泣いてねえから。ぜんっぜん泣いてねえから。なに言っちゃってんのこのガキ。
ちょっと目の前が滲むけど。全然平気だから。関係ねーから。
銀時が視線でガキどもを追い払うのが見えたけど、俺の知ったこっちゃねえ。つうか予想外だったんだよ、朝っぱらから。いきなり団欒に飛び込んじまって俺はどうしたらいいかわかんねーんだボケ、テメーはどういうつもりなんだ。
「あいつらいなくなったから。ね? どうしたの、嫌だった?」
銀時の声が柔らかくなった。いつもの、二人きりのときの声だ。
「嫌じゃねえ」
「どっかに出そうと思っちゃいねーし、十四郎を嫁に貰ったって自慢したりしねーよ?」
「当たりめーだ」
「たださ、これは形にしたくて。俺が持ってて安心したかったんだよ。断りもなく書かせたけど、もし嫌だったら……」
「嫌じゃねえっつってんだろ」
「うん、でも」
書いた書面が嫌な訳じゃねえ。
じゃあなんだっつったら、自分でもよくわかんねーけど、
「急すぎんだろ……」
何もかもが。それに尽きる。
銀時の手がふんわりと俺の背中に回された。
「なーに言ってんだか。俺は充分待ったんだぜ? 急に来て急に雇われてやるって言ったのは、オメーだろ」
「……」
「嬉しかった。でも遅かったのが不満。てゆーか待ちくたびれて、準備万端整っちゃったんだよ」
「……じゅ、順序ってモンがあるだろ」
何かしら言い返そうとしただけなんだが、案外そういうところに本心が現れるのかもしれない。
銀時は紅い眼を真ん丸に開いた。
「それは流石に嫌がられるかと思って遠慮したんだけど、余計な気ィ回しちまったな」
「?」
「ごめん。最初からやり直す」
「??」
「十四郎。どっちかが死ぬまで、一緒にいてください」
ぼんっ、と耳の中で風船的なものが弾けた気がする。大丈夫か俺。こんな、こんなクッセー台詞でスッキリして、とうとう俺の頭ん中までクルクル天パが浸食して脳みそクルクルになっちまったんじゃないのかしっかりしろ俺、
「……おう、」
「うああああああああ!! サブッ!」
「わああああああああ!! イタッ!」
ガキ二人が目の前の押し入れから転がり出て来たのはその直後。
「テメェらァァァア!? 聞いてたのかァァァ!?」
「外行けっつっただろーがァァァア!?」
「新八ィ! しばらく泊めてヨここサブくて死んじまうヨ!」
「当分泊まってったほうがいいよ神楽ちゃん! アイタタタタタ痛くて死んじゃうよ!」
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