果心居士

服部半蔵は徳川に仕え始めた頃様々な忍と縁があった。後に織田信長に幾度も刃向かっては許されたという松永弾正に仕えた果心居士もその一人である。

果心居士は加藤段蔵を弟子にとり、表向きには奇術者として街中で見せ物をしていた。

「…おや、珍しい」

「…また見せ物か」

「ええ…しかし段蔵が家出しましてすこし懐が寂しいのです」

「…(厄介な)おれでも客になれるか」

「ええ、毎度どうも。まぁあの子なら、一人でも生きていけるでしょうが」

見せ物の人形道具をゴソゴソする果心。

「…お主一人で大丈夫なのか」

「おや…心配して下さるのですか、こりゃまた珍しい…雪でも降りますかね」

「今は夏だ」

「…カタブツ(ボソ)」

「悪かったな(真面目過ぎて。)」

「あなたの良い所ですがね」

「そうか(スルー)」


しばらくして、帰る時刻になったらしい。


「ではな。なかなか面白かったぞ」

「どうも…そういえばお連れ様が今日は見られませんね」

「…………?」

「いつもいらっしゃるじゃないですか、後ろに。あなたと同じ鳶色の目の。」

「…おれは知らぬ(確かに妙な視線は感じていたが)」

「てっきり部下の方かお守りかと」

「…ひじり(お守り)は昨年死んだが」

「…そうですか」

「…(キョロキョロ)」

「一応言っておきましょうか…あなたに背丈以外そっくりでしたよ」

その言葉に地味に傷つく半蔵であった。




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