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高校生

クラスはちょっとした騒ぎとなった。
あくまでひっそりと、彼の顔色を窺いながら。

「超怖いんだけど」「やべえよ、因縁つけられてんだよ」「ていうか機嫌ごっつ悪そう」「やっぱりそっち系の人だったんだあ」
などなど。


中心人物である彼は勿論、伊於のことだ。
いつもより遅れて来た彼は、顔にはっきりと殴られた痕をつけて、壮絶な不機嫌オーラを纏って教室へ入ってきた。
彼が入ってきたとき、教室は一様に凍りついた。彼の形相たるや遅刻してきた彼に対し、担任が一言も口を開けなかったほどである。

無言で伊於は席に着き、無言で担任と生徒たちは着席する彼を見守った。
教室は一時沈黙に陥った。なんとか担任は授業を進め、このときばかりは生徒たちは内心、担任に感謝したという。


伊於はいつものように登校する道を歩いていたところ、途中で四人組の男に呼び止められた。中学の頃よく見たような奴等だ。
伊於は一瞬で先輩の顔が浮かんだ。自分の予感が間違いであってほしいと切実に願う。

決して感じが良いとは言えない連中の一人が伊於の肩に手を置く。
「幹田伊於だよね?」
「神内って知ってるよね?」
さっと血の気がひいた。
でも同時に、納得に似た潔さが生まれる。


やっぱり、俺の予感は正しい。
しかも、悪いほうばかりに。

目の前の四人連れに対するよりまず、神内先輩に対して呪いを念じた。



くっそ、と伊於は舌打ちした。やっと解放されて、よろける足で道を歩く。
いきなり羽交い締めにされて、素早く顎を殴られ、軽い脳震盪を起こした。
もう抵抗する気力もなく、散々殴られて連中はやりたい放題した挙げ句、「神内によろしくな!」と嘲りながら去っていった。

なにが、よろしくだ。

元々、喧嘩が好きだったわけじゃない。先輩は不良ホイホイみたいなものだから、先輩の隣にいれば必然とそんな場を経験する必要もあったけど。
だからといって、今になってこんな目に遭わなければならないわけじゃないと思う。
それとも、これが中学の頃の行いの報いとでもいうのか。

先輩がまた何か大事をやらかしたんだな。
そして不良の情報網の恐ろしいことよ。

体はきつかったが、学校をサボるのは敗けのような気がして、変にプライドの高い伊於は学校へ向かったのだった。







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