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犬古泉と狐キョンで、雷雨の中、遭難した洞窟の中でキョンが古泉に告白する話
*ツイッターの古キョンかくったーで出たお題です。
某企画に提出予定でしたが途中で没にしました。





「…あれ?」
「良かった。目が覚めましたか…」
暖かい何かに包まれてフワフワと気持ち良い意識の中目を開くと、薄暗い世界の中に人間の手下である古泉が笑顔を浮かべていた。…何でこいつがいるんだ?
「…覚えてないのですか?あなた崖から転落したのですよ?」
そう言われて意識が次第にはっきりしてくる内に全身が脈打つように痛み出す。
…ああ、そうだ。餌を集めていたら突然人間が現れて。必死に逃げているうちに足を滑らせて、……っ!
「…は、離れろ!!」
俺は慌てて奴の腕からすり抜けると、古泉は何が起こったのかわからない様子でポカンと目を見開いていた。
「お前っ、俺を捕まえるつもりなんだろ?!どうしてこんな事…!」
「ちっ、違います!僕はあなたが心配で…!」
信用できるものか。俺は野生の狐でこいつは人間の所の犬。害獣だからって俺達を駆除するために森へ侵入してくるくせに…!
「とにかく!俺はお前らに捕まるつもりなんてないからな!!そうやって誤魔化そうとしても無駄だ!」
「あっ、ちょっと…!」
痛む体に鞭打って洞穴から外へ出ようとしたのだが、外は雨がまるで滝のように勢いよく降っていた。これじゃあ、外に出る事ができないぞ…。
「だから止めたんです…。この天気ですから僕も戻りたくても戻れないんです。…本当に何もするつもりはありませんから。しばらくここで安静にしていて下さい」
古泉が両手を上に上げながらそう言うが…、油断はできない。
かと言って今の状況ではどうする事もできないので、遠く離れた所へ膝を抱えて座り込む。いつこいつが襲ってきてもいいように意識だけは研ぎ澄ませておかなければ。
俺がじっと見据えていると、古泉は困ったように小さく溜め息をついた。
「…今はそれでも仕方ありませんよね。でも、覚えておいて下さいね。僕個人としてはあなたを危険に追い込みたくないんです…。でも、僕は人間に従うよう生まれた頃から教えられてきたんです。逆らい方なんてわからないから…」
古泉はどこか悲しそうに呟いた。そんな顔を見て胸が痛んだ気がしたが、そんな感情は知らない振りをする。



外は相変わらずの大雨だった。早くやめばここから出ていけるのに…。
はあっと何度目かわからない溜め息をついた時だった。空からゴロゴロと不穏な音が聞こえてくる。
「雷…」
古泉がぽつりと呟いた単語に俺は無意識に体が反応してしまった。こいつは犬だからもっと前から聞こえていたんじゃないだろうか。
次第に音が大きくなってきて、次に鳴り出す感覚が短くなってくる。…ああもう、何でよりにもよってこんな時に!
嘆いた所で雷が治まる訳ではなく、近付いてきたそれが激しく鳴り響く。洞穴の中にも光が入り込み、チカチカと何度も光る。
ぎゅっと抱え込んだ足に力を加えてやり過ごそうとしたのだが、近くに落ちたのかドカンッと最大級の音と共に地響きが伝わってきた。
…頼むから、早く終わってくれ…!
祈るように固く瞼を閉じたのだが、不意に暖かい何かに体が包み込まれた。
突然の事に顔を上げると、目の前にあいつの顔があって…!
「なっ、何するんだ!離せ!」
「…怖いんでしょう?無理しないでください」
図星をつかれてグッと言葉を飲み込んだ。怖くないと反論しようと思ったのだが、落雷の音に思わず身が竦む。
「大丈夫ですよ。何も怖い事はありません」
どうしてこいつは俺にここまでしてくれるんだ?
耳元で囁く声が妙に落ち着くのは何故なんだろう。
「…お前なんか、嫌いだ…っ」
「…わかってます」
古泉は雷が静かになるまでずっと俺の事を抱きしめていた。心臓が早まる鼓動でうるさい。
恐怖とはまた違う感情が芽生え始めている事に、俺はまだ気づく筈もなかった。




*告白してないじゃんと思われそうです…。いやでも告白って胸の内を打ち明ける事だから間違いじゃない!
没ネタ救済でしたー。



2010 7/31


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