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あぁ頼むから、誰か早くこいつの口を閉じさせてくれ…。

しかしそんな俺の思いとは裏腹に、ある日を境にユヅキはファミレスへ来なくなった。


「あの人、来なくなっちゃったね…」


その事を心底悲しそうに同じバイトの女の子達が口々に話す。


「はぁー、アタシ超タイプだったのに」

「でもあの人、まったく反応無しだったじゃん。ガードもかなり固かったしぃ」

「だ、だから今から本気でアプローチをしようと…!」


各々に必死な訴えをする女の子達。

あぁ、俺あの子気になってたのになぁ…。
そうしてまた美形に取られていくのか。

そう思うと、自然と居ないアイツへの嫌悪感が募った、時。
カラン、カランと、ふいに店の鈴が鳴った。


「い、いらっしゃいませぇ!」


店のドアが開いた途端に女の子の一際高い声が聞こえ、俺は振り返った。


「…………あ」


―――――奴だ。
あの茶髪野郎だ。

だが、アイツはいつもの落ち着いた様子ではなく、何やら焦っているようだった。

そんな事と知らない女の子達は、非常に嬉しそうな笑顔で率先してオーダーを取りに行く。

さぁ俺も仕事、仕事っと。

次に鳴った呼び鈴に気づき、茶髪野郎…改めユヅキの真逆のテーブルへと向かう。

 

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