倒だろ。届出し直したり看板だのチラシだのいろんなモン書き換えたり、不必要な手間が増えるだけだっつってんだ」 至極真っ当な意見だろ。 なんで無視? 「ぶっちゃけ『トシ』って呼び方気に入らねーんだよな。ゴリラ思い出すから」 「誰がゴリラだ。それにトシって呼ぶヤツ他にもいるぞ」 「せっかく『元真選組副長』ってブランド手に入れたわけですから、いっそキッチリした名前に変えません? 『銀ちゃん』なんてだらしないネーミングじゃなくて」 「オーイそのだらしないネーミングの得体の知れねえ店で、テメーは何年働いたんだ」 「あんまキッチリすんなヨ、お役所仕事みたいの来たら私できないアルからな。バカに難しい仕事させんなヨ」 「イヤ覚えろよソコは」 「うーん」 「うーん」 「うーん」 「オイ聞けよォォォオ!?」 ああ、どこに行っても俺は説教しねえといけねーのか。 常識人は苦労する。メ……新八はもう少し一般常識を知ってる奴だと思っていたが、如何せん周りが非常識過ぎて毒されたか。それとも傍目に見ていたから常識人に思えただけであって、周りのバカどもと比較しなければこんなものなのか。 しょうがねえ。 ここは真選組の問題児をまとめ上げた俺の力、とくと見やがれ。 「いい加減にしろォォオ!」 「お?」 「わっ!!」 「なにアル!?」 「さっきから大人しく聞いてりゃ細かいことをガタガタグダグダ、いつまでやりゃァ気が済むんだゴルァ!?」 「おー……」 「あ、すいませんつい、」 「……悪かったネ」 「新八ィィ! テメーはブランドブランドうるせーんだよ! ンなモンなくたって万事屋はこれまでやって来ただろォが! これからもだ。違うか!」 「!! そうですね、すみませんでした!」 「それから神楽ァァ! オメーは少し働けや! いつまでもアルアル言ってんじゃねーぞ、普通にしゃべれるってネタは上がってんだ! アルアル言ってもいいから電話くらい取りやがれ!」 「う……わかったヨごめんネ」 「最後に銀時ィィィイ!!!!」 「ハイ」 「テメーがくだらねーこと持ちかけんじゃねェェェ!! ここの大将はテメェだろうが!? ドンと構えてなくてどうする! テメェはンな、細けェこといちいち考えてンじゃねえ! 大局を見ろ!」 「ハイ。すいませんでした」 「よし。テメーらわかったな。細けェこたァどうでもいいんだ」 「おぉ、」 「はいっ」 「イエッサー」 「大事な所だけ押さえろ。そして効率よく動け」 「うん」 「はいッ」 「わかったアル!」 「重要なのは、だ」 「なのは?」 「……(ゴク)」 「なになに!? 何アルか!?」 「俺の名前に『ちゃん』なんぞ付けんじゃ、」 「「「そこかよ」」」 |