豚の帽子亭にて。
約束
「それにしても団長、どういうつもりなの?」
キングの問いかけに、アリスがいないか念のため確認する。外で窓拭きをしながらこっちを睨んでいるのが見えた。
「あいつ、面白いだろ?見てて飽きないから、側に置いておく。」
「ふぅん」
そう言うと、興味なさそうにふよふよと外へ出て行った。
…いつからか、目で追っていた。
バイゼルに寄るたびに見かけるアリスは、くるくる変わる表情で一生懸命商売をしていて。
最初は見ているだけだったのが、何年か前にあまりの売れてなさが可哀想になり、一度だけ買い物をした。
買った物は大した物ではなかったのだが、泣きそうな笑顔で、ありがとうございます!と勢いよくお辞儀をした。
それからもあの笑顔が忘れられなくて、何度か店に通った。
少し話してみたくて、何かきっかけが欲しくなり食べかけのパイを置いて考えていたら、案の定アリスがそれを食べて今日に至る。少し話すどころではないが、近くに居られるのだから結果オーライだろう。
隣の窓を開けて、窓拭きをしているアリスを見ると不満そうな表情でこっちを睨む。それもまた可愛く思えてしまうのだから不思議だ。
「天使の顔した悪魔だよ…」
「なんだ〜?誰の事だ?」
「げっメリオダスさん」
アリスには教えてやらないけど、今はただ側に置いておきたい。
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