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1300きぃち様(阿×三)



約束と共に



12月中旬。
阿部くんの誕生日も過ぎ、数日後の昼休みのこと。

オレたち9組メンバーは、いつもの様に7組に集まってお弁当を食べていた。
ここにいるのは、阿部くん、田島くん、花井くん、泉くん、ハマちゃん、オレの6人。

水谷くんは栄口くんと二人っきりになりたいって言って、冷たい微風の吹く中、屋上にいるらしい。

(…栄口くん たち、寒くない、のかな…?)

そんなことを考えている途中、阿部くんに何か話し掛けられていた。

「…え…?あ、阿部くん、今、な んて…?」

「だから、この間の誕生日プレゼントのお礼したいんだよ。何か欲しいモンとかねェの?」

「あ、で、でもっ…阿部くんは、誕生日で、オレは、あの…っ…」

「あ?」

「阿部の誕生日だからプレゼントやったのに、誕生日でもない三橋がお返しもらうのはおかしいって言いたいのかー?」

田島くんが通訳をしてくれて、オレはコクコクと頷く。


(仝ω仝)いつもながら、田島の三橋翻訳は的確である。
よく理解できるものだ。天晴れとしか言い様がない。
阿部にとっては、それが少し腹立たしくもあるのだが、正直言って助けられていた。


「オマエの誕生日ン時、オレ、何もやってねェしな。そんな高いモンは無理だけど…」

「あ…、で、も…」

「いーじゃん三橋ー!くれるって言ってんだしさ、もらえるモンはもらっとけって!」


「そうだぞー三橋ー。折角珍しく!阿部がくれるっつってんだからさ!」

田島くんと泉くんが口々に言う。

「泉、珍しくってなんだよ…
で、何が欲しいんだ?」

「あ…っ、あの…っ!オレ…っ!あ…」

「ん?」


阿部くんに問われ、オレは言葉を詰まらせた。
言っても、いいのかな…?

「ナニナニ!?三橋、何欲しいの!?」

田島くんが興味深そうに聞くのを、花井くんが牽制する。

「コラ、田島!邪魔すんなよ!…ほら、頬っぺたに米ついてるって」

そう言って田島くんの頬についていたご飯粒を取り、自分の口に含む。

(う、わぁっ…!なんか、恋人同士 って感じ…!)


「…はないぃーっ!大好きだぞっ!ゲンミツにっ!」

(仝ω仝)ガバッと花井に抱きついていき、田島は会話の輪から見事に消えたのだった。

「おーい、ココ、教室だぞ〜…」

(仝ω仝)浜田の声は虚しく響くのみ。


「で、三橋ー。欲しいモンはー?」

今度は泉くんが急かす様に聞いてくる。

「あ、あの…、オ、レ…。阿部くん、と 二人、で…どっか 行き、たいっ…!」

オレは、渾身の力を込めて言った。

「はいはーい!それって、デートしたいってことかー!?」

いつの間にか田島くんが会話の中に戻ってきた。
花井くんは…何だかぐったりしてる。

「うっ、うん!」

(仝ω仝)その言葉に一同は目を見開き、阿部に至っては更に頬が真っ赤に染まっていた。

「…あ、明後日の土曜なら午前練だけだし、午後から出掛けられんじゃねえ?」

「おおっ!さっすが主将ー!いーじゃん三橋!行ってこいよー!」

田島くんが後押ししてくれる。

「う、うんっ!」


(仝ω仝)ここで予鈴が鳴り、9組メンバーは教室に戻っていったのだった。

ちなみに午後の授業の阿部はずっと上の空で、時折頬が紅潮していたとか。

放課後。
練習が終わり、部室を出てから阿部と二人、自転車置き場まで手を繋いで歩く。
距離は短く、時間で言えば数分のことだが、二人にとっては大切な時間だった。

「三橋。土曜、どこ行きたい?」

「え…えっと……あっ、あべくん の、行きたいトコに、行き、たい!」

「オレはいいけど…三橋はいいのか?それで」

三橋はコクコクと頷く。

「わかったよ。じゃあ、考えとくから」

二人は自転車に乗り、心持ちゆっくりとペダルを漕いで帰った。
勿論、別れ際には、別れを惜しむ様に甘く長いキスをして。


そして土曜日。
練習が終わり、私服に着替えて荷物を部室に置いておき、そのまま二人で歩き出す。

阿部くんに連れられて着いた先は、映画館だった。

阿部くんはチケットを二枚買うと、一枚をオレに差し出してくれる。

「ん」

「えっ、あ、べくん、お金…」

「今日は三橋へのプレゼントだから。いらねェよ。…つーか、…恋人、なんだから、これくらいさせろって」

そう言った阿部くんの顔は、とても恥ずかしそうで。
オレは心がすっごく暖かくなった。

「あっ、ありがとう!あべくんっ!」

売店でポップコーンと飲み物を買って、中に入る。
結構人気のある映画らしくて、館内は人が沢山いた。

席に着いたらすぐ、館内の照明が落とされた。

暗い館内で、隣には阿部くん。…何だかドキドキしちゃう。

「…あべくん…」

小さな小さな声で呼べば、返事を返す代わりに手を重ねられ、優しい瞳が絡み合う。
阿部くんの目は、すっごくキレイで、大スキなんだ。

数分後、映画が始まる。
内容は主人公の恋人が、病気で死んじゃう話。
いつもなら眠くなっちゃうオレだけど、今日は真剣に見られた。
途中、泣きそうになっちゃって、阿部くんの手をギュッて強く握った。そしたら阿部くんは握り返してくれて。
…泣いてたの、気付かれてないかな?


映画が終わってから、オレたちは手を繋いだまま外に出た。

そしてすぐに目に付いたのは、お揃いのベージュのコートを着たカップル。

「あ…栄口くん、と、水谷くん、だ!」

「あ?ああ…アイツらもデートか」

「声、かけ、る?」

「…イヤ、やめとこうぜ。アイツらだってデートだろうし。…それにオレ、今日は三橋と二人で居てェから」

「…!う、んっ!阿部、くん?」

「何だよ?」

「あ、の…、だっ、大好き!だよっ!」

「…!ああ、オレも好きだよ」

そして手を握る力を更に強め、オレたちは歩き出した。

映画の後はバッティングセンターに行って、ピッチングとバッティングをした。

阿部くんは、オレの行きたいところをちゃんと考えてきてくれたんだ…!

そう思ったら余計に嬉しくなった。

3時間くらい経って、店を出た。

ファーストフードで夕飯を済ませて時計を見れば、既に午後8時。

「少し歩いて帰るか」

阿部くんにそう言われて、ちょっと残念な気持ちになった。
…でも、あと少し居られる時間を大切にしよう!

「あ、阿部くん!公園、行きたいっ!」

「公園?いいけど…じゃ、西浦の近くの公園行くか。」

また並んで歩く。
空は既に暗くなっていたけど、この公園には照明が結構あるから気にならなかった。

芝生でキャッチボールをして、ベンチに座った。

あと少しで、阿部くんとお別れの時間、だ。
オレの表情は無意識に歪んでいたのかもしれない。


「三橋…」

「え?…んぅ…っ!」

いきなり唇を塞がれる。
呼吸をする為に口を開くと、阿部くんの舌がオレの口内に忍び込む。

「あ……んん…ッ…あ、べく…」

「三橋…好きだ。…好きだ…」

譫言のように繰り返される「好き」という言葉。

阿部くんが言うと、まるで魔法みたいだ。

だって、オレの心はこんなにも暖かくなって、染み渡っていく。
まるで身体中を阿部くんに支配されているかのような気分になる。

「あべ、くん…ん…ッ!…オレ、も、好き…」

そうして暫く熱いキスを交わし、抱きしめられていた。

「三橋。…今日、どうした?」

「…え?」

「映画見た後から、たまに泣きそうな顔してっから」

…バレてた、んだ…。

「…あの、ねっ…映画の女の子、の彼氏は…死んじゃって……も、もし、阿部くんが…怪我、したり、病気したり…もし…っ!い、いなくなっちゃったりしたら…っ!オ、オレ…っ!」

想像しただけで止めどない涙がボロボロと溢れ出てくる。

阿部くんは、そんなオレをギュッと抱きしめ、背中をポンポンと叩いてくれる。

「約束したろ?オレは、怪我も病気もしねェ。オマエとずっと一緒にいる!」

「うぅっ、え…っく…あべく…っ」

紡がれる言葉。
交わされる約束。

それがオレの支えになる。

約束の印は、甘くて、少し胸が苦しくなる程の深いキス。

オレたちは、手を絡めたまま西浦へ戻った。

これからも、ずっと、ずっと一緒にいたい。

心の底から大好きな、キミと、一緒に。


あとがき(仝ω仝)
1300を踏んで頂いた、きぃち様への捧げ文です!
ありがとうございました!

映画は「恋空」っていうどうでもいい裏設定←

甘々なアベミハ…ということで…!甘かったかコレ?という疑問は多々残りますが(-谷-;)←最低)
こんなモノでよければお持ちくださいませ!
勿論、返品も可でございますっ
(/д;)
宜しければこれからも訪問して頂けたら、泣いて喜びますっ!
(仝ω仝)人(*^◇^*){よっ、よろしく、ねっ!)

※こちらはきぃち様のみお持ち帰りOKです





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