片思い卒業記念
「ごめん、好きな人いるから受け取れない」


昼休みに何気なく向かった中庭で見かけた光景

綺麗な銀髪の彼と、女の子

聞こえてきた声は決して大きくないけれど

私の耳にはセンサーでも付いているのだろうか

やけに大きく頭の中に響いた




ふらふらした足取りで教室へ帰れば

友達が心配そうな視線を向けてくれたけれど

大丈夫と伝えて自分の席へ戻った

机に顔を伏せて

さっきの出来事を思い出す




優しい彼は、受け取らなかった

潔いところは彼らしさが感じられた

でも

人の好意をすっぱりと断る彼に戦慄を覚えたのも確か

自分をその場に置いて想像をしてみる


嫌だ

嫌だ嫌だ


想像なんてするなと

自分の心が痛みを伴って警笛を鳴らす

鬱々とした想像をして

そういえば昨日はほとんど寝ていないことを思い出して

急に襲ってきた睡魔に身を委ねた





意識が戻ってきたのは

頭に感じる感触

優しく髪の毛を梳いてくれる手のぬくもり

少し身じろぐとそれに驚いたのか

勢いをつけてぬくもりは離れていった


伏せていた顔をあげると

教室を出て行こうとする青と白のジャージと銀髪が見えて


『鳳君!』


思わす大きな声で呼びとめてしまった

目の前にいた彼は肩を震わせて立ち止り

ゆっくりと振り向いたその頬はうっすらと色が付いていて

駄目な私は期待をしてしまうんだ



外からはまだ部活の時間だからか

大きな声と声援が鳴りやまず響く



『あの、…』

うまく言葉が出ない

視線は自然と下を向いて赤い顔を隠そうとする



「誰にあげるつもりだったの?」

不意に聞こえた声に驚いて顔を上げれば

染まった頬はそのままで

真剣な視線を私に投げかける彼がいた



少しずつ縮まる私と彼の距離

気がつけば彼の腕の中



「好きだよ」

甘い甘い声が下りて来て

優しい笑顔が写って

嬉しくて

背中にまわした手にぎゅっと力を込めた





「チョコレート、おいしかった」

聞こえた声に視線を上げれば

「他の誰にも、あげたくなかったから」

勝手に食べたんだ

そういってチョコレートより甘い唇が

下りてきたから

瞳を閉じた





片思い
卒業記念





部活へ戻った彼を見送って教室へ戻ると

自分の鞄から綺麗にラッピングされた
それを見つけて

鞄をひっつかんで教室を出た



『鳳君、あの…これっ』
「それは、その…バレンタインだし」
「君に渡そうと思って、用意してたんだ」


甘い甘いチョコレート

体中をめぐって、私を虜にする





片思い卒業記念
Chotaro.O
For 彼女の魔法





あきゅろす。
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