■耳障りな雨音でカセンはベッドから目を覚ました。 ”起きたく無い・・・・・” それは翌日の出来事である。 昨日・・・・帰り際に麗姫からシャーペンを渡されたカセンはそのままもそもそと家に帰ってベッドに入った。そして食事もとらずそのまま就寝。 彼女は帰国子女で一人暮らし。時折厳武の部下が世話をしにくるときもあるが殆どはいつも家で一人である。 こんな任務の都合上1人で居る方が楽だとは思っていたが・・・・・ ”辛い・・・・” 「お前なんか・・・・・嫌いだ・・・・///!!!!!!!!!」 そう言って叩いた手を授業を休んで何度も洗った。 校長室に行きたかったが他の生徒や職員に見られるのもどうかと思いそれはやめた。 なんとか最後は授業に戻り、帰り際にシャーペンを返されて戻ってきたがなかなか気力が戻らない・・・・・・ ”私は・・・・・・” 「なぁ、カセン。お前って本当は”女”じゃねーの?」 その言葉を聞いた瞬間どうしたらいいのか分からなくなった。 本当は・・・好きな人も居る・・・・・・・楽しい学校生活を送りたい・・・・・・ ”女の子に戻りたい・・・・” だけど・・・・・・。 不意に過去の出来事を思い出す。 それは海外での中等部での出来事。 色白で人種の違う自分はよく他の生徒に苛められた。 上から”女だと”いう事が目に付いたのか特に同性相手のソレが一番酷かった。 苛められている事が逆に男子に構われていると嫉妬したらしい。 あまりいい状況ではなかった・・・・・・・一度は死のうかと考えた。 ”厳武様が現れるまでは・・・・・・” 「・・・・好き・・・・・・」 不意に漏れるその声・・・・ だけど・・・・・・ 厳武様の事を思い出して体が震えた。 会いたいけれども。今は会いたくない・・・・・・・ 「お前なんか・・・・・嫌いだ・・・・///!!!!!!!!!」 そう言ったはずなのに・・・・・・・・ 抱きしめられた事を思い出して何かを否定したくなる。 ・・・・・・・・そんな風にされたのはアイツが初めてだった。 厳武様ともそれなりの関係はある。・・・特に大事にして目をかけていただいていると思う。 だけれども・・・・触れては来ても抱きしめられた事は一度も無かった・・・・・ 「・・・・・好き・・・・」 もう一度、呟いてみる。 でも・・・・脳裏に浮かんだその影は・・・・・・・・ 「・・・・・好き・・・・・・・!・・・・っ・・・!????」 不意に涙が出た。 自分は・・・・厳武様のことが好きなはずなのに・・・・・・・。 今日は学校を休んだ。 そのことで後日厳武様にとがめられるかもしれない・・・・・ でも・・・ ”学校に行きたく無い・・・・” 行ったらアイツに出くわしてしまう・・・・・ 「好き・・・・」 どうしても出てくるその言葉。 何で私は・・・・こんなにアイツのことを思い出しているのだろう。 大きな瞳から零れ落ちる涙が止まらなくて仰向けに転がってみた。 今度は逆にソレが流れて少しむせた。 ”私は・・・・どうしたらいいんだろう・・・・” 暫く学校を休みたい・・・・・・・・・。 そう思いながらカセンはコンビニに食事を買いに行く事にした。 幸い近くの公園を突っ切ればすぐ傍にコンビニがある。 今日は伊達眼鏡を外してそして変装用の女性用カツラをかぶって女の格好で外に出た。 こんな時間に”自分”という存在が外を歩いていたら厳武様に申し訳ない気がしたからだ。 雨が頬に当たる。冷たい。 ・・・・傘をかぶって歩いても横殴りの雨が自分にかかってくる。 そして彼女は公園で”ソレ”に出会った・・・・・。 「アラ・・・?」 黒い犬を引き連れて上品な服装を纏い傘を差して散歩をしていたオレンジ毛のその女性に。 ■END [*前へ][次へ#] [戻る] |