Cendrillon (0) 「あんた、凄いねぇ……こんなに良かったのは何十年振りだよ」 女は男の腰の上に跨がったまま満足げに云いました。 「その若さで『何十年振り』とは……お前、本物の魔物のようだな……」 男は女を見て力の無い声を漏らしました。 「だから、何度も云ってるだろ、悪魔だって。淫魔だ。あんたのすべてを搾り尽くしたところさ」 「俺は……死ぬのか?」 「ああ、まだ生きてるのが不思議なくらいだよ」 「そうか……」 男は女から視線を外し、仰向けのまま空を見上げました。 森の中、重なり合う枝々の隙間から快晴であろう青空が見えます。 木々の間を抜けて来る風が、体力を使い果たした躰に心地良く感じました。 ……最愛の妻を早くに亡くした。 義理で再婚はしたけれども愛情を注ぐことは出来なかった。 それ故、あまり家にも帰らず旅暮らしの毎日。 ここで野垂れ死んでも何ら悔やむことは無い。 ただひとつ、気がかりなのは……。 男は女に視線を戻しました。 「お前が本当に悪魔なら……」 女が腰を上げたとき、もうすでに男は息をしていませんでした。 立ち上がると肩ほどまでの黒い巻き毛が風にそよぎました。 その巻き毛の中から捻れた短い角が二本伸びています。 一糸纏わぬ浅黒い肌の上に、木漏れ日が光の模様を画いていました。 長いこと同じ姿勢だったからか、女はひとつ伸びをしました。 股関からは、男が放った大量の精が溢れ出し脚を伝って流れていましたが、一向に気にしていない様子でした。 「久しぶりに腹一杯にして貰ったし、一肌脱いでみるかね。どうせ暇だし」 女は男の願いを聞き入れることにしました。 サキュバス童話 『Cendrillon』 [戻る] |