日記ログ
C
愛用の銃とボルサリーノの他には、ほとんど何も無いと言って良いくらい、人の匂いのしない部屋。
時計がわりに窓辺に置く観葉植物だけが、話し相手の気ままな独り暮らしは、今年で何年目だっただろうか。
数多い愛人たちからの祝いの言葉、プレゼント、キス。
それらに一つ一つ礼を言い、口付けと微笑みを返したのが2日前。
そうして、呪われた人生に花を添えてくれる女達との宴を終えて2日ぶりに帰って来て見れば。


何だよお前、そんな薄汚れた格好で。ツナから、どこぞかのファミリーとすったもんだの末、取っ捕まったって聞いたぞ。
お前、それを聞いて俺が何をどう思っていたか、考えてもいなかっただろう?今じゃボンゴレ辞めてフリーになっちまった俺は、手出しどころか口出しすらできずに、この二日間どうにかなっちまいそうな感情をもてあまして、セックスに興じるしかなかったってのに。呑気に、寝こけやがって。
何お前嬉しそうな顔してやがるんだ。そんなボロボロにされて。
何お前こんなとこに座ってやがるんだ。お前がまず行かなきゃならないのは、ここじゃないだろうが。


こつん、弾くように爪先を蹴ってやると、腫れた瞼が震え、薄茶色の瞳がゆっくり自分を捕らえた。
「リボーン・・・」
「・・・何だ、バカ武」
「あは、それすっげえ久しぶり」
「バカ武アホ武ど間抜け武」
「相変わらずのサドっぷり、痛み入ります」
いてて、座り込んでいたアパートのドアの前から、山本はドアを背中に預けつつ立ち上がると、冷たい視線を投げ掛けていた殺し屋に腕を伸ばし、抱き締める。
「・・・ごめんな、遅れて。もちっと早く来れる筈だったんだけど、ヘマしちまってさ・・・・」
「何の話だ」
「怒んなよ・・・忘れてなんか、いねえぜ?アンタの一番大事な日」
「別に」
「buon compleanno リボーン」
山本は殺し屋のトレードマークである黒い帽子を素早く取り去ると、その秀でた額に口付けた。
白い額に残るのは、黒く赤い血の跡。
「バカ武・・・!」
リボーンは自分よりも身長も体重もある男を肩に担ぎ上げ、痛い痛いと上げる声を無視してアパートの鍵を開けた。


銃と観葉植物の他に、置くものなど無くていい。
例えべたべたに血で汚れていようと、泥まみれだろうと、構わない。


お前さえいれば、最高のステージになる




おわり


――――――――――



山本武が大好きなもの。それは野球。
山本武が大好きなもの。それは牛乳。
山本武が大好きなもの。それは寿司。


では、大好きな人は?



朝登校して来たら、珍しく山本の方が早く教室に着いていた。
朝練はどうしたんだろうか、まさか彼のことだから休んだりした訳じゃないと思うけれど。
「おはよ山本・・・って、ど、どうしたのそれっ?!」
「おはよツナ」
俺の席は山本の前なので、振り返るとどうしたってその顔が目に入ってしまうんだけど・・・。
「・・・何でもない」
唇を尖らせ、子供みたいに(いや山本だって子供なんだけど)頬っぺた膨らませた山本の顔には、見事なアオタン。
(ま、まさか・・・!!)
こんな暴力を振るうの誰かなんて考えなくても決まってる〜っ!!
あの人、何時だって『僕の山本』なんて言ってるくせに、こんな痣が残るくらい殴り付けたんだ!
山本ったらもうあんな人とは別れたほうが良いよ。大体学校一の人気者の山本と、並盛一の乱暴者の雲雀さんじゃ、どう見たって釣り合わない!!
「山も」
「ツナ」
綱吉が意を決して山本に応接室にはもう行くな!そう伝えようとした目の前で、目の回りにアオタンをこさえた少年は席を立った。
「俺、今からひばりのとこ行って来るから」
「え・・・ええ〜っ!!!」
きっと山本は、顔の痣の仕返しに行くに違いない。だって意外と負けず嫌いだから。でもこれ以上は危険な気がする。だから止めなきゃならないと思いつつも、どこか決意を秘めた表情で教室を出ていく山本に一声すら掛けられず。
(ああ・・・血の雨が降るーーーーーっっ!!!)
綱吉は暫く頭を抱えていたが、保健室に向かって走り出した。
ボロ雑巾のようになって帰ってくるであろう親友の治療のため、傷薬と絆創膏を大量に貰って来ようと。


「で?」
「何が」
「その顔」
「・・・・」
「言わないと、犯すよ?」
「ひばりのヘンタイ」
「じゃあ右の方にアカタン作ってあげた方がいい?」
チャキ!取り出されたスチール製の棒は、日射しを弾き返して腫れた目に痛い。山本はまだ納得いかないような顔をして、雲雀から視線を逸らした。
「・・・・親父と喧嘩したんだよっ」
途端、風紀委員長の眉間に皺が寄る。
「・・・まさか、また巨人が勝つか阪神が勝つか・・・?」
「またとか言って、あ!その目!如何にも馬鹿馬鹿しいって目ーして!大事なことなんだぜ!!大体生粋の江戸っ子の癖に阪神が好きって可笑しいだろ!?野球つったら読売だよ!ジャイアンツだよそうだろひばり!!!!」
叫ぶ山本はまたしても夕べの親子喧嘩を思い出したか興奮状態。雲雀は拳を握りしめて巨人がいかに素晴らしいチームかをとつとつとそして熱く語り始める山本にため息をついた。
「・・・・早くシーズンオフが来ないと僕に対する善からぬ噂が学校中に広まる気がするよ・・・・」


ガックリ肩を落とした委員長の隣で、未だ鼻息荒く巨人阪神三連戦の本日三日目を予想する少年を待ち続ける、何も知らない哀れな沢田綱吉。
(ああ山本〜!今頃トンファーで滅多打ち・・・!!!)
しかし一番哀れなのは、自分は何もしていないにも関わらず、勝手に想像の中で犯人に仕立てあげられている並盛最強風紀委員長かもしれない。



おまけ


「ホント君達親子って、まるで年の離れた兄弟みたいだよね」
「えーっ!?そ、そうかあ?」
「だって巨人阪神戦の度にそうやって喧嘩するくせに、終われば誰がそんな喧嘩してました?みたいに仲良くなってるじゃない」
ちろりと横目で盗み見れば、まんざらでも無い顔。
「そっかな」
「そうだよ」
腫れた目許を嬉しそうに綻ばせて、頬を掻くのは照れているときに見せる仕種。
これだからまだまだ勝てないと思ってしまうのだ。
三日で仲直りできる自信なんてありゃしないから、殴り合いの喧嘩なんて僕には出来やしない。



おわり
親子二人野球好きだけど、応援しているチームは別々だったりしたら面白いかなあ、と。
二人して熱くなって、プロ野球ニュースとか見ながら喧嘩になっちゃうとか、あれば楽しいね。
で、その度に被害を被るのは雲雀さん(笑)


さて、山本が好きなのは果たして・・・?



――――――――――


※ 久々のぽにょ武





二人で電車に乗って、崖の上の家から、今日はちょっと離れたところまで足を伸ばした。
家でごろごろしているのは嫌いじゃない・・・というか、むしろ雲雀はそっちの方が好きだし(普段忙しくあちこち行ったり来たりしているから、休みの日くらいゆっくりしたいと思うのは道理だ)、武に至っては、何にでも興味が向いたら大好きな雲雀そっちのけで走って行くので、場所なんてどこだろうと関係無いのだけれど。
(日曜日にまで、あの連中に武を貸し出すなんて堪らないよ)
雲雀は自分の手に繋がれながら、初めて見る景色にくるりとした大きな瞳をレンズみたいにして周囲を忙しなく見渡している武を横目で眺めた。


あの連中―――それは勿論、並盛の小さな生き物達の地位向上を目指すうんぬんかんぬん・・・な、“並盛町ちっちゃいものクラブ”の奴らだ。
なんせ連中ときたら、放課後部活の無い日は必ず武を連れ出して、ああだこうだと要らぬ知恵を授けてくれる。この間など、土中深く掘り下げると地下水が出てくるそうだ、などと武がシャベルで家の裏口の近くを堀り始めた。最初は笑って見ていた草壁が、二メートル以上黙々と土を掻く武を流石に怪訝に思い、まだ掘るのか尋ねてみれば。
『井戸造れるはずなのな!』
砂まみれでニッコリ笑われて、非常に困ったなんてことがある。
奴らに悪気がないのは判るが、武はまだこの世界に来てやっと一年。疑うことを知らない武だから、なにもかもまともに受け止めて、雲雀が考えも及ばない行動に出てしまい、何度後ろから羽交い締めにしたことか―――。


「なあなあひばり?あっちから沢山キラキラした服着た人が歩いて来る」
いつのまにやら眉間に深い皺を寄せながら歩いていた雲雀は、繋いでいた手をツンツン引かれて、その指差す方向へ視線を上げた。無邪気に伸ばす指先をそっと包み脇へ下ろしながら。
「ああ、コスプレとかいうんだよ」
「コスプレ?あ!ハロウィン?」
「・・違うけど、まあ似たようなものかな」
「へー!」
ハロウィンも祭りなら、あれも祭りの一種だろう。あながち、間違いではないはず。
「ハロウィンかあ、もうすぐなんだよなあ?」
「そうだね」
言われてみれば、通りを飾る店々は、みな何処と無くオレンジ色に彩どられている。ショーウィンドに翔んでいるのは、箒に跨がった魔法使い。
「ブッキョート!」
「・・・トリックオアトリート。“ト”しか合ってないよ」
「楽しみなのなー!」
今年も武はちっちゃいものクラブの奴らと各家を回るらしい。(とはいっても、沢田綱吉宅を拠点に、笹川京子、三浦ハルの三軒だけのようだが)
「お菓子いっぱい買っとかなきゃな」
舗道に出ている雑貨屋のワゴンの中から、かぼちゃのイラストの付いた袋を武が楽しそうに持ち上げる。
「違うでしょ?君が貰うんだから」
ハロウィンはお菓子をただで沢山貰える日と武は認識していると思っていたのだが、話が逆になっている。彼の頭の中では、『お菓子受け取ってくれなきゃ、イタズラしちゃうぞ!』になってしまったらしい。
とはいえ、武のお小遣いの残高はたかが知れている。となれば、買わなければならないのは雲雀ではないか。武の為に買ってやるのは構わないが、そのお菓子があの連中の腹に収まるのは何となく気に入らない。
「いーの、だって俺みんなにお菓子あげたいんだ」
先ほどから雲雀の手を離して、両手いっぱいにお菓子を抱え上げ。
「俺、ひばりがいれば嬉しいけど、あいつらといると色んなこと教えてもらえて、すっごく楽しいんだ!だからお菓子あげたいの!あいつらの楽しい顔、たっくさん見てーの!」
ふわふわ ふわふわ、とても楽しそう。何だかムカつく気もするけど、やっぱり僕は君が笑っている顔が一番好きだから。
「・・・君、持ち合わせあるの?それだけ買おうと思ったら、このお店で3日はアルバイトしなきゃダメなんじゃない?」
雲雀がお菓子のプライスカードをちょいと指せば、それを見て間抜けに大きな口を開けた。相当なショックを受けたようだ。一袋350円。お小遣いの殆んどがお菓子に消える武にとって、この金額は痛い。ちっちゃいものクラブの人数は少なくないし。
ガックリ項垂れる武の腕から幾つもの袋を奪い取り、ワゴンに戻して雲雀は再び手を引き歩き出した。先ほどと打って変わってうちひしがれる武は、足取りまで覚束ない。
「ハロウィンにはまだ日があるでしょ」
「・・・う、だって」
「・・・僕が買ってあげるから」
「え?」
「今度お金持って一緒に買いに来てあげるから、しょげないの」
「ほ、ほんと!?ひばり!!」
ワォ現金だね、パッと頬が輝いた。賞味期限なんて2カ月はあるだろうから、本当は買ってあげても良いんだけど、今日の財布の中身は君とのデートに使うって決めて来たから。
「だからもうあいつらは頭から追い出して、僕の事だけ見てなよ」
絡めていた指に力を入れてぐいと引いて、つんのめった武の頬にすかさずキスをした。


真っ赤になった武は、初めて会った時の金魚みたいでとても可愛かった。




おわり
ぽにょ武って青かったんじゃ?なんて疑問は忘れて下さい。


―――――――――


※ ユニと武は叔父と姪の設定です








かぼちゃのジャック・オー・ランタンのくり貫かれた目と口からは、蝋燭の仄かな光。
かぼちゃのグラタンにかぼちゃを練り込んで焼いたパン、そしてかぼちゃの温かいスープ。
デザートはパンプキン・プディング、パンプキン・パイ、パンプキン・モンブラン。

今日は何の日?

「ごめんなあ?ほんとはハロウィンは明日なんだけど、明日どうしても抜けられそうにねえからさ」
いつも夜になると窓からやって来るひとは、後ろ髪をガリガリ掻いた。テーブルの上は、その人がバスケットに詰め込んできた料理。この日、私の為だけに。
「あ、あ。ハロウィン」
そういえば。
学校のお友達が言っていた。明日の夕方から、仮装をして余所のお家を回るんだって。
誘われたけれど、私は行けないと断った。
だって、


『あなたはとても大切な体なの。だからお願い、決して1人になっては駄目よ。夜出歩くなんて、もっての他』


滅多に顔を見せてはくれない母との、大事な大事な約束。
好きだから、大好きだから、破ったりして悲しませたりなんて絶対にしたくない。


「おじさんも、来れないの・・・」
寂しさがつい口を突いてしまった。いけない、こんなこと言ったら、相手に辛い想いをさせてしまうのに。
「ご」
「ユニ」
ごめんなさい。慌てて言い繕うとしたユニの小さな口を大きな掌で覆って、男はにっこり笑った。まるでそれはテーブルの料理を照らすジャック・オー・ランタンのよう。
「トリック?オア トリート?」


お菓子がいいかい?それとも


「・・・どちらも!!」
「そうだ欲張れユニ!」
どっちがいい?そう聞かれたのに選べなかった私を、なのにその人は怒りもたしなめもせず、まるでそれが嬉しいような笑顔でぐしゃぐしゃ頭を撫でてくれる。
両手を伸ばしたユニを軽々抱き上げてどうするのかと思ったら、男は窓枠に足を掛けると、夜空に向かい高く跳躍した。
「うわあ!」
男はまるで重さを感じさせない足取りで木々の隙間を駆け抜ける。いつも迎えに来る車から窓越しに眺める景色が、ユニのすぐ横を流れては消えて行く。
町に入れば屋根を飛び越え、電柱をジャンプして。まるで世界で一番有名な泥棒になったような気分。闇夜と同色の上着のポケットから零れるのは、ポップキャンディ、ジェリービーンズ。それは夜空に散らばるほうき星の欠片。
ユニを抱きながら器用に包装をといたキャンディが、小さな口に放り込まれた。
「ん〜あまい!」
「あ〜それはハズレ!一個酸っぱいのが当りなのなー」
「え?当たると何があるの?」
「それは当たってからのお楽しみ」
口の中のキャンディが溶けて無くなると、次が放り込まれる。また甘い。
また一つ、次も甘く。
とうとう最後の一つになってしまったようだ。ポケットから、丸い膨らみが消えてしまった。
「ほい 最後」
ころん
最後という言葉が寂しくて俯いた私の口に、それは放り込まれた。
「ん!」
途端口がぎゅうって縮まるみたいな物凄い酸っぱい味が広がって、思わず目まで閉じてしまう。
ふわりとした浮遊感の次には、爪先に固い感触。降ろされたのだと気付いて、遊びの時間の終了に残念な溜め息と共に目を開けた私の前には。


「ユニ・・・!?」
「お、お母さん?」
突然現れた母に動揺し、そして恥ずかしさが込み上げてくる。だってこの間会った時から、随分前髪が伸びてしまっていたから。もじもじする私の背中を、大きな手が後押ししてくる。その人は小さな声で、いたずら成功?と囁いた。
「30分経ったら迎えに来るな。あ、ちなみにここは安全だから、警戒しないでいいぜ。・・・ゆっくり甘えてろユニ」
私の顔を覗き込むように身を屈め、優しいキスを頬に残して彼の背中が闇に溶けた。
残された私は、見たこともないお屋敷のベランダで、母と向かいあって何だかとても気まずい気分。だって夜は出歩いたらいけないって、あれほど言われていたのに。――しかも男の人と一緒だなんて、きっと怒ってる。
けれどそんなユニの思惑を他所に、母は仕方ないとでも言うような笑顔を見せた。
「・・・昔から、人を喜ばせるいたずらが得意なのよ あいつ」
「え・・?あのおじさんのこと、お母さん知っているの?」
「知ってる・・・よ〜く、ね」
「魔法使いみたいな人よね?」
「ふふ、それはどうかしら」
母の笑顔に、自然ユニの頬も綻ぶ。


トリック?オア トリート?


お菓子?それともいたずら?ううんそれよりもっと素敵なものをあなたはくれた。
ポケットにいつの間にか2つ忍ばせてあったのは、甘いキャンディ。
分けあって口に放り込んで微笑みあうその時間は




きっと私の永遠の宝物になる








おまけ




「この俺に見張り役をさせるなんざ、世界広しといえど、てめえくらいなもんだぜ」
暗い中でも一際闇の色を濃くした場所で佇む男の上着は、やはり周囲と同化するように夜を映し出していた。
「・・・お互い、我慢ばっかしてるからさ、たまにはこんなサプライズがあったって、バチは当たらねえんじゃねーかなーなんて」
ファミリーのトップを務める彼女だから、明日は同盟である我がボンゴレのハロウィンパーティーに赴かなくてはならないだろう。
だけど子供にとって、町中が騒ぐ行事は心が踊るもの。きっと彼女だってそれは十分判っているから、娘にできることなら楽しませてやりたいと思っていたに違いなくて。
「こんないたずらしか、できねえけどさ」
ベランダで身を寄せあう親子が、何を話し笑いあっているのかは判らない。
けれどこの僅かな時間が、明日からを生きるほんの小さな希望になればいい。
自分が闇色の男を思う度に胸が温まるように、ユニの胸にもアリアの胸にも、小さな火が灯ってくれますように。
ボックスアニマルの柔らかな毛皮に埋もれるようにザンザスと二人腰掛けながら、どちらからともなく近付き、唇が重なる。
「俺はたった30分のいたずらじゃ満足できねえぜ?」
鼻先を擽る前髪から、挑戦的な紅い瞳を覗かせ男が誘うように啄んできた。頬を、顎の傷を、そして唇を。
「あんたには一晩中、与えてやるよ・・・キャンディなんかより甘ったるいもんを、たっぷりな」
その唇に柔らかく吸い付きながら、山本は広い背中に腕を回す。山本の応えに満足したらしい男は、あと五分あの親子にサービスしてやると言い捨て、誘うように開かれた口へ熱い舌を滑り込ませた。


白いライガーは主人とその恋人が自分の腹の辺りでしていることに気付きつつも、知らん顔で目を瞑る。
だって今日はハロウィン・イブ。
祭りの前夜なのだから、皆が胸のときめきを抑えられやしないのだ。




おわり




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あきゅろす。
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