満天の星空に乗せる想いは
*sup/erce/ll「君の知/らない物/語」の歌詞パロです。世界観壊されたくないって方はお戻りください。
古キョン←ハルヒです。
「今夜、みんなで星を見に行かないか?」
高校に入って二回目の夏休み。いつもの喫茶店で今日は何をしようか考えていた時、あいつが突然立ち上がってそんな事を言い出した。
「たまにはいい事言うじゃない。あんたがこんな提案するなんて」
「そうか?去年も見たし、今年もいいんじゃないかと思ってな」
あたし達は暗くなった道を進み、有希のマンションの屋上に上がって天体観測をする事にした。
キョンから言い出すなんて本当に珍しい。でも、夏らしくていいと思うわ。
「なあ、大三角形ってどこだっけか?」
「あっちですよ。一等星が3つ並んでる」
「何?キョン、そんな事も知らない訳?」
「違う。少し確認しただけだ」
少しむくれた顔で空を見上げるキョンの横であたしも空を見上げる。
デネブ、アルタイル、ベガ。
夏の大三角を古泉くんが指差す先をみんなで見るんだけど、
「…あら?」
「彦星様見えませんねぇ…」
ベガは見えるんだけど、アルタイルは雲に隠れてしまっていた。
…これじゃあ織り姫が一人ぼっちじゃない。
思わず柄にもない事を考えてしまって、誤魔化すようにキョンが珍しい事言うからよ!なんて文句でも言ってやろうかと思ったけれど、あたしは言葉がうまく告げ
れなかった。
「なあ、古泉。あっちの星は?」
「ああ、あれはですね…」
一つ隣のあいつはいつもの気だるそうな様子なのに、どこか楽しそうにしていて。そんな顔を見たら何も言えなかった。
「ハルヒ?」
あたしの様子に気が付いたのか、キョンは「どうしたんだ?」って思ってそうな表情でこちらを向いていた。
…あんたはいつもそう。
隔てなくみんなに優しくて。
最初はあたしにだけだと思って、思わず勘違いしてしまった。
いつからだったっけ。気づいたらキョンを目で追いかけていた。
こんなの違うって何度も自分に否定したわ。
興味ない、精神病の一種だなんて思ってたのに。
でも、もしこの気持ちを伝えたらあいつは驚くのかしら?それでもあたしの話を聞いて欲しい、なんて考える自分もいて。
「ハルヒ?どうしたんだよ。言いたい事あるなら早く言えよ?」
キョンはあたしの気持ちなんて気づいてなくて、今もうっすらと優しく笑みを浮かべてる。
…泣くな。泣くな、あたし。
「…、全く。あんた達、あたし達がいるのにイチャイチャしないでよ!暑いったらないわね!」
あたしが冗談混じりにそう言うと、みんなが驚いたように目を見開いていた。有希はこっちを向いたから少しは驚いたのかしら?
キョンと古泉くんなんて金魚みたいに口をパクパクさせていたからちょっと面白い。
「ハルヒ…、何で…?!」
「バカねぇ、あんた達分かり易すぎるのよ!すぐ気が付いたわ!」
…嘘。本当はずっと見てたから気づいただけ。
あたしがキョンを追いかけている先で、キョンはいつも古泉くんを目で追っていて。
だから、すぐに解ったの。
…ああ、あたしと一緒なんだ。って。
本当は隣にいたかった。でも、そこはあたしの場所じゃないの。
あたしの気持ちは届かない。
胸が、息が、苦しくて。
ああ、好きになるってこういうなんだ。って初めて理解できた。
「ハルヒ…、…ごめ」
「謝んないで。黙ってた事はムカつくけど、悪い事じゃないでしょう?」
あたしがそう言うと、キョンは視線をさ迷わせていたけど、また薄く笑顔を向けた。
「ありがとな…」
「…別に」
謝られると何だか惨めな気分になるじゃない。
「ただね、団活をデートに使うのは許さないんだからね!そんな事したら公開処刑よ!」
二人に向かって指を突きつけてやると、二人は苦笑いを浮かべて了承した。
…これでいいのよ。
キョンは絶対に知らないあたしだけの秘密ってのも悪くないでしょう?
去年のここにいたあたし達には信じられない事態なんでしょうね。星空はあの時と変わらないのに。
キョンが星を見ようって言った時に気づけば良かったのかしら。去年、古泉くんが小さい頃に星に興味があったって言ってたんだもの。
じゃなかったら、あいつがあんな事言うはずないものね。
ふっと空に顔を上げると、雲なんていつの間にかどこかにいってしまっていて。
辺りはこぼれ落ちそうなくらいの星が煌めいていた。
「…すごい」
あたしが小さく呟くと、みんなも顔を上げて感嘆の声を出していた。
「あ!流れ星!」
キョンなんて無邪気な声を出していて、思わず笑みがこみ上げてきた。
…あたし、あんたのそんな風に笑った顔も怒った顔も大好きだったわ。
大丈夫。もう、胸の苦しさは無くなった。
*
またやったなって事は私が一番わかっております。
でも大好きです。この歌。
今日は旧暦の七夕だそうなので、どうしても今日中に書き上げたかったです。
2009 8/26
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