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最後に笑うのは、




 駅内で日向と二葉が歩いているのを見かけてから数日が経った。
 その数日間も日向と二葉の2人は何事もなかったかのように、毎日俺の家に来ていた。

 しかし俺はあの日のことを聞くことはできず、苦虫を噛む思いに駆られる日々を過ごす。


 「先輩、本当に大丈夫っすか?なんか日増しに元気がなくなってきてる気がするんすけど...」


 「おーおー、ありがとよ。大丈夫だ。俺はお前と話してるだけでなんか癒されるから」


 「えっ、あ...そうっすか?もしそれが本当なら、すごく嬉しいっす。」


 顔を赤らめ、恥ずかしそうに下を向く松高。
 そういう顔が可愛いんだよな、と俺は心の中で呟く。

 全ての講義が終わり、借りていた本を返そうと図書室に寄ってみれば偶然松高と居合わせた。
 俺は喜々として同じく本を返しに来ていた松高を捉まえ、そして今に至る。

 最近はサークルの方にもあまり顔を出すことができず、松高による癒しも補給することができないでいた。
 だから今のうちにたんと補給しよう。...そう思っていたのだが、


 「おっ!穂波、ここにいたのか。探したぞー、」


 「...日向、」


 松高と会って数分もしないうちに日向が目の前に現れた。
 ニコニコとした笑顔を向けられて嬉しいと思う反面、二葉とのことを考えれば複雑な思いにも駆られた。


 「話があるんだ。ちょっとここでは言えないことなんだけどさ、」


 「話...?」


 何故だか嫌な予感で胸がざわつく。日向について行きたくない、そう思ってしまった。
 だからか無意識に体は隣にいる松高の方へと寄り添うようにして近づく。


 「...先輩、どうし―――」


 「あーっ!松高いた!本返してたの?」


 松高の声を遮るのは高い、可愛らしい声。図書室の入り口にはこちらに手を振る松高の彼女の姿があった。


 「声デカイし!ここは図書室だから静かに...」


 「はいはーい。...あっ、すいません。話の途中でしたか?」


 駆け寄ってきた彼女は俺と日向の存在に気がつき、急に大人しくなった。
 先程の元気さを抑え、他人行儀に...丁寧にそう問いかけてくる。


 「...いや、大丈夫だよ。それじゃあな、松高」


 「あ...っ、先輩」


 彼女のその姿を見てさすがに俺は気を使い、重たい足を持ち上げ歩み出す。

 そんな俺の隣をついて歩くようにして日向も歩く。


 「いつ見てもラブラブだな。2人とも気をつけて帰れよ」


 日向の明るい口調。「...はい」と、小さく呟く松高。
 背中に視線を向けられているようなむず痒い感覚が走ったが、俺はそのまま日向とともに図書室を後にした。


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