From to …
*初/音ミ/ク「fr/om Y t/o Y」の歌詞パロです。
曲の世界観壊されたくないって方は退避してください。
悲恋です。
「もう、僕達終わりにしましょう」
卒業を間近に控えた冬の日。
いつものように僕の部屋で寛いでいた彼に、まるでなんでも無い事の様に言った。
彼は何を言われたのかわからない様子で目を見開いていた。
「…なん、で?」
「幸せすぎるのは嫌いなんです。反吐が出そうだ」
僕を見つめる驚愕の色の瞳を見ていられなくて、僕は偽りの笑顔を浮かべる。
酷い事を言っているのは解っている。
でも、そうでもしないと今すぐ泣いてしまいそうだったから。
「そう…か。そりゃ、悪かった、な。…ごめん」
彼はしばらく黙っていたが、唇を震わせながら言葉を呟いた。
再びシンとした空気が流れる中、彼は黙って鞄を掴むと玄関まで歩いていってしまう。
だが、僕はただその背中を見つめるだけだった。
本当はその震えている体を抱きしめたい。
行かないで、と子供のように叫びたい。
でも、それは叶わない事で。
無情にも彼が潜った玄関の扉は閉ざされてしまった。
僕はただ呆然と一人部屋の中で立ち尽くしていた。
このワンルームはこんなに広かっただろうか?
秒針の音はこんなにも遅かっただろうか?
この長く感じる時間を彼と過ごせたのならよかったのに
僕は彼との未来が欲しかっただけなのに。
いつだったか、機関に彼との関係がバレてしまった。
彼と一緒にいられることが嬉しすぎて油断していたのか。
このままずっと一緒だと思っていたのに。
「『神』は『鍵』に想いを伝えようとしているそうよ。あなたのすべき事は…、わかっているわよね?上はあなたの行動次第で処分を決めるそうです」
目の前が真っ暗になった気分だった。
森さんの言葉は、己の欲か、世界の平和か。どちらかを選べという事だ。
…この世界は幸せを願う事さえも許されないのか。
彼に触れた事。彼と生きようとした事。
罪人に救いの道は無いのだろう。
「僕は…」
この嘘で、彼を悲しませてしまうけれど。
これが最大の僕の罪だろう。
彼と別れてからしばらくして。
涼宮さんと彼が付き合い出したと風の噂で聞いた。
…ああ、もう戻れないのかな。と心のどこかでぼんやりと感じていた。
SOS団の活動時間も減っていたお陰で、僕は彼らの姿を見なくてすんでいた。
このまま彼への気持ちも忘れられるかと思った。
それでも、広く感じるベッドで見る夢は彼との思い出ばかりで。
きっとこのまま卒業して、涼宮さんと幸せになるだろう彼は僕の事なんて忘れてしまう。
でも、僕の犯した罪は、孤独の痛みで償いますから。
「今までありがとうございました。涼宮さんと、どうかお幸せに」
あなたの記憶の片隅にいさせてください。
そんな想いを抱きながらも、卒業式の日僕は彼にそう伝えた。
卒業後、偶然彼らを見かけたが、とても中むつまじくて幸せそうだった。
僕はその後ろ姿をぼんやりと見つめる。
今でも、もしもあの時のように再び出会えたらいいな、と思う。
もしもその願いがかなったらまた手を繋ぎたい。
だから、その時まで
「またね」
僕は彼らに背を向けて歩き出した。
*
初めてこの曲を聞いた時、古泉の独白に聞こえて仕方なくて、どうしても書きたくなりノリとテンションで書いてしまいました。この曲のファンの方大変申し訳ありません…。私も好きです…。
歌詞パロは難しいという事がよくわかりました。
2009 8/1
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