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それは幸福
5


 「どう、意外に広いでしょ。ベッドも大きいの買ったんだ。俺も春臣君も小柄じゃないからね。」

 何が面白いのか、誠太はクスクスと笑う。   

 ― この気味の悪い気狂いめ。

 あれから強制的に春臣は誠太の言う離れの家に連れて行かれた。着いて直ぐにつけられた鎖は春臣の足首とベッドの柵とで繋がれている。
 動くたびにジャラリとなる鎖の音が耳障りであった。

 「でも、ようやく2人きりだね。この時をどれだけ待ったことか」

 先程までいた黒服の男は誠太に何か耳打ちしてそのまま何処かへと行ってしまった。
 最早この狂犬を止める者は誰1人としていない。

 「馬鹿なことは、よせよ。俺に嫌われたくないんだろ、こんなことしても嫌われないって思ってるのか?」
 
 「ん?馬鹿なことって、何?これから俺に何されると思ってるの?」

 「何って...そんなの、」

 ― そんなこと、一つしかないだろう。

 誠太の、こちらを見つめる瞳は肉欲に溺れ澱んでいた。

 「俺何も言ってないのに。春臣君はえっちだなぁ...」

 「...お前、本当気持ち悪いよ」

 それは心の底から思う感情。この気持ちをもう何度こいつに言ったことだろうか。
 吐き捨てるようにしてぶつけるその言葉に一瞬、誠太の眉がピクリと動いた。

 「俺は、気持ち悪くないよ。ただ春臣君のことが好きなだけ。それなのに...どうしてそんなこと言うの」

 そうして誠太から表情が消え、能面のようになる。そのまま近づいてくる誠太から逃げようと春臣は後ろへ下がるがすぐに壁に追い詰められずるずると床にへたり込んだ。

 「最近さ、千晶妙に消極的なんだよね。復讐しようって誘ってきたのはあいつの方なのに。」

 「い、嫌だ、やめろ...っ」

 「だから俺も好きにすることにしたんだ 」

 「ぁぐっ、」

 「ねぇ、春臣君。今すぐ裸になるのと顔を打たれるのどっちがいい?」

 再びにんまりと笑う誠太は春臣の髪を掴み顔を上げさせた。どちらの選択肢も選びたくない程最悪なもの。けれども、顔を打たれてしまえば仕事に影響が出てしまう。

 「脱ぐ、すぐに脱ぐから顔はやめてくれ」

 「さすが春臣君、物分かりがいいね」

 誠太が掴んでいた髪を離せばパラリと数本が床に落ちる。

 ― こいつ、許さねぇ。調子に乗りやがって...。

 募ってゆく恨み言。しかし今の状況を考えれば発散することもできない。結局のところ、春臣は誠太の半ば強制的なお願いを聞くしか選択肢はないのだ。

 「あぁ、嬉しいな。俺の家に春臣君がいて2人きり...何度夢を見たことか」

 春臣が服に手をかけていく間、誠太はぶつぶつと何やら呟いては感嘆していた。
 乱暴したり暴言を吐くわりには春臣のことを何やら神聖化している節がある。

 ― 過去に戻れるなら戻ってこいつにだけは手を出すなと自分に忠告してやりたい。

 「相変わらず、きれいな体してるよね」

 「...っ、」

 2度目ということもあり、また抵抗したところで痛い目を見るのは自分だと分かっていた春臣は躊躇うことなく衣服を全て脱ぎ捨てた。
 そうすれば全身に絡むような視線が向けられゴクリと唾を飲み込む。

 ― あぁ、これは悪い夢だ。

 自身の体に伸びてくる手。春臣にとっての恐怖が近づいてきた。


 ――


 ――――


 ――――――


 「ん゛んぁ゛、ふ...っ、」

 「そう、奥まで咥えてね。そのまま...すごく気持ちいいよ」
 
 大きなベッドの上には全裸の男が2人、絡み合う。仰向けで寝ている誠太を跨ぎ尻を向ける形で春臣は誠太の怒張したものを舐めていた。

 ―このまま射精させたら解放してくれるだろうか。いや、ここまで来てこの状況...それは望めないか。

 「ひぎっ!!ぃっ...」

 「ダメだよ春臣君、ちゃんと集中して」

 意識を逸らした瞬間、強く掴まれる自身の性器。ただでさえ縮こまっていたそこは尊厳も何もなく存在感を失っていた。

 「おちんちん、ふにゃふにゃで可愛い。それにしても春臣君はお尻の穴がすごくきれいだね。ピンク色で処女って感じでさ」

 「ひっ!?や、やめっ!舐め...るな」

 熱く、湿ったものが尻の穴に宛てがわれる。かと思えばそれはベロリと舐め躊躇なく尻の穴にねじ込まれた。
 擽られるようなもどかしさが走り、それが気持ちいいと感じてしまう自分に吐き気がした。

 「ほん、と...やめ、」

 「春臣君、初めてにしては感じ過ぎじゃない?てかまだ入口部分を舐めってるだけなんだけど...本当すけべだね」
 
 尻の穴を少し舐められただけで春臣はフェラすることも忘れ、尻にばかり意識が向いてしまっていた。それに気がつき一気に春臣の頬は羞恥心で赤く染まる。

 「ち、違う...っ、感じてたわけじゃ」

 「じゃあ、これはどう?」

 「あぁっ!!くぁ、ひっ...きゅ、急にいれんな...っ、」

 タラ、と液体を尻の穴にかけられたかと思えば、ずちゅりと音を鳴らして中に指を挿れられた。
 異物が侵入してくる初めての感覚に吐き気は強くなる。――― しかし、

 「だから、春臣君。感じ過ぎじゃない?」

 何度か指を出し挿れされてるうちに春臣の性器は芯を持ち始めていた。吐き気や嫌悪感、痛み全てに矛盾して高まる下腹部の熱。

 「あっ、あ゛ぁっ、ひぁ...く、」

 「ショタコンな上に、処女のくせしてお尻で感じるなんて変態過ぎて笑っちゃうよ。こんなんでよく抱く側やってたよね」

 節のある男らしい指が中を蠢くたびに春臣の口からは嬌声が漏れる。

 ― 嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ。俺は喜んでるのか?こんな気持ちの悪い男に尻の穴舐められて指突っ込まれて...

 「ひぃっ、あ、あっ、そ、そこ...さわ、るな...っ、」

 不意に、まるで腫れ物のような敏感な部分に指が触れ、一際高い掠れた喘ぎ声が漏れ出た。
 その光景を見た誠太は舌舐めずりをして今度はそこばかりを抉るように捏ねてくる。
 その度に腰が揺れ、既に勃ち上がった春臣のものが揺れ誠太の腹に当たる。そうして何度か繰り返せば、誠太の腹は春臣の先走りでてらてらと濡れた。
 恍惚そうにそれを眺め誠太の視線に春臣は気がつかない。否、気がつく余裕がないほどに乱れ始めていた。だから、知らず知らずのうちに出し挿れする指が増えていったことにも気がつかない。

 「もう大分解れたよね」

 「ひぐっ、ぁ...え、な、何す―――」

 唐突に尻の穴から抜けていく指。誠太を跨いでいたはずの春臣は次の瞬間には仰向けになって黒い影に覆われていた。

 「千晶には、内緒だよ」

 耳元で囁かれる言葉。開かれ、深く折り曲げられる脚。

 尻の穴にあてがわれる熱い昂り。

 「い、や...いや、だ、嫌だ、嫌だ嫌だいや、ぁあ゛あああっ!!」

 怒張したものが否応なしに中を犯し、メリメリと肉が開かれる。限界まで開かれる穴の縁に赤い筋が通った。

 「ごめんね、俺の大きいみたいだから」

 部屋中に叫び声が響く中、誠太はいつもの爽やかな笑みを浮かべていた。
 


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