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最後に笑うのは、




 「やっぱ、あきねぇな...松高は、」


 夜になり、涼しい風を感じながら俺は先程のことを思い出してクスクスと笑う。
 あんなに辛くてしょうがなかったのに松高といる間は何も考えないで過ごすことができた。


 ― 久しぶりにあんな笑ったし、まともに飯も食った。


 たまに別の空気を吸うのもいいもんだ。

 時刻は夜8時を回ろうとした頃。駅につけばこれから俺と同じよう帰るのか、若者で溢れかえっていた。

 携帯には心配していた二葉からのしつこいメールもなく、安心する。
 やけにいつにもまして物わかりのいい二葉の様子に一瞬不安を感じるが、それに対しては気付かないふりをする。

 せっかく今はいい気分なんだ。どうせ明日からまた辛い日々が始まるのだから。
 今日くらい嫌なことは考えないようにしよう。


 そんなことを考えながら俺は緩まる頬をそのままに、駅内を進んでいく。


 だが、俺はすぐに足をとめた。


 ― どうして、楽しいままで終わらせてくれないんだよ、


 俺の視界の先に写るのは、肩を寄せ合って仲良さげに歩く ―――――――


 ――― 日向と二葉の姿。


 見ようによってはまるでカップルのようにも見える姿に、俺は胸を締めつけられた。


 ― なん、でだよ...なんで...。なぁ、なんで日向は二葉とあんな風に歩いてんだよ、


 目の前の現実が信じられなくて。

 人違いじゃないかとバカみたいなことを考えて...


 そこからの記憶はない。


 気がつけば、俺は自分の部屋にいて、


 「...うっ...ひ、なた...っ、ひな...た...っ」


 悔しくて悔しくてムカついて...でも日向の中の何かが変わったのだろうという事実を信じたくなくて。

 俺は何年ぶりになるか分からないほどの涙を溢れさせて泣いていた。


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