日記ログ
H

『獄寺誕生日おめでとう!』



って言ったら、ものすご〜く変な顔をされた。
嫌そうとも、怒ってるってのとも違う、うん“変な”が一番しっくりくる顔。
「・・・んで、テメエなんだ野球ばか」
口の中でモゴモゴ言うから、よく聞こえなかった。あれ?九月九日って獄寺の誕生日じゃなかったっけ?
いやいや、そんなはずはない。


 何で俺が覚えていたかっていうと、たまたま部活が早く終わった日曜日、応接室で雲雀のワンセグ携帯を借りてテレビ見ながら仕事が終るのを待ってた時に、九月九日はカーネルおじさんの誕生日だから記念のフライドチキンが990円で食べられるって宣伝していたからだ。
『ん?九月九日・・・九月九日って他にも何かあったような・・』
実は俺は数字を思い浮かべても、その日がどういう日だったか中々思い出せずにいたんだけど。
『・・・あの爆弾男が、確かそんな誕生日だったって記憶してるけどね、僕は』
いつまでも首を傾げていた俺に業を煮やしたのか、雲雀が教えてくれた。
『あー!そっかそっか、獄寺の誕生日か!すげーなひばり、何で知ってんの?!』
友人である自分ですら、小骨が喉に引っ掛かったみたいに、易々とは思い出せなかったのに。
そんな俺の座るソファーに移動して来た雲雀は、携帯をパタリと閉じテーブルの隅に追いやってこう言った。
『君の側にいる奴等のデータは皆頭に入ってるんだよ』
雲雀やっぱりすげえのな!笑おうとした唇は近付いて来た雲雀にさっさと塞がれてしまった。
そこで俺は漸く知ったのだ。雲雀の仕事が随分前から終わっていて、九月九日の答えを懸命に考え続けていた俺の顔を見ながら面白がっていたこと、余りに長く続くので痺れを切らしてしまったことを。


 そんなことはさておき、じゃあどうして獄寺が変な顔をしているのか。
誕生日は間違いない筈だ。だって雲雀がそう言ったのだし、俺の記憶にもインプットされているのをしっかり思い出した。
じゃあ何でだろう?もしかして、プレゼントとか欲しかったりしたかな。
「わりーわりー獄寺、じゃあさ昼飯ん時に獄寺の好きな焼きそばパン奢ってやるから!」
宥めるように肩を組めば、バシッと叩かれた。まあいつもの事だから気にもしない(こういうのって、気にした方が負けのような気がするんだって言ったら、どこまで負けず嫌いなんだいって雲雀にも呆れられたけど)。
けれど獄寺はフン!とそっぽを向いて。
「そうじゃねえんだよ、バ〜カ」
何だろう?今度は心持ち、伏せ目がちに。
そうじゃない?そうじゃないって、だとしたら。
・・・もしかしたら獄寺は、余り誕生日が嬉しくないんだろうか。


 家庭が複雑なんだっていうのは聞いてる。だからそのせいで、自分がこの世に生まれた一番大切な日を、そうと思えなかったんだとしたら・・・・。
それは獄寺にとってとても―――いや、彼を生んだ、今は亡きお母さんにだって、辛いことに違いない。


 と、思わないでもないんだが、これも見当違いだったりしたら、獄寺が激しく怒るのは目に見えている。
はね除けられた手をズボンのポケットに突っ込んで歩いていた、その時だった。
「獄寺くん、山本、おはよー!」
校門の方からツナが走って来た。その手には、いつもと違う大きな紙袋。ツナは広さも深さも申し分ない袋から、ツナが普段持ってきているのとは模様の違うナプキンで包まれた弁当箱とおぼしき物を取り出した。
「うちの母さんがさ、『私からもお祝い』とか言って、朝から張り切っちゃってさあ。さすがにケーキは入ってないんだけど、お祝い弁当なんだって。はい、誕生日おめでとう、獄寺くん」
戸惑いがちに両手を差し出した獄寺に、ツナがおめでとうの言葉と一緒にお弁当を乗せた。すると、先程まで沈んでいたように見えた獄寺の頬が見る間に輝いてきて。
「あ・・・ありがとうございます十代目!!お母様も・・・!!」
「え・・・えええ!?いやそんな、たかが弁当だし・・」
「いいえ!!物凄く嬉しいですありがとうございます!!心して食べさせていただきますっ!!」
「あ・・・あ、うん・・母さんにも言っとくね」
泣きそうなんじゃないかってくらい、くしゃくしゃにした顔で言うから、逆にツナの方が恐縮していたけど、俺には判った。


 獄寺は、俺におめでとうって言われたのが嫌だったとか、誕生日が好きじゃないとかじゃなくて、多分不安だったんだ。
大好きなツナが、尊敬するツナが、自分の誕生日を覚えていてくれるだろうか、祝ってくれるだろうか―――って。


 同じおめでとうなのに、その差は何なんだって?
う〜ん、それは多分俺が雲雀に言われるのと、友達に言われるの、位の差なんだろうと思うんだ(う〜ん、う〜ん・・・・・やっぱ違うかなあ?わかんねーや、ははっ)。


 勿論焼きそばパンは買うけど、それは別に無理矢理今日じゃなくても良いんだから、明日奢ることにした。だって今日は、ツナのお母さんが作ったお誕生日弁当があるもんな。
誕生日は1日しかない。
だから“おめでとう、生まれて来てくれてありがとう”は、絶対今日伝えたいって思ったけど(割とギリで思い出したのは内緒な?)、俺と獄寺は明日も明後日も、これからさきずっと友達なんだから、それでいいよな?
何にせよ、ツナの隣で笑うあの嬉しそうな顔。獄寺って、心底ツナのことが大好きなのな!!


 こほん。改まって言うとなると、ちょっと恥ずかしいけど、とにかく誕生日おめでとう獄寺。
お前はどうか知らないけど、俺は獄寺と会えて、すっげーすっげーすっげー






嬉しいんだぜ!!







おわり
ごっきゅん誕生日おめでとう!


――――――

『はあと、おにぎり』






並盛中学所属、育ち盛り食べ盛りの山本武は、二時間目と三時間目の休み時間に軽食を摂る。
なぜなら朝御飯は6時半に済んでいる。12時の昼食までの5時間半を、みっちり集中して朝練して来た身に我慢しろというのは無理な話だろう。
脂肪の殆んど・・・いや全く無い体は、動き出せばしなやかなバネのようで、見ている者がため息をつく。
曰く「アイツは天性の運動神経の持ち主である。一般の俺達とは体の造りが違うのだ」と。
しかし本人に言わせれば努力の賜物。この山本、一度こうと決めたらその為の努力は絶対惜しまない。
彼の半端ない実力は、努力に裏打ちされたものであることを、近くに居る極わずかな者だけが知っている。
そして、そんな山本の素質と努力家である性格を、出会い初めから見抜き、目をかけて来たのが
「オッス小僧」
「ちゃおっす、山本」
いつもの休み時間に、いつものように肩に軽く飛び乗って来た黒装束の幼い子供に、山本は笑いかけた。
元々は親友である沢田綱吉の家庭教師であるらしく、確かに子供らしからぬ言動、そして行動を見せるが、それはその子供自身の性格と山本は思っているし、視覚から入るものを信じる傾向、そして興味のあること以外は余り深く考えない質であるから、山本にとっては“沢田綱吉の家庭教師であり、マフィアごっこの遊び仲間である子供”でしか無かった。
「そういや、今日は小僧の誕生日なんだって?」
言えば、つぶらな瞳がより一層丸くなったようで、あまりの可愛らしさに山本は笑う。
「何で知ってるんだ?」
「ツナが、教えてくれたんだ。自分の誕生日と1日違いだって。小僧一才になるんだってな!」
おめでとうな!と笑った山本は、鞄の中身をごそごそ漁る。
中には勉強道具の他に、部活の替えのTシャツや弁当、それに昼前に食べる用のおにぎりが入っている。
一度この子供が余りにもじっと見つめて来るので分け与えたところ、表情の乏しい顔が僅かに綻んだように感じて、以来毎日山本は自分のおにぎりの他に、もう一つ小さな手に持ちやすいようなおにぎりを作って来ていた。
「ハッピーバースデー小僧」
いつもの通りに、ホイルに包まれたおにぎりを手渡す。それを開いた子供の目が、益々丸くなった。
「今日は特別、ピンクのハート型なんだぜ!」
いつもは白いご飯に何かしら具材をいれて海苔を巻いたものなのだが、今日は特別仕様だった。
まだ自分が幼い頃、父が『父ちゃんは、武が大好きだからな〜』と、お弁当に入れてくれたピンクのおにぎり。


ハートの形をした、ピンクのでんぶがまぶしてある、甘い甘いおにぎり。


「・・ふっ」
子供は、子供らしからぬ顔つきで笑って見せると、ピンクのおにぎりを小さな口に頬張ってみせた。
膨らむ頬っぺたが可愛い。まるでリスかハムスターみたいだ。
「美味いぞ山本」
「そうか?良かった」
「好きだぞ山本」
「んー?そっか、でんぶの甘いの好きか!良かった!大丈夫もう一つあるから遠慮しないで食べてくれよな」
「そうじゃなくてだな」
仕方なさそうに少しだけ肩を竦めて見せて、子供は肩から立ち上がると山本の顔に小さな手を添え、横向かせる。
そして不意に顔を近付け、チョンと唇を小鳥がするようにつついた。
「好きだぜ」
ぺろり唇を舐めてみせる仕種は、扱いに手慣れた男のそれ。
隣で見ていた綱吉は真っ青になってギャーなんて叫び声を上げるし、獄寺などは椅子から引っくり返っている。
が、しかし、そこは山本。彼にとって子供はどこまでも子供なので。
「あはは、そっか」
男らしい節ができた長い指が、山本から奪ったご飯粒のついた子供の唇に、そっと触れた。
そうして取れた白いご飯粒を自らの舌でペロリ舐めとり飲み込んで。
「いつもの塩おむすびも好きなのな?りょーかいっ!」
にっかり笑った山本に、これ以上何を突っ込める(いや、自分の体が大人並であれば、別な物を突っ込んでやるところだと、この家庭教師ならば言うのだろうが)だろうか。
ニヒルに口許を歪めた子供は、一口しか食べていなかったピンクのおにぎりを、再びもくもく食べ初めた。
「あはは、ほんと美味そうに食べるな小僧は」
「お前が作ってくれた物だからな」
「そっか、家の米親父のこだわりで、こしひかり使ってるからな」
あまり噛み合っていないなりにも、端から見たらとても微笑ましい光景である。
見かけは赤ん坊、中身はタラシの頭脳明晰凄腕スナイパーと、見かけも中身も爽やかだけど実は相当天然ボケ野球少年山本が、15分の休み時間に睦まじくおにぎりを頬張っている姿に、向かい側の特別教室棟屋上給水塔から、鋭い眼光が飛ばされていたのに気付いていたのは、今はしがない赤ん坊である復活の名を持つアルコバレーノただ一人だけであった。






おわり
リボーンさんお誕生日おめでとう!

――――――

(※叔父37×甥16)



橙色のかぼちゃの中身をくり貫いて、不恰好な三角になってしまったけど目と鼻と、それから所々歯が抜け落ちたみたいな口を懸命に切ったジャック・オー・ランタン。
中に蝋燭を灯したら、それだけでハロウィンの雰囲気になるから、知らず胸が躍った。


そんな幼かった思い出を記憶の奥底から引っ張り出したら、何だか嬉しくて笑ってしまった。
「どうしたの?」
当たり前のように一つのベッドに眠り、物静かな寝息を立てていたはずの叔父の目が、いつの間にか開かれていた。
1人思い出し笑いしていたのを見られてしまったのが少々恥ずかしく、武は「何でもないよ」とうそぶく。
「何でもないなんて嘘だろう?可愛い顔して笑ってたよ」


“可愛い”


叔父の口許に仄かに浮かぶ笑みに、武は抗議するように少しだけ唇を突きだした。
可愛いなんて、こんな180センチに届くかという大柄筋肉質の、しかも男にいう言葉じゃないだろう。
全く、この叔父には未だに自分は幼い子供のように見えているらしい。


・・・そりゃ、親子ほど年が離れているのだから仕方ないのだけれど。


「トリックオアトリート!!」
武は横になって向かい合う雲雀に、小声で叫んだ。一応防音の効いたマンションではあるが、もうすぐ夜中という時間に大声はやっぱりいくらなんでも気兼ねする。
近所付き合いってのは、特にマンションなんてのは、そういうちょっとした気遣いが大事なんじゃないかと思う。
「え?・・・ああ、今日はハロウィンだったっけ」
「そうだぜ〜。恭弥くんてば、俺がかぼちゃのプリン出したのに全然気がつかなかったよな」
中学に入って少しした頃から、武は叔父を“叔父さん”ではなく、“恭弥くん”と呼ぶようになった。
クラスメイトから、あんな格好いい人に叔父さんだなんて酷い!そう言われたからだ。
余談ではあるが、その女の子は一応初恋の相手だっただけに、武は恭弥に失恋も味わわされた。
「・・・そうか、武は寂しかったんだ?」
「ち、ちがっ・・・!」
そうじゃない、と言おうとしたが、それは叶わずに武は叔父恭弥の胸に抱き締められていた。
別に、別に寂しくなんてないけど。


まだ“幼い”という形容がぴったり当てはまっていたころ、武の為に叔父恭弥は部下だという草壁と共に色々な季節行事を試みてくれた。
多分両親の突然死に、情操面で酷く偏った考えを持っていた自分を何とかしなくてはと思ったのだろう。
クリスマス、お正月に端午の節句、彼岸にはおはぎを買って来て、そしてハロウィン。
かぼちゃのランタンを作る手は覚束なくて、子供の武でも不安になるくらい。
だけどこの叔父の横顔は一生懸命で、だから武は何かの為に力を尽くしている人はとても素敵なんだって、かっこいいんだって思ったものだった。
例え出来上がったジャック・オー・ランタンが、酷く不細工でも。
高校生になった今は、恭弥が興した会社が軌道に乗り忙しくなったのもあって、せいぜいクリスマスや盆正月といった特別な行事の日に、1日休みがあれば良い程度。
だから当然ハロウィンパーティーなんて計画すらする暇なんて無く、恭弥に至っては町が全体的にかぼちゃ色に色付いていても視界にすら入らなかっただろう。
つまりそれくらい忙しい中、一緒に食事できて一緒に眠れるだけでも、どれだけ恭弥が甥であり恋人でもある武に心を砕いているかは、痛いくらい感じているけれど。


「イタズラしていいかい?」
叔父の問いかけに、武はプッと吹き出した。
「イタズラするのは恭弥くんじゃなくて俺なのな!」
「・・・お菓子なんかより、いいものあげるよ」
「あ〜、悪い大人がいる」
「嫌かい?」
「・・・だったらここに居るわけねえじゃん」
覗き込もうとする叔父から顔を背けながらも武は、たいして広くはないけれど、自分を大きな優しさで包んでくれる叔父の胸に頬を擦り付けた。
大きな掌で後頭部を支えられ、顔を上げれば静かな口付けを受ける。
優しくあやすようなそれが、何となく子供扱いされているようで複雑な気持ちになってしまった武は、自分から舌を差し出した。
くくっと喉が鳴り、恭弥がきつく己れのそれを絡めて来る。
武は嬉しくなって頬を弛ませ、優しいキスをくれる叔父の首に腕を回した。
もちろん仰向けにされる刹那、ベッドサイドのチェストに置かれた小さなかぼちゃのお化けの置物を、素早く後ろに向けるのを忘れずに。


だって、いくらただの置物でも、二人の時間をあの底知れない目で見られているのはいい気がしないじゃないか。

――――――

※獄→ハル→ツナ→京子&リボ+ヒバ山(でも雲雀出てきません)







何となく一緒につるんで、他愛ないことで笑いあって。
距離が近くなれば、自然に気付くことだってある。
「ばーか!この季節に林檎の花なんか咲いてる訳ねえだろが!」
「ハ、ハヒ?!バカ?!ちょっとリサーチ不足だっただけじゃないですか!」
「ちょっとでこんなとこまで連れて来られた十代目のお気持ちを考えろ!」
「ま〜ま〜、お前らホントに仲いいなあ」
「「よくないっ!!」」
仲裁に入った山本に、全く同じ表情をして叫んだ二人に、山本は仕方ないなあと笑う。


日曜日の朝、どこから聞き付けたのか『山本さんお昼から部活無いんですよね?じゃあ皆で林檎の花を見に行きませんか?電車に乗って』とハルから掛かって来た電話。
父は商店街の日帰り旅行で夕方まで帰って来ないし、雲雀は並盛地区の学校の風紀総会(そんなものがあるなんて、知らなかった)で1日拘束されるというしで、予定はまったく無かったから、俺は了解した。
午前で終わった部活の後、自宅で昼御飯を食べて少ししてから待ち合わせ場所に行ってみれば、駅の前にいつものメンバーが揃っていた。
最近ではこの5人で行動することが多かった。ハルは他校の生徒だけど、頻繁に並中にも顔を出していて、日曜日なんかも俺たち(ていうかツナ?)と遊んでいる方が多い。
まあ社交的な彼女のことだから、平日の学校では他の友人たちと仲良く過ごしているのだろうけど。


ツナはランボを抱っこして、笹川と楽しそうに話ながら歩いている。
イーピンを抱えたハルが二人の後を着いて歩いて、その背後に頭の後ろで指を組んだ獄寺がつまらなさそうな顔をしながら同じ方向へ足を出す。
そんな皆を眺めながら、肩に小僧を乗せた俺。
「背がたけえと色んなもんが見えるな」
「ん?ああ、それも一番後ろって全部見渡せちまうんだよな」
彼と彼女の楽し気な会話に、時折長い睫毛を切なげに伏せる白い横顔。
そんな彼女がついた溜め息を、見ないふりする不器用な友人。
「野暮は好かねえが」
「まあ、少しくらいは良いんじゃね?」
見晴らしの良いなだらかな斜面には、一面の林檎の樹が植わっている。もう実がついて、傷つかないように一つ一つ白い布で覆われていた。


実った赤い林檎。こちらはまだまだ咲いたばかりの恋心―――。


「あ、写真!写真撮りましょうよ!記念に!」
ハルは肩に掛けていたバッグから携帯を取り出すと、ツナと笹川に向けて『いきますよ〜』と声をあげる。
いきなりふられたものだから慌てるツナを他所に、笹川はピースなんかつくったりして。
画面を覗くハルの眉が、ほんのすこし下がったのが見えた。
そんなハルの手元でシャッターが切られると、突然携帯を取り上げた獄寺が勝手に保存をして、更にハルを軽く突飛ばした。
よろけたハルの背中を、驚きながらも綱吉が受け止める。
「な、何するんですか獄寺さんっ・・!」
「・・・今度はハヒ女てめえを撮ってやるから、十代目と並べよ」
「え、あ」
「オラ写すぞ早くしろっ!」
「ハ、ハヒッ!ツナさん良いですか?!」
「え?あ、うん」
ほんのり奥ゆかしく頬を染めながら、堂々腕を組んで枠に収まったハルに、今度は獄寺が何とも言えない口元をしながらシャッターを押す。


そう、花は咲いている。あそこにも、ここにも。
まだ、実は結ばないけれど。


リボーンが肩から降りて、山本、と呼んだ。
「どうせだから皆で撮ればいいじゃねえか」
この小さな体のどこにそんなものを隠す場所があったのか知らないが、リボーンの赤ちゃんみたいな両手には、デジタルカメラと三脚。
「おっ!それ良いな。記念記念!」
山本はそう言って獄寺の肩に素早く腕を回すと、ハルや綱吉、そして京子が固まる場所へ引き摺った。
いきなり飛び込んで来た獄寺と山本に驚いた三人は、しかし構えられたカメラを見て『あ』という顔をする。
「いーぜー小僧〜っ!!」
「よくねーだろうがこのバカ!!」
「ほら!皆笑おうぜ!獄寺も!あんまり暴れるとくすぐるぞ!」
「な、なにを〜?!」
暴れる獄寺を右に従え、左にはハルにイーピン、そして前に綱吉と、ランボを抱いた京子。
黒ずくめの赤ん坊がぴょんと肩に飛び乗ったところで、シャッター音が林檎畑に小さく響いた。


花は咲く、花が咲く。あそこにもここにも。
今はまだ一つ一つの花だけど、きっといつか重なって赤い実をつけるだろう。


ほら、写真の中にも、照れくさそうな笑顔が咲いている。



花のように





おわり


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