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 その日俺は、委員会があったせいで帰りが遅くなった。

 だから昨日みたいに早由樹を一人にしちゃいけねぇって、委員会終わったら走って真っ直ぐ家に帰って来た。

 だけど何故かまた母親も父親も留守で…。

 それにスゲー嫌な予感がしたから、俺は早由樹の部屋へ向かった…。

 コンコン、コンコン。


 「早由樹…早由樹ー?居るのか…?」


 部屋をノックをして尋ねてはみるものの、早由樹からの返事はない。

 それに更なる焦りを感じた俺は、悪いと思いつつゆっくりとノブを回した。 


 「…早由樹…?」 


 部屋の中を見渡すと、布団を深く被ってベッドに横たわっていた早由樹を見つけた。

 でも、様子がおかしい。眠っている、というよりは何だか…。

 俺は妙な違和感を覚え、早由樹の居るベッドへと近寄った。


 「………早由樹?」


 もう一度、名前を呼んでもやはり応答がなかった。

 渦巻く不安が駆け巡り、俺は堪らず早由樹が描けていた布団をゆっくり捲った。


 「…………っ!!」


 そうして目を疑った。

 早由樹の身体には、無惨にも白い液体やら赤い液体やらが嫌にこびりついていた。

 何だ、これは。一体どうなってるんだ。

 部屋に入った時から感じていた生臭い精子独特の匂いは、頭を刺すようだった。しかも早由樹は、顔以外の体のあらゆる所に打撲と痣の痕もあり、太股からは鮮血が流れていた。


 「…………………」


 俺は今自分の目に映っている光景が信じられず、しばらくの間そこに立ち尽くしたまま動けなかった。

 その中でも目だけが動き、俺はゆっくりゆっくり部屋一辺を見渡した。

 充満している精液臭さと、倒れて血を流す早由樹。シーツも早由樹同様に赤や白やらで汚れていた。

 しかしそれ以外で、部屋に目立った荒らされた形跡も見当たらない。という事はやっぱり…。

 もう何が行われたのか、それだけで充分だった。だけど、分かりたくない自分がいた。

 現実を受け止められない。


 「…おに…っ…ぃちゃ、ん…」
 「早由樹!?」


 さっきまで開いた口も塞がらなかったのに、早由樹が小さく動いて弱々しい声を発した途端、俺の体は瞬時に早由樹の元へと駆け寄っていた。

 弱々しい体に手を添え、手を握ってやる。早由樹の身体はカタカタと微弱に震えていた。


 「…早由樹っ…どうして…!」


 それでも俺は、相手が怪我人だという事も忘れて必死に問い詰めた。

 何があったんだ。

 お前の身に、一体何があったっていうんだ。何で、何で、早由樹がこんな事になっているんだ。―――――誰が、お前をこんなにしたんだ。


 「……何で…っ」
 「…………………」


 しかし早由樹は俺の問いに答えてはくれず、口を頑なに詰むんだままだった。


 


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