■「お断りします・・・・近寄らないで・・・・!!!!!!!!!」 そう言ってがたがたと震える少女。 礼拝堂内の小さな一室。白金 雪花(しろがね せっか)はガタガタと震わせながら恐怖の瞳でこちらを見てきた。 「頼む・・・君の力を貸して欲しいんだ・・・・・・・。」 大きな愛犬を連れた彼女のソレを少しだけでいい貸して欲しい。・・・・・・・立ち入り禁止の札を破って雉鷹は彼女の前へと訪れた。 「いや・・・・・嫌です・・・・帰ってください・・・・・!!!」 そう言って今にも泣き叫びそうな少女。その姿を見ながら雉鷹は笹目も今同じ状況に陥っているのかもしれないと不安ばかりを募らせた。 しかし。 「これも主のお導きかもしれない・・・・・もし我らが主が打ちの部員の死を宿命と認めるならば俺もソレは諦めよう。だが只の運命・・・・未来ある分岐点の一つならば。俺は自分とこの君の力でこの運命を切り抜けたい。」 低い心地の良い声のトーン・・・・・・・普通の女性であればそこで落ちるものかもしれない。 それでも・・・「嫌です・・もう出てってください・・・!!!」ツイに彼女の目から涙が零れ落ちた。 ”笹目も・・・もしかしたら今はこんな状況にいつるかもしれない・・・・” 「クゥン・・・」 犬のクロガネが少しだけコチラに目を向けている。本来なら少女を守るため牙を向きたいところだが。 傍に居たもう1人の少年が気になるようだ。 天門(てんもん)みこと君。何故か動物に好かれる不思議な男。 だがそれも雉鷹が期待した以上の効果は出なかったようだ。それに佐伯が少し苛立ちを見せ始めたその時である。 「犬が欲しいのなら中庭の方にどこかの生徒のボーダーコリーが繋がれていたわよ。」 そう言って現れたのはカトリック科3年の生島 祥子(いくしま しょうこ)。 雉鷹とも面識の在る純キリシタンな女性である。ふだんはやや抜けていて行動もワンテンポ遅い彼女だが礼拝堂にいるときは神々しい何かを宿した雰囲気がある。 「ボーダーコリーか・・・・・本来なら笹目の家のテツが居ればよかったのだが・・・・・」 この日テツはご老体で自分の身体で公演会まで向かえない彼女の祖母のお守りをしていた。 今頃畑仕事で土いじりをしているであろう。 「まぁいい・・・とにかく行くぞ。みことくん・・・!!!」 彼が居ればまぁ飼い主が居なくとも何とかなるだろう。そう思い礼拝堂を抜けた瞬間である。 目の前に現れたのは天門(てんもん)まこと。みことの双子の片割れである。 「話しは聞いたよ・・・!!!!先輩!あたしたちも一緒に捜索させてくれ・・・・!!!」 そう言って現れた彼女の後ろには呼びつけていた雫くんと当の目撃者、渚くん。 それから「・・・・お前は・・・・・」 現れたのは宮代兄弟の両名。・・・・それと。 「誰だお前は・・・・!!!!」 雉鷹がそういうと彼は「西出俊介です!」と名乗った。 どうやら笹目は少々年上の成人男性に連れ攫われたという事で。彼のような少々ガタイのいい好青年が対抗して現れたようだ。 「・・・・気持ちはありがたいが・・・・・・・・・・ん・・・・・・・」 そういえば。梨々花はどうした・・・・・? 雉鷹のその声に「黒川先輩は所用があるって。どこかへ行きました。それから八重花ちゃんとはなちゃんがいま舞台の封鎖を手伝ってます。」 それに内気がちなはずの雫が答える。 「それと先輩・・・一応、似顔絵が出来ました・・・・///!!!」 そう言って渡された二枚の紙。 確かに少々年上の大人とは決して言い切れないかもしれないが先人男性のような風貌のソレが描かれてあった。 「あと。彼女の証言から服装などの特徴もとらえたので。そのメモも一応用意しておきました」 準備がいい。・・・・・・雉鷹は正直驚いた。 それに加担したのは3年の渋川だったが。非力な自分では笹目の救出劇の邪魔になるだろうとそこで援助を終わらせたのである。 「まぁいい、とりあえず俺は生島に言われたボーダーコリーをみことくんとつれてくる。」 お前らは携帯で連絡を取り合いながらさり気無くカトリック科校舎のほうを見回ってくれ。 「え・・・・俺もですか。」 宮代梓がそういうと歩の方が「だいじょうぶ!梓には俺が着いてる・・・!だから一緒に名護ちゃん先輩を助けようぜ!」そう言って笑顔を見せる。 その笑顔に雉鷹は少々戸惑いの色を見せながらも。”笹目を守りたい気持ちは本物だろうと”それを彼に託す事にした。 そして。「女子3人は・・・・・いや。まことくんのことは信じているが・・・・・・・・・・・・・危険だからできるだけ校舎には近寄って欲しくない。だが女性だからこそ笹目のように狙われる事になるかもしれない。」 彼女達が目線に入ればまた少し笹目に向かれた敵意が削がれるかもしれない。 少々危険な目に会うかもしれないが女子は女子で固まって校舎の方を見て欲しい。 できれば・・・・・・いや連絡が必ず取りああって双方すぐに駆けつけられるようどうにかしてくれ。 それと・・・・・・「お前は・・・・1人でも大丈夫そうだな。」 雉鷹の目は西出に向けられた。 そして宮代兄弟/女子チーム/西出の3班に分かれての捜索が始がはじまった。 ------------- レイのボーダーコリーのところに行くとそこには飼い主と思われる少年が立っていた。 「あれ・・・・?なんか・・・演劇部の方。なんかあったみたいらしいっすけど部長さんがなんでここにいるんすか?」 それは普通科二年の鈴原 匠(すずはら たくみ)。 そこそこ目立つ風貌と愛嬌の在るその人気からみことは彼の事を知っていた。 「タクミ・・・・・・!!!!!!君の犬を貸してくれ・・・!!!!」 そうせがむみことくん。 「うちのエルを?・・・え、別にいいっすけど・・・・」 3年の雉鷹が居る都合上少々敬語気味に返って来たその言葉に雉鷹は「助かる・・・・」 と、胸元から笹目の制服を取り出した。流石に女子更衣室に入るわけにはいかないので事前に黒川に取りに行ってもらったのである。 その上から笹目は舞台用のオーデコロンをつけていたような気がするがこれで少しでも誘拐犯に近づければそれでいい。・・・・・・・・・このボーダーコリーが役に立ってくれる事を祈ろう・・・・・・・。 そう思った矢先、匠の愛犬。ボーダーコリーのエルはいきなり走り出した。 それはやはりカトリック科の校舎側。・・・・中庭からそこまではかなりの距離が会ったが雉鷹は文化部らしい自分の肉体の限界に気づきつつも一生懸命に走った。 先にリードを持ったみことが走って行く。 「みことくん・・・とりあえず・・・・・笹目に危害が加わりかねないかもしれないから、教師達にはまだこのことは黙っていて欲しい・・・!!!」 逆に警察などを呼んで相手を逆撫でしたらたまったものじゃない。 笹目の安否が気になるが体力ではみこと君とエルには追いつけない。 そして相手は成人男性二人。 見つけて笹目を救うにはどうしたらいいだろうか・・・・・・・・・・・・・ まだ雉鷹にはそれは浮かばなかったが笹目の安否だけが心配で一生懸命歩みを止めなかった。 そして梨々花もまた別の道から笹目の救出を考えていた 「待っててね・・・!なごみん・・・!私が・・敵に立ち向かえる勇気を絶対にわけてあげる・・・!!!!」 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |