look forward to(水×栄)
今日の日付は、7月4日。
もうすぐジメジメした梅雨が明けて、太陽がジリジリ照りつける夏がくる。
look forward to
辺りを見渡せば空はすっかり闇に染まっていて、月明かりと外灯が二人を照らしている。
オレが水谷と付き合い始めてから、もう1ヶ月が経とうとしていた。
───それなのに。
手ぇ繋ぐだけで、それ以上は何もしてこないってどういう事?
…別に、常にイチャイチャしてほしいってわけじゃないけど、やっぱ、……こ、恋人同士なんだから…!
もう少しくらい、"らしく"してくれてもいいと思う。
そんな事を考えながら歩いていると、いつの間にかオレの家に着いていた。
水谷は毎日、オレを送ってくれる。
…オレだって男なんだから本当は必要ないんだけど…水谷は「オレが送りたいんだからいいの!」って言ってくれるし、二人で歩けるのが嬉しいから断らない。
二人でいられる時間を、大切にしたいから。
「いつも送ってくれてありがと、水谷!じゃあ、また明日な」
「……っ!さ、さかえぐちっっ!!」
「えっ?な、何…?」
突然、水谷に両手で肩を捕まれて、名前を呼ばれた。
水谷はオレの瞳を真っ直ぐ見詰めている。
たったそれだけで、オレの期待はどんどん、どんどん膨らんでいった。
───だって、別れ際に肩に手を置かれて見詰められたら…それしかない…よな?
「栄口…っ、あの、さ…」
「………うん…」
ドキドキして、今にも壊れちゃいそうな心臓に『鎮まれ、鎮まれ!』って言い聞かせながら、目をギュッと瞑る。
あんまり心臓がドクドク言ってるから、水谷に心音が聞こえちゃうんじゃないかってバカな考えが頭を過る程に。
「栄口っ!……え、っと……っ、……き、……っ」
「………………」
「…………………」
「………………………」
長い、長い沈黙。
…水谷が黙り込んでしまってから、何十秒経っただろう。
…いや、何分?
その間、オレはずっと目を瞑ったままなワケで。
……恥ずかしい事この上ない。
「……水谷…?」
恐る恐る目を開けると、水谷は顔をタコみたいに真っ赤に染めて、涙目になっていた。
「……あ、あのねっ!!栄口…っ、き、………き、……す………」
語尾は殆んど聞き取れなかったけど、水谷が何を言いたいかはわかった。
…それから、長ーい沈黙の訳も。
……つまり水谷は、…本当はしたいんだけど、恥ずかしくて中々踏み切れないってそういう事…、だよね。
そう思ったら、呆れるのと同時に何だか怒りが込み上げてきた。
…だってオレ、ずーっと目ぇ瞑ったままだったんだよ!?
それってスッゲー恥ずかしくない!?マヌケじゃない!?
「ああもうっ!焦れったいなあっ!!」
待ちきれなくなって、水谷の首に手を回してちょっとだけ背伸びをして。
オレから唇を重ねた。
…否。ぶつけた。
口内に広がってくる、鉄臭い味。
「さ…っ、さかえぐ、ち…?」
「ご、ごめんっ!そ…その…っ、…痛かった?」
「……!
…んーん、ヘーキ!
……ね、栄口、」
「何?」
「…今度は、オレからキ……キス…、させて?」
しどろもどろになりながらそう言って、ゆっくりと近付いてくる、水谷の唇。
ちゅっ、と優しく触れるだけの、甘いキス。
それから一度唇を離して見つめ合って…
二度目に落とされたのは、
舌で口内を懐柔されて、クラクラ頭の芯が痺れるみたいな、濃厚なキス。
「んん…っ!…っ、みず、たに…」
「…栄口、」
「「大好き、だよ」」
その言葉は、綺麗な二重奏となって、夜道に響いた───。
─おまけ─
「オレ、栄口とのファーストキスは絶対に今日って決めてたんだよ!」
「え、なんで?」
「だって今日は7月4日でしょ?オレと栄口の日だもん!」
「…っ…!水谷の、バカ!」
そしてオレらはまた、何度も何度も口唇を重ねる。
今までお預けくらってた分を、取り戻すみたいに───。
fin...
あとがき(仝ω仝)
すっごく今更感があって申し訳ないのですが、アンケートお礼小説、水栄です。
よくわかんないけど水栄です。←
昨日、『明日は水栄の日だなー、最近水栄書いてないなぁ…』と思いながらバシバシ書き連ねました。
ぬー、すらんぷから脱け出せません…orz
俺はもうダメだ…(弱気)
※お気に召されましたら、どうぞお持ち帰りください。
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