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翠色の日々
翠色の日々D


「ていうか、大丈夫ですか?熱あるらしいですけど・・・帰れますか?」
「あ、あぁ。大丈夫だ」
敬太は精一杯微笑んでみせる。


「僕が途中まで送りに行ってくるよ」


陸が口を挟む。それを聞いてれなは安心したようで。

「うんっ。それなら安心!わたしも行ったほうが良いかな?」
「いや、僕だけで大丈夫だよ」
それもそうだねっ、と、れなは笑った。






「どうかまた、僕とれなに会いに来てくださいね」



「・・・・・・は?」


無言で二人歩いていた帰り道。敬太は、いつもの公園から陸宅がさほど遠くないことを知った。

公園が見えてきたところで――陸が突然言い出す。

少し怪しく思える微笑みを見せながら。

「ふふ、僕の家までの道は覚えられましたか?」
「いや・・・さすがに・・・てか」
「はい?」
陸はまた会いに来てもらうことが当然な事のように思っているのだろうか。

「なんでそんな事言うんだよ?」

「敬太くんとお友達になりたいからですよ」
「・・・・・・は?」


「僕がたまたま敬太くんとこんな風に出会うなんて、何かの縁を感じませんか?」


「・・・・・・そうか?」

敬太は、よくわからないというような微妙な顔を見せる。



「だから・・・ね?」



公園に着いたところで・・・陸は立ち止まる。
敬太もつられて立ち止まり、陸の言葉を待った。


陸は二つ折りにされた一枚の紙切れをズボンのポケットから取り出し、敬太の手の中に無理矢理収めさせる。


「僕の家までの地図と、電話番号と僕の携帯番号。書いてあるので」


敬太から一歩下がり、微笑む。


「気が向いたときに、どうぞ来てくださいね?」


「・・・・・・」


彼から不思議な何か雰囲気が出ているような気がして、敬太は何も言えずただ手の中にある紙切れを軽く握り締めた。




「それから――何か、どうしようもなくなった時とか」

「・・・・・・は?」


もう何度目だろうか。心の中に疑問符が浮き上がる。
ふふっ、と笑みを漏らした。



「――大丈夫、きっと貴方は、また会うことが出来ますよ」


「?」



「おもいびとの面影を残す少女に・・・・・・この公園で」




刹那――敬太の視界、周りの全てが真っ白になり陸の言葉だけが耳に響く。




今はそれだけ言っておきます、と。


「では、さようなら。また会えることを楽しみにしてますね」


立ち竦む敬太の言葉を待たず、陸はすたすたと軽い足取りで去って行った。



「・・・・・・な」



いつも通りの景色が戻ってきて、声を出した時にはもう陸の姿は見えなくなっていた。


そして敬太の脳裏には陸の笑顔と金髪の少女、イリスの姿が浮かんでいた。



「・・・・・・何者・・・・・・?」



無意識の内にきつく握り締めていた手の平を開く。

そこにある紙切れを見つめると、ふらりと意識が揺らめいた。




――・・・・・・とりあえず、家に帰ろう・・・・・・。






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あきゅろす。
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