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 同日のサーウェタウン郊外。

 少年はナトリエルに向かって走っていた。
 まだ顔立ちが幼い少年は、本来ならばランドセルを背負って学校に通っていてもおかしくはない年齢である。しかし彼は、学校になど通ったことはなかった。
 数分前までは友人とも呼べる相手と他愛のない話をして過ごしていたのだが、そこに急な連絡があったのだ。

「はい」

 現在はあまり使われなくなった携帯電話に出ると、友人を目の前にしたまま少年の表情は嫌悪感一色に染まった。

『あ、もしもーし』

 電話口から聞こえる陽気な声色に苛立ち、思わず電話を切りそうになってしまう。しかしそうしてしまっては、後々面倒なことになるのは目に見えている。
 衝動を抑えて通話を続けた少年の耳に、電話の相手は声高らかに言い放った。

『ちょっとさ、いまからナトリエルに戻ってきてよ。それももう、大急ぎで』

「何故だ?」

 少年がいる場所から、ナトリエルまでは距離があった。どうせ行かねばならないとわかりつつも、用件を聞くまでは頷きたくはない。
 聞かされた内容が面倒なものだと、より行きたくなくなる。いや、面倒なものでないはずがないとさえ思っていた。
 それでも内容を聞き、それに対して文句の一つを言ってから向った方が、多少なりとも気が楽なのだ。

『あのねー。ほら、例の子、最近様子がおかしかった子がいるでしょ』

「ああ」

 例の子。その言葉で、少年の表情が険しいものとなった。

「彼女が、どうかしたのか?」

 電話の相手への嫌悪感以上に、話の内容への興味のほうが湧いた。
 しかし少年の態度の変化など気にせず、電話の相手はのんびりとした口調で話し続けた。それだけでなく、なにか頬張りながら話しているようだった。
 少年が携帯電話のディスプレイに映された時計を確認すると、丁度、午後三時だった。
 

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あきゅろす。
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