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最後に笑うのは、




 「あはははっ、日向さんそんなこと大学でやっちゃったんだ」


 「本当ヤバいよな。俺もちょー恥ずかしくてさ」


 俺の部屋で会話に花を咲かせる2人。俺はムカムカとし、走らせていたペンを止まらせた。


 「おい、二葉。勉強しないなら帰れ。何のためにお前はここに来てると思ってんだ。」


 「う...ごめんなさい、」


 一瞬にして落ち込んだ様子の二葉。そんな姿も、きっとこいつは本当に悪かったとは思っていないだろうな、と古くから二葉のことを見ていた俺は捉えていたのだが...日向はやはり違ったようで、


 「なんだよ、その言い方。二葉がかわいそうじゃん。他にもっといい物言いがあるんじゃねぇの」


 「...っ、」


 「あっ、大丈夫だよ、日向さん!悪いのは僕だからさ、」


 投げかけられる言葉は胸の深くに突き刺さる。そしてフォローするかのように告げられる二葉の言葉で苛立ちは膨らんでいく。

 あれから2週間。二葉は毎日俺の家へ来て、同様に日向も毎日俺の家に来るようになった。


 今日も休日だったため、昼間から2人は来てたのだが....どこかでバッタリ会ったらしく、2人で俺の家まで来ていた。


 暑い夏の日。めずらしく開いた窓からは涼しげな風が入り込んでくる。
 気持ちよさそうに目を細める2人。だが俺はその風を心地よく感じることができなかった。


 突如崩された日常。目をそらす現実。不快な言葉。


 この頃ぐん、と食欲が落ちたのは夏バテのせいだけではないはずだ。
 胃がキリキリと痛むのも、頭痛がするのも、1人になった時、よく過呼吸を起こすようになったのも...


 原因は分かってるんだ。俺が好意を寄せる相手に近づくのは、過去のトラウマ。


 二葉は涼しい顔して...無垢を気取って明るく笑う。素知らぬ顔して日向に触れ、日向と話し、日向と笑い合う。


 「...っ、トイレ行ってくる...」


 目の前のトラウマのせいで込み上げてくる吐き気に、俺は堪えることができず立ち上がると足早に部屋を後にした。


 「う゛ぐっ...が、はっ...はっ、ん゛...げほげほっ、」


 朝は何も食べていないせいで便器に吐き出されるのは胃液のみ。

 だから、吐いても吐いても苦しくて、スッキリしなかった。


 ― 早く...早く、前みたいな日常に戻ってくれよ...


 ミンミンと鳴く蝉の声。


 何故だか、その音は永遠に続くような気がした。

 長い長い夏の日々。


 悪夢はまだ始まったばかり


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