「ちょうどいいや、新八も神楽もちょっと聞け。話がある」 あれからしばらくガキどもは万事屋に寄り付かなかった。それをいいことに銀時は……嫌だっつーわけじゃねえしそりゃ嬉しくねえこともねーし、まあ、初めてだしな! 何日も二人っきりで過ごすなんて! ヤツがはしゃぐのも無理ねえっつーか、俺も身体はちょっと辛いけど悪くねえっつーか、イヤその、まあ要するにのんびり過ごした。のんびりだぞ! 一週間ほどそんな暮らしをしたあと、ガキどもは全く何事もなかったかのように普通に万事屋にやって来て、普通にメガネが飯を作り、普通に朝飯を食い始めた。チャイナはこの前と同じように炊飯器を独り占めしたし、メガネはそれを止めつつしっかり自分のは確保したし、銀時は…… 銀時は俺の分を、 「オイもういい加減にしろ。十四郎を頭数から外すな」 「ぎんとき……!」 「ああ、ごめんヨ。私の胃袋目盛りがなかなか新万事屋仕様にならないネ」 「今すぐ直せ。つうかオメーは二分の一に減らせ」 「イヤヨ銀ちゃん! 死んじゃうヨ!」 「こっちが死んじまうわ! 少しは控えろっつの!」 「すいません土方さん。姉上が神楽ちゃんにやたら卵焼き食べさせようとしたんで、神楽ちゃんいつもよりお腹空かせてるんです。すぐ直るんで」 「ああ、あの兵器な……近藤さんはどうしてんだ」 「兵器に馴染んじゃって、僕コワイです」 そんな雑談におっ被せて、銀時が冒頭の発言をしたわけだ。 ワザとだ。こいつワザと俺たちの会話遮りやがった、感じ悪い。 「ひとつ。神楽はその胃袋目盛りを今日中に直せ。今すぐ四人前仕様にしろ」 「おう……頑張るヨ」 「ふたつ。十四郎はちゃんと名前で呼べ。新八と神楽。知ってんだろ」 「お、おー……そうだな、悪かった二人とも」 「みっつ。屋号変えるから」 「……え?」 オイとうとう名実ともにニートになる気か、俺が稼げばいいとか思ってんのか。俺は嫁入りしにきたんじゃねえ(期待はしてたけど)、就職しに来たんだ勘違いすんな。 だがメガ……じゃねえや新八と神楽の反応は薄かった。飯を淡々と食いながら『ほー』と『へー』しか言わなかった。 「ちょっと。もう少し感動しろよ! 慌てろよ! 万事屋銀ちゃんなくなっちゃうのとか言えよ!! 金融屋になっちゃうのとかビビれよ!! 忘れる設定いらねーから!!」 「イヤ言わねーしビビらねーよ。アンタの考えてること見え見えだもの。止めても聞かねーのわかってるもの」 「もう勝手に名前も決めてんだろ白々しいんだヨ、一応聞いてやるから言ってみろヨ」 「えっ、なんでオメーら知ってんの? ひょっとして映○ど、」 「違うわァァァア!? アンタの馬鹿っぷり土方さんにバラすぞォォォ!?」 なんなのこいつら。 そういやこんなノリだったなぁとは思うが、外から眺めてんのと当事者になんのじゃ大違いだ。俺はどう反応すりゃいいんだ。ていうかクソ天パめひとりで勝手に何考えてたんだ。 「ね、どれがいいと思う? 俺はね、『万事屋銀ちゃんトシちゃん』! でも『万事屋銀トシちゃん』も捨てがたいんだよね!」 「長いわァァァア! 神楽ちゃんがまた電話に出られなくなんでしょうが! 屋号カミカミだと依頼減るんだよ学習しろ白髪頭!」 「はぁぁあ!? どうせ言えてねーんだから一緒だろうが! だいたい俺と神楽は電話なんか取らんわ、今まで通りオメーが取ればいいんですぅ!」 「言っとくけど僕もう従業員じゃねーからな! 確かに一日の大半ここに居ますけども! あくまで道場優先ですから! ていうかオメー経営者だろ電話取れば!?」 「面倒くせーだろ電話なんて! こっちゃ昼寝してんだよ他人の都合考えろ、起きてるかどうか確認してから電話してこいってんだ」 「どうやって!?」 「電話すりゃいいだろ。出なきゃ寝てんだ」 「もう僕ツッコまねーからな!」 「じゃあ他の案あげてみろお願いします」 「まったくもう……そうですね、待ってください」 えっ。 メガ……じゃねえ新八おまえ、そこで考えんの? チャ……神楽も何書いてんの? ちょ、根本から間違ってね? |