5
あぁ頼むから、誰か早くこいつの口を閉じさせてくれ…。
しかしそんな俺の思いとは裏腹に、ある日を境にユヅキはファミレスへ来なくなった。
「あの人、来なくなっちゃったね…」
その事を心底悲しそうに同じバイトの女の子達が口々に話す。
「はぁー、アタシ超タイプだったのに」
「でもあの人、まったく反応無しだったじゃん。ガードもかなり固かったしぃ」
「だ、だから今から本気でアプローチをしようと…!」
各々に必死な訴えをする女の子達。
あぁ、俺あの子気になってたのになぁ…。
そうしてまた美形に取られていくのか。
そう思うと、自然と居ないアイツへの嫌悪感が募った、時。
カラン、カランと、ふいに店の鈴が鳴った。
「い、いらっしゃいませぇ!」
店のドアが開いた途端に女の子の一際高い声が聞こえ、俺は振り返った。
「…………あ」
―――――奴だ。
あの茶髪野郎だ。
だが、アイツはいつもの落ち着いた様子ではなく、何やら焦っているようだった。
そんな事と知らない女の子達は、非常に嬉しそうな笑顔で率先してオーダーを取りに行く。
さぁ俺も仕事、仕事っと。
次に鳴った呼び鈴に気づき、茶髪野郎…改めユヅキの真逆のテーブルへと向かう。
[前*][次#]
[戻る]
無料HPエムペ!