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優しさだって時には罪



「あなたが好きです…」

ある日の放課後、2人きりになれた部室で僕は彼に告白した。
彼の事だからきっと友人や同級生という意味で捉えているだろうか。ほら、意味が解らないと言わんばかりに呆けた顔をしている。

別に想いを受け入れてもらえたら、なんて思っていない。彼は自分に向けられている彼女達の瞳にも気づいていないから。
ただ、玉砕覚悟のこの気持ちを彼に聞いてほしかった。…僕は黙ってずるをしたのだ。

しばらく部室に沈黙が流れたが、漸くして彼がゆっくりと唇を開いた。
「……ごめん、古泉。俺はお前の気持ちに答える事はできない」
…やはり、な。僕の真意が伝わっていた事だけは救いだな。
「僕こそ突然すみませんでした。どうか僕とは今まで通りお付き合いください」
「…ごめんな」
平静を装おうと笑顔を浮かべる僕とは対照的に彼は泣きそうな顔で眉をひそめている。
謝らないでください。それがあなたの意思なのですから。
「…違うんだ」
違う…?
「…俺は誰とも付き合うつもりは無いんだ。…いや、付き合えない」
「どういう、事でしょう…?」
「……、本当はお前達が俺の事どう思ってるのかなんてとっくに気づいてた。ハルヒも、朝比奈さんも、長門も…。…古泉は、俺の勘違いかと思ってたんだがな」
そんな風に自嘲気味に笑う彼の言葉に焦りを感じた。
「気づいてた…って、だったらどうして答えてあげないんですか?!」
「…できない。したくないんだ。…この関係を壊したくないんだ…!」
声を荒げた彼は今にも泣いてしまいそうな位、顔を歪ませていた。
「俺に好意を持ってくれてすごく嬉しいんだ…。でも、こんなに楽しい集まりなのに…、俺のせいで壊れてしまったらと思うと怖くて…。だから気づいていないふりをしている…」
「そんな…、僕達はそんな柔では無いでしょう?誰が選ばれても祝福してくださいます」
「ああ…、……でも、ごめんな、俺は臆病なんだよ」
彼はそこまでしてもこのSOS団が好きなのか…。
苦しそうに笑みを浮かべる彼を大丈夫だと抱きしめてあげたいと思ったが、その行為も余計に彼を苦しめるだけだろう。
僕は伸ばしかけた手を気づかれないようそっと元に戻した。
「…ありがとうございます、僕達の事を想ってくださって。あなたの事を知る事ができて良かったです」
そう優しく笑顔で伝えると、彼はほっとしたのか小さく息を吐いた。
「…ありがとな、古泉」
ああ、やっと彼がいつものように笑ってくれた。
「1つだけ教えてくださいませんか?」
ただ、優しくて残酷な彼に少しだけ意地悪をしたくなった。
「この中で誰が一番見込みがあるか教えてくれませんか?」
僕が冗談のように言うと、彼はゆっくりと口角を上げ、
「…内緒だ」
思わず見とれてしまいそうなくらい綺麗な笑顔を浮かべ、そっと人差し指を唇に当てたのだった。




*もしキョンのフラグクラッシャーの理由がこんな感じだったらと妄想してみました。
何かよくわからない感じになってしまった…。


2010 4/29


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