■事の始まりは・・・・・私がシャーペンを落とした事から始まった。 「なぁ、カセン。お前って本当は”女”じゃねーの?」 「え・・・・?」 いきなりそう切り出されて体がびくついた。 ここは生徒会室。戒と二人きりでシャーペンを探していたときの事である。 遡る事数分前。生徒会の役員会が終わった私は胸ポケットからシャーペンを取り出して今日の役員会の内容を厳武様宛のメモに書き込もうとした時だった・・・ 「アレ・・・?無い・・・・?」 そう呟いた私にたまたま行く方向が一緒だったのか近くを歩いていた”こいつ”が反応したのだ。 ”早乙女戒” 生徒会長の・・・・”犬”。 いつも乱れた服装でやってきてこれみよがしに人々の目の前で生徒会長、”華桜麗姫”にそれを直してもらう。その姿を周りに見せ付けるように。仲の良さをアピールしている鼻につく二人の片割れ。 ”厳武様・・・・” 急に高等部の学園長・・・私の”主人”のその方のことが恋しくなり胸が痛んだ。 そして仕方なく「生徒会室の鍵を貸してくれ・・・!」 と犬にせがんで断られ・・・仕方なく今に至る。 生徒会室で二人きり。 特に何も考えず無心にソレを探していた時に不意に言われた。 「え・・・?」 びくつく体。・・・それしか答える事ができなかった。 「・・・・・まぁ、そう怯えんなよ。・・・・・これは只の俺の憶測なんだから・・・よ?」 そう言って笑顔を見せられたら緊張を緩められる状態でもなかった。 鍵を貸してくれ!とせがんで断られたが。自分と一緒になら部屋の鍵を開放してもいいと言われ。仕方なくついてきた。 だが。急にそう言われ、怖くなった。 昔のトラウマが身体を走る・・・・・・。 ”女”だった自分に・・・・・・・・・・起きた一つの”事件” 「カセン・・・よ。」 それに続くように戒が何かを言おうとした時だった 「ん・・・・?」 ”カセ”ン”が急にガタガタと震えだした。 その勢いが激しくてかけていた丸眼鏡が下に落ちる。 そして大きな瞳がこちらを覗いたと思った瞬間。目から涙が零れだした。 「・・・・お・・・・オイ・・・!大丈夫か・・・・・?」 ・・・・・ 「カセン・・・・!!!!!!!!!」 ぎゅう・・・・・・ 思わず俺はカセンを抱きしめてしまった。 震えた体を押さえつけるにはこうするしかなかった。 「ヤメロ・・・・!!!!!・・・・何する気だ・・・!!!」 暴れだそうとするその小さい身体を更に強く抱きしめた。 「待て・・・ここは生徒会室だぞ・・・!!!!!!!変に暴れて物でも壊したら”麗姫”が・・・!」 パンッ・・・!!!!! 「・・・つっ!??」 暴れる彼女をなだめようと手を緩めた瞬間に彼女の手が頬を叩いた。 「お前なんか・・・・・嫌いだ・・・・///!!!!!!!!!」 そう言って落ちた眼鏡をかけなおし。出て行った彼女の背中を見送って・・・・・・戒はため息をついた。 「・・・・・・・・・・渡しそびれたな・・・・・・」 それは彼女の”落とした”というシャーペンである。生徒会室を退室前に見つけて彼女のものではないかとさり気無く追いかけて行った時に”鍵を貸してくれ!!”そうせがまれてつい渡しそびれて探す事になった。 ”きっかけ”が欲しかった・・・・。 女の姿で男の格好をしてわざわざ髪まで短くして”ここ”にいる”理由”。 多分それは・・・・・・・”分かっていたけれども”本人の口から聞きたかった。 「嫌いだって・・・言われちまったな」 叩かれた頬に手を当てながら戒はぼそりと呟いた・・・・・ 「護って・・・やりたいんだけどな・・・・。」 それは”麗姫”同様に。いやそれ以上の”気持ち”なのかもしれない。 か弱そうなその姿できじょうに振舞うソレがどこか重なるようでまた違ったソレを愛しく感じるようになっていた。 幼馴染の”麗姫”とは違った。別の感情。 「カセン・・・ゴメンな。」 そう言って戒はポケットに入れていたシャーペンを放り出すと生徒会室の鍵を開けたまま出て行った。 彼女が見つけて安心するように。 ・・・・・・・・・但しその後戒は生徒会室の鍵を開けて開放しっぱなしだった罪で”麗姫”にこっぴどく怒られるのであった。 ■END [*前へ][次へ#] [戻る] |