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高校生

伊於は、なんというか人間味の薄い少年だった。
だが彼は何故かクラスの中で目立つ存在だった。当人にとっては、そのことに気がついているのかどうかも定かではないが。


普段あまり喋らず、人と関わろうとしない彼のことを、クラスメイトはたまに話題に出す。

「なんか、怖いよね」「顔はいいのに無愛想だよね」「何考えてるかわかんないよね」「ていうか何してる人なのかな」
などなど。


外見をとっても彼は独特で目立った。
色白で、長身で、一風変わっているが端正な顔立ちは人目をひく。
女子の中には何人か彼に憧れている者もいるかもしれない。


だが伊於はどこまでも無関心な少年だった。
時々彼が柄の悪い少年や男たちと一緒にいるところを、見たという話をクラスメイトがするので、一層近寄りがたい印象が根付いている。

彼がクラスメイトに対して乱暴だった時はないが、なんとなく粗野な感じがする。
長身であることも手伝って、少年でありながら特別な迫力のようなものを持っている。
無表情でいても、どこか不機嫌そうに見える。ちょっと眉根を寄せると、かなり激怒しているように見える。


そんなわけで彼は敬遠される存在だった。


純も人に囲まれるタイプではないが、伊於とは似通う部分など全くない少年だ。
同じクラスになって大分経つが、伊於と純がまともに会話したことはない。
お互いを眼中に入れることもあまりない。



純は伊於のように目立つ少年ではない。
どこにでもいそうな少年、の代名詞のような少年だ。

だが純も、一種独特なタイプだった。誰も気に留めることはないし、本人ですらそうは思っていないが。

純の人間関係は、それほど広くはないが至って普通だ。
だが彼とある程度関わると、彼のどこか人との間に一歩おく癖を感じ取る。
拒絶するわけでも、敬遠するわけでもない。純自身も、普通に接しているだけだ。

誰も純の独特な雰囲気について、よく分かることはできない。
それが、純が人を惹きつける要素になるか、引き離す要素になるかは、人によって綺麗に分かれる。

本人には、一歩おいている自覚はなかった。
純が持つ雰囲気、言葉、表情、距離は、全て無意識の内のもので、ある意味かなり素直な人間だ。


他人との間に一歩おくことは、普通は自己防衛であることが多い。
純は無意識に自分を他人から守っているのかもしれない。

このことは、後に伊於と純の二人が思いもかけないことで関わり始めた頃、伊於が感受することだ。



他人は他人。
そう割り切っている部分があることは、純自身も知っていた。






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あきゅろす。
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