ごちゃまぜどころ
ピンク頭が戸惑いまして
衝撃的な事実を知った。
昨日、ナルトが任務中に崖から落ちて記憶喪失になった。六歳までの記憶しかないらしく、今とは違いそれはそれは毒舌家なナルトに大変身を遂げた。抜けるだなんだと口論になったのを(いつものごとく)遅れてやってきたカカシ先生がなんとか宥めて、取り敢えずことは落ち着いた。
その後ナルトのいないところでやむを得なくカカシ先生は私とサスケくんにナルトに関する事情を話した。
聞きところによるとナルトはそれはそれは凄惨な目に合ってきていたらしく。相当捻くれていたらしい。それはあのナルトを見れば一目瞭然だった。
それが何故今みたいな明るいバカに変わってしまったかと云うとある日ふとナルトの考えが変わったらしい。キッカケは未だにナルト本人しか知らないらしいが里人を憎むことが馬鹿らしくなったと語っていたらしい。そこから捻くれたナルトが更によく分からない捻くれ方をした結果ああなったのだそうだ。実際の実力も結構なものらしく、何故隠していたのかと聞くとそこもナルト本人しか知らないらしい。
同情してしまうが恐らくあの状態のナルトにそれめいた言動をしたらキレられるよと先生に言われ、直前に見ていた毒舌っぷりを思い出し全力で隠そうと誓った。
そんな翌日。例え班員がトラブろうが任務は待ってはくれない。いつもの様に集合場所にやってきた。
そこに行くとナルトとサスケくんはもう来ていた。二人の間に流れる空気は最悪だった。
「お、おはよう。サスケくんにナルト。」
気まずい雰囲気に心で悲鳴を上げながら挨拶。
いつもならここでナルトが私に飛びついてくるのだがその正反対でこちらに視線を向けてくれたサスケくんとは違い私を視界に入れるとナルトは眉間にシワを寄せ視線を逸らしながら舌打ちをした。
一体私が何をしたってのよしゃんなろーーー!
それから数時間そんな気まずい雰囲気の先生を待った。流石に昨日の今日で来るだろうと思ったのにカカシ先生は来なかった。
どんよりとした雰囲気の中サスケくんは木の上でただただ黙ってるだけ。ナルトは持って来ていたらしい分厚い本を読んでいた。中身六歳の癖にその本の中身は大層難しげだった。
実力を隠していたのは嘘じゃないらしい。
そして私はひたすら木の下で爪を眺めたり髪を弄ったり。いつもどんな風に時間を潰していたのか思い出せない。そういえばナルトがひたすら話していた気がする。
随分とそれに救われていたことを実感しながらナルトを横目で見る。
本に集中しているのか視線が本から外れない。忙しなく動く目はいつもとは違い随分と頭が良さげだった。
「おっまたせー」
シュンと空気を切る音と共に現れたカカシ先生にいつもの様に声を上げそうになる。
が、それを喉のあたりで留めた。いつも一緒に叫ぶナルトがいない。いや、ナルトはいるがいつもの彼はいないのだ。
「カカ兄、おはようございます」
その替りのナルトはにっこり笑って先生に挨拶をした。
先ほどの私の挨拶の時とは愛想の良さがえらく違う。なんていうか、昨日までのナルトもウザかったけど、今のナルトもナルトで可愛げがなくウザい。
「おはよ」
そしてそんなナルトにそう返す先生もまた先生で違った。
いつもとは違い随分とぶっきら棒な返事である。しかも完璧無表情でナルトを一切視界に入れていない。
「サクラとサスケもおはよう。」
こちらにはいつもと同じ様にニコリと笑って挨拶をした。
意味が分からない。
「カカ兄、カカ兄、今日の任務はなんですか?」
そんなカカシの態度を気にした風もなくナルトはさらに先生に話しかける。しかも敬語。
「ナルト、これから説明するところだったの。黙ってろ。」
「ご、ごめんなさいってば。」
「敬語は?」
「すみませんでした。」
唖然。え、ナルトもそうだけど誰この先生?めっちゃ怖いんですけど。
「それじゃあ説明するネー。」
そして私達に話しかける瞬間表情も口調も何もかもが変わる。それがまた恐ろしい。
今日の任務は旅人の付き添いだった。何かから守って欲しいとかいうものではなく単純に荷物が多いのだそうだ。木の葉へは観光で来たらしく調子に乗って土産を買い過ぎたらしい。
「こちらが依頼人のアキさん。」
「よろしくお願いしますね、皆さん。頼りにしてます。といっても荷物運びですが。」
ふんわりと笑うアキさんは可愛らしい少女だった。私達より五つ違うかどうかといったところの若い女の子。
「…こちらこそよろしくお願いします。」
なんとなく親近感が湧いて笑顔でそういうと相手も親近感が湧いたのか笑顔で私に近寄って来た。
「わー、女の子だあ!お名前は?」
「サクラっていいます」
「可愛い名前だね!私とは正反対な名前!」
意味が分からず首を傾げるとアキさんはこう続けた。
「サクラは春の花じゃない?だから秋と春で正反対!」
うふふ、と笑うアキさんにつられて私も微笑んだ。
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