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蹲って泣くあの子に、手を差し伸べて肩を抱いているのは―――俺じゃない他の奴。
その存在に、俺は身体の機能が停止した。
「…えっく、…に、いろ…ぉ」
あの子が見上げる先、ニイロ。
泣き止まないあの子を宥める、ニイロ。
俺じゃない。
誰なんだ…。
俺は訳が分からなくて立ち止まったまま、そいつ――ニイロによって明かされる事実を呆然と聞く事しか出来なかった。
「もう…アイツには近づかない方がいいよ」
「椙くんに…?」
突如上がった自分の名前に、俺はビクリと肩が跳ねらせた。
「あんな奴に関わったから、こんな事になったんだよ」
「にいろ、はいいいの…?」
「あぁ、オレはあの椙とかいう奴みたいにキレイじゃないから。あの子達もきっと、イジメてはこないと思うよ」
「ほんと…?」
「うん。だから、もう傷つかなくていいんだよ。椙って奴にさえ近づかなきゃ、大丈夫だよ…」
吐き気がした。
あいつの声と、それを信じてあいつの慰めを笑顔で受けるあの子の姿に鳥肌が立った。
それから、俺に関わる知られざる真実にも。
もしも今ニイロとかいう奴の言った事が、本当だというのなら。
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