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ごちゃまぜどころ
生徒会長×腐男子教師
山田結城はO学園のしがない生物教師だった。だらしなく伸びた髪に無精髭。着古した白衣にシワだらけのスーツ。王道真っしぐらなこの学園。山田は当たり前のように嫌煙されていた。生徒会顧問だのなんだのという大それた立場も無く。恐らく生徒にはその見た目のだらしなさによって記憶されるかもしくはまったく覚えられていない。全く持って目立たない。というか地味。暗い。女子高生風にいうならばチョーキモイ。そんな教師であった。
そんな山田が学園に務めて二年目。それはついに起きたのだった。


「おーうどーうキタコレ!やべぇよやべぇよ、ついにきちまったな!歯にきせないその言葉で悉く美形を落として行く魅惑の転校生。もっさり鬘と便底眼鏡、その神がかったベールに隠されているのは超絶美少女顏。実は巷で有名な族潰し!過去持ちでも有りだしはたまた行方不明になっている族の総長でも勿論ありだ。そんな転校生を探し求めていた敵対チームの生徒会や風紀委員がそれに気付き、なんやかんだでハッピーエンド。…とみせかけてどんどん信者化していく美形たち。崩壊する学園。奮起する親衛隊。そこから現れるイレギュラーたち。そう!イレギュラーだ!イレギュラー!王道も楽しみたいが俺の本命はズバリそこにあるんだ。正直王道タイプってテンプレであれアンチであれ腐ってる身としては一度は拝みたいが実際問題偽善ヅラに優柔不断がウザくて無理なんだよな。まあ、とにかくそこでお前が出てくるわけだ!」

山田は寮の部屋の中自身の欲望のままに熱弁をふるい終わると、ベッドの上でくだついていた長身の男にケリを入れた。

「いでっ。ちょ、ユウ兄痛いんだけど?」

「お前今の話聞いていたのか?」

「いや、ユウ兄の尻見てたからなんも。」

熱弁を立ちながらふるっていたので、山田の尻は正に男の視線のど真ん中にあった。

「俺の尻に気を取られるのもいいがお前には明日からの任務があるだろうが?」

「ナンダッケ?」

ゴンと男の頭に山田の拳が当たった。というより殴りつけられた。

「分かってんのにトボけてんじゃねーぞ、ゴラ。」

「…っってぇー!ユウ兄頭痛いんだけど?」

「この期に及んでまだグズっているテメェが悪いんだろぉが!」

「…だってさあ。マジでやんの?俺もう十分ユウ兄の希望叶えてね?」

キャラ作りから始まり口調、仕事、族作り。

「ほら、完璧じゃん。もうユウ兄の望む王道生徒会長いんじゃん!何故かそんな風に育っちゃってるユウ兄の願望を全て詰め込んだみたいなその他役員と風紀委員もいんじゃん。ほら、完璧。もう、これでいいじゃん。」

山田の目の前に座る男。このO学園の天下の生徒会の頂点に立つ生徒会長、橘美咲はその整い過ぎた顔を存分に理解した上で山田を見上げ、ニコリと笑いそう言った。

醸し出される色気と年下特有の可愛らしさ。それらに普通の人間ならば男女の性別、老若なにも関係なしに橘の言うことに賛同してしまっただろう。

しかし、山田はそんなものに騙される男ではなかった。それは長年の付き合いから生まれた慣れでもあり、またそれは自身も知り尽くした動作であったからだ。山田はその見た目に反して中々に経験豊富な男であった。

「ミイ、てめえな、散っ々人の尻に突っ込んでおいて、その上コスプレまでさせておいて、しかももう数え切れない程のプレイに付き合わせておいて、今更来ねえだろうとタカを括ってた俺の夢が来ちまったからって、誤魔化そうとしてんじゃねぇ!!この野郎!ネコやってヤったのは俺の萌え活動において協力するからって約束だっただろうがぁっ!」

山田はそういうとゲシっとベッドの上に座る橘を先ほどの二倍ぐらいの威力で蹴った。

「っつー!ユウ兄マジでいてぇよ!」

「知るか!てめぇの往生際か悪いのがいけねえんだろうがっ!さっきだって散々ヤっておいて何か?ヤリ逃げか?」

「ユウ兄だってよがってた癖っだぁ!」

言い終わるまえに橘の頭に更に拳骨が加えられた。

「ミニスカだってメイドだって猫耳だってなんだって着てきてやっただろう!SMだってハメ撮りだってスカトロだってやってやっただろうが!てめえザケんなよ!俺の夢が今目の前に、目と鼻の先にあんだよ!全部はてめえ次第なんだよ!やれよ!やってくれよ!」

もはや、どこかの映画の中のクライマツマックスシーンのようである。お前にしか出来ないんだとまるでヒーローに対して訴えかける相棒がごとく山田は橘に詰め寄った。

「大体四年前に付き合い始めた時にどう考えても俺がタチだったのにてめぇがなんでもするっつってきたのがことの発端だろうが!」

若干涙目になり始めている山田に流石にまずいと思ったのか橘は慌てて分かったからと繰り返した。

「よし、てめぇその言葉忘れんじゃねぇぞ」

その瞬間引っ込む涙と浮かぶ獰猛な笑みに橘はまたしてやられたと気がつく。なんだかんだで主導権はいつだって山田が握っている。

「とにかく!ミイは明日からテンプレ通りの俺様生徒会長受けをやるんだぞ。」

言ってる内容は恋人に対してとは思えない程にえげつないが山田の目は至って真剣だった。

「わかったよ、わかりました。」


山田結城はO学園のしがない生物教師だった。だらしなく伸びた髪に無精髭。着古した白衣にシワだらけのスーツ。王道真っしぐらなこの学園。山田は当たり前のように嫌煙されていた。生徒会顧問だのなんだのという大それた立場も無く。恐らく生徒にはその見た目のだらしなさによって記憶されるかもしくはまったく覚えられていない。全く持って目立たない。というか地味。暗い。女子高生風にいうならばチョーキモイ。そんな教師であった。
そんな山田はしかし、生徒会長という最強コマンドを持った腐男子なのである。

つづく?


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