◇ 少年たちはソラの方に視線を向けると、あからさまに困った表情を浮かべた。 殺人現場を目撃され、人目に触れては困るらしい武器を目撃され、彼の扱いに困っているのだろう。 しかし、そんなことなどソラにはどうでもよかった。 (……17) 死ぬ直前に134と呼ばれた少女が口にした言葉が、ソラの心を捉えていた。 殺人を目の前にして、精神を手放さずにいられたのも、その言葉のお陰なのかもしれない。 少女は言っていた。白井ソラには妹がいると。 少女は言っていた。その妹は少女と同じ殺人者であると。 少女は言っていた。その妹はあの日にソラの家にいたと。 少女は言っていた。その妹は17と呼ばれていると。 (この子が、17……) そして少女は、言ったではないか。 銃を持った少女ではなく、その隣に居た少女に向かって「あはっ。やっぱり、17は一緒なのね」と。 (この子が、俺の妹……) 困った表情を浮かべる少年たちの前で、ソラは希望に満ちた目を一人の少女に向けていた。 そして、奇跡が起きる。 「……うと、っ、れの、……いも、と」 両親の死を目にして以降初めて、白井ソラは声を発したのだ。 その日、病院は忙しなかった。 定期検査の時間に病室を訪れた看護師が、病室から白井ソラが姿を決したことに気付いた。それから病院関係者の間では彼を探して大騒動が起こり、それでも表向きは静かに全てが終わるはずだった。 屋上で悠長に言葉を操る、彼が発見されるまでは。 「それじゃあ、白井さんは気分転換で屋上に行ったんだ?」 「そう。それで街を眺めていたんだけど、そしたら女の子が現れてね、ボクには妹がいるって教えてくれたんだ」 「じゃあ、その女の子はどこに行ったの?」 「さあ。先生達が来る前に、帰っちゃった。でもね、ボクはそれが嬉しくて。そしたら思わず声が出たんだよ。あー、妹に会いたいなぁ」 笑顔で会話を交わすソラを見て、医師と看護師は眉間に皺を寄せていた。 「そっか」 無理に笑顔を浮かべ、医師が頷く。ソラも笑顔を返した。 [*前へ][次へ#] |