豚の帽子亭にて。
私の名前は
「アリス、といいます…」
刺さるような視線に、耐えきれず名乗る。
昨晩、バイゼルの荷物は全部まとめて(というより勝手にまとめられた)この移動酒場に住み込みで働く事になった。雑用係という名目だが、何させられるかわかったもんじゃない。
着替えろ、と渡されたのはピンクの制服ではなく、黒と白を基調にしたメイド服だった。
「だってお前うちの制服ぶかぶかだろ?」
「ちょ、ひどい!気にしてるのに!そしてペタペタすんなおい」
デリカシーもなければセクハラもするし、何なんだろう本当この人…。ため息をついて、ここにいる人々を見渡す。
それぞれの名前を聞いたが、まだよく理解が出来ない。あぁ、何でこんな事に…今日の夜にも逃げよう!無一文でもいい!
「お前、声に出てるぞ」
そういってメリオダスというマスターの金髪の彼は、安心しろ絶対逃がしてやらねぇからよ!と恐ろしい言葉を吐いた。悪魔だ。
「あ、メリオダス」
「メリオダス?」
「メリオダス…さん。」
やっぱりこの人私に対して当たりきついよ…笑顔なんだけど、言ってること理不尽だよ!なんて思っていると、他の人達も話しかけてくる。
「団ちょが気に入ったんなら俺も遊んでやるしかねーな?」
「逃げようなんて思わないでよ?オイラが見張りなんだからさ」
「なんかペットみたいで可愛い〜ボク仲良くなれそう!」
「一緒に頑張りましょう!」
「お前メリオダスの残飯食えたのか?仲間だな」
「なぜ、納得いかない顔をする?嫌、なのか?」
嫌だ!そう言いたかったが、メリオダスさんの視線が言わせてくれなかった。いや、言ったら確実に後が怖い笑いだった。
確実に引きつっているであろう自分の気持ち悪い笑顔に、更に嘘を重ねる。
「せ…誠心誠意ガンバリマス…」
(にしてもそれ似合うな)
(メイド服使用人感満載なんですが)
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