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夢見処






まだ外は真っ暗で,月も輝いているころに私は目覚めた。
そして窓の方を見やれば,女性物の着物を着た男が煙管を吹していた。

「高杉はん…起きてらしたんですか?」

「ん?あぁ…こんな月の綺麗な夜だ寝ていたら勿体ないだろう?」

「ふふ…変なお方…」


そう言って私は,側に脱ぎ捨ててあった着物を着て,情事後の怠い体を動かし男の側へと行く。

「高杉はん,今夜はいつ頃お帰りなさります?」

そう言えば,男は日が上る前だと言った。

「そうですか…
なら,何かお呑みになりますか?酌くらいさせてくださいな」

「……今は酒を呑む雰囲気じゃあるめー」

そう言って男は私を優しく押し倒す。

「こんなにいい女がいるんだ。
名前もう一度抱かせろ」

「ふふ…やはり貴方は変なお方。
どうぞ,私も高杉はんと重なりたいですから」

そう言って微笑めば,男に口付けられる。
その口付けは,優しいものから激しいものへと変わる。微かに開いた隙間から舌を入れ,器用に絡め貪るように味わうように角度を変えられる。私は男にしがみつき,それに答える。お互いがお互いを求めるように。
口を離せば私達を銀の糸が愛しげに繋げた。
それを舐めとる男は妖艶で,つい見とれてしまう。

「名前…いい声で喘けよ」

男はそう耳元で囁き,私の胸元へと顔を埋め先程着直した着物がまた崩れる。

それからは私の口からは,色気のある喘ぎしか聞こえない。
せめて,この男が遊び飽きぬようにするだけ。
この情事が終われば,男は帰る。その時まで繋がれるように。


夢見処
(今度はいつ来はりますか?)(さあな…)


(一夜の夢を売る,けれどもはまっているのは私だけ)




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