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【西浦Thunder Night】-2-


8人分の食材の買い物を済ませた阿部と三橋は、自転車に大量のビニール袋を下げてペダルを漕ぎ、三橋の家へと辿り着いたのだった。



【Thunder Night】-2-



時刻は6時半。
そろそろ夕食を作り始めなければいけない時間だ。

「花井たちもそのうち来るだろ。…先に作り始めっか」

「う、うんっ!オレッ、手伝うよっ!」

「あー…じゃ、野菜洗ってくれるか?レタスと人参とじゃが芋な。」

三橋は野球以外に関してはとんでもなく不器用だ。
阿部としては、とてもじゃないが包丁を持たせたりコンロに近付けたりなんかしたくない。
しかし、手伝わなくていい、などと言ってしまえば三橋はショボくれてしまうだろう。
そう思った阿部は、最も安全且つ簡単な仕事を三橋に任せた。

「うんっ!!」

手伝える事がよっぽど嬉しいのか、三橋は満面の笑みを浮かべ、鼻歌を歌いながらレタスを取り出していた。

ちょうどその時。


ピンポーン─


と、玄関のチャイムが鳴った。

「あっ、た、田島くんたち、かな?」

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。

まるで急かすかの様に、チャイムが連続で鳴り響いた。

「…こりゃ間違いなく田島だな。…ったく…
三橋、こっちはいいから、とりあえず出てやって」

「うっ、うんっ!」

三橋はレタスをビニール袋に戻すと、ドタドタと玄関に向かって走って行った。

「いっ、いらっしゃいっ!」

三橋が玄関を開けると、そこには6人全員が立っていた。
各々帰宅し、持参するモノを準備して三橋宅に向かった6人は、近くの道で偶然にも鉢合わせた、というワケだ。

「みはしーっ!メシ出来たっ!?」

「まっ、まだっ!今、あべくんが作ってる、よっ!」

「じゃあ手伝いに行こーぜーっ!おっじゃまっしまーっす!」

「コラッ田島!人ンちで騒ぐな!ンで走んな!!」

「おじゃましまーす!」

「三橋〜!ケーキ持ってきたから、後でみんなで食べような〜」

水谷は大きな箱を見せながらニコニコしていた。
どうやらホールのケーキを持ってきたらしい。

「三橋の誕生会の時、嬉しそ〜に食べてたもんな!楽しみだろ〜?」

「うっ、うん!み、水谷くんっ!ありがとうっ!」

実はケーキを一番楽しみにしているのは水谷だと気付いていないのは、水谷本人と三橋だけだろう。

栄口、泉、浜田は、そんな二人を見て微笑ましいな、なんて思いながら顔を綻ばせていた。

そして家の中に4人を招き入れ、皆でキッチンへと向かう。

キッチンでは阿部がリズミカルに野菜を切っていて、電子レンジの中ではじゃが芋が蒸されている様だ。

三橋は手を洗い、先刻阿部に言われた通り、レタスを洗い出した。

「阿部って意外と料理できンだなー。オレも手伝うよ。何すりゃいい?」

「あ、オレも手伝う!家ではよく作ってるから、大抵は出来るよ」

「オレも一人暮らししてっから料理できっぞー」

花井の手伝いの申し出に、栄口と浜田も続く。

「…花井、意外とって何だよ。あー、じゃあ花井はポテトサラダ作ってくれ。レンジでじゃが芋茹でてっから、もうそろそろ終わるだろ。浜田は唐揚げ作ってくれ。栄口はピザ作れるか?」

阿部がそう言うが早いか、電子レンジからはチーンという電子音が鳴った。

「オレはオレはっ!?オレも手伝う!!」

田島が目をキラキラさせながら言う。

「…オマエ、また今度な。いくら三橋ンちがデカくても、キッチンに5人以上は辛ェだろ。三橋、こっちはいいから田島とリビング行っとけ。」

阿部はここぞとばかりに厄介払いをする。
三橋にも料理はさせたくないし、好都合だ。

「ぅえっ…う、うんっ!わかったっ!」

「ちぇーっ!…まーいっか!あっち行こうぜ三橋ーっ!ゲームしようぜ!ゲーム!今日はマリカーなっ!」

「うっ、うんっ!」

子犬二匹は、泉と水谷のいるリビングの方へと駆けて行った。

「…三橋、マリオカートなんて持ってたのか」

「田島のヤツ、結構三橋ンちに遊びに来てるみたいだからな。つーか、一番三橋ンちに詳しいよなぁ」

浜田の一人言とも取れる言葉に、花井が言葉を重ねる。

「………………。」

「阿部、顔コワイ」

押し黙ってリビング(もとい田島)を睨み付ける阿部を横目に、栄口は笑顔を崩さず言った。


リビングでは、ゲームを出した三橋、田島、泉、水谷がマリオカートを始めていた。

4人までプレイOKなそのゲームは、ニン●ンドー64。

4人はコントローラを操作しながら、
「うおりゃー!」
だの
「行けぇー!!」
だの
「はわわわわわ」
だの
「ぎゃ〜っ!ココにバナナの皮置いたのダレ〜っ!?」
だのと騒いでいた。
因みにこの台詞は田島、泉、三橋、水谷の順である。

このレースでは泉が優勝、続いて田島、三橋、水谷の順にゴールした。

「くっそぉ〜!なぁ、もう一回っ!ビリのままじゃやめらんねぇ〜っ!」

「おー!いいぜっ!次はオレが勝ーつっ!」

「何度やってもオレは負けねーぜ!」

三橋がコクコクと頷いたその瞬間─。
三橋のその茶色の大きな瞳から、大粒の涙がボロボロッと溢れた。

「うおっ!?三橋が泣いた!」

「えっ!?なんでっ!?負けたのが悔しかったのかっ!?つってもオマエ、オレより先にゴールしたじゃんかっ!」

「水谷、ちょっと黙れ。三橋、どーしたんだよ?」

「泉ひっど〜!!」

「ごっ、ごめん、なさっ…!オ、オレ…こんな風に、みんなでゲームとか…っしたこと、なく、て…!うっ、嬉しくて…っ!」

「「みはし…っ!!」」

頬を紅潮させながら言った三橋がとても可愛く見え、水谷と泉は左右からガバッ!と抱きついた。

「あっ!泉と水谷ズリィッ!オレもーっ!」

そう言って水谷と泉の上からガバッ!と抱きつく田島。

それは端から見たら、ハムスターが重なり合って昼寝している様を想像させた。
所謂、ハムスター団子状態だ。

「なー、三橋ィっ!これからもこうやってみんなでイッパイ遊ぼーなっ!んで野球もやろうなっ!」

「うんっ!!オ、オレっ、…みんな、大好き、だよっ!」

そう言って三橋はフヒッと笑った。

それを聞いた泉、水谷、田島の3人が更に腕の力を強めたので、ハムスター団子状態はこの後も暫く続いたのだった。


そしてそれを目の当たりにしていたキッチン組4人は、料理をする手も止め、並んでリビングのハムスター団子たちを見つめていた。

「何て言うかさ…ヤキモチ妬く気も失せるよな、アイツらだと…」

浜田が頬をポリポリと掻きながら苦笑した。

「だよねぇ…オレもあの場にいたら一緒になって三橋に抱きついてたと思うもん」

栄口は少し涙目になりつつ、笑顔でそう言った。
栄口も三橋の言葉に感動したのだろう。

「ア〜イ〜ツ〜ら〜っ!!オレの三橋に!!」

そんな浜田と栄口の空気をぶち壊すかの様に、阿部が般若の様な表情でワナワナとおたまを握りしめていた。
その右手からは今にもギリギリッ、と音が聞こえてきそうな程に。

「落ち着け!阿部っ」
(つーか自重しろ!)

花井はうんざりと溜め息を吐きながら阿部の肩に手を置いた。

正直関わりたくはないが、今にもハムスター団子に向かって飛び出しそうな阿部を放っておくわけにもいかなかった。

「ほら、料理冷めンだろ。早く食っちまおうぜ」

そう言って花井はシチューの入った鍋をリビングへと運んだ。

浜田と栄口も、それに倣って次々と料理を運んでいく。

「…チッ」

阿部も舌打ちしつつ、諦めた様に箸やスプーンを運ぶ。

ハムスター団子たちは運ばれてきた料理に気付くと、やっと身体を離し、キラキラと瞳を輝かせながら席についたのだった─。



to be continued...



あとがき(仝ω仝)
1ページでどこまで書こうか迷いましたorz
この未熟者!!←
食事、8人分ってモノスゴイですね。
テーブルの面積足りんのか?(笑)
高校球児の毎月の食費…!恐ろしい…!←主婦的発言)

64はウチにありますが、埃被ってます★
そしてマリカーのスコアは見せられたモンじゃありません。
この不器用娘!←

それにしてもなかなか本編の話が進まないですね☆←貴様)
もう暫く、お付き合いくださいっ!
(仝ω仝)人(*^◇^*){ごめん、ねっ!





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