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伝わらぬ想い(花←田)


もし、このキモチを口に出してしまったとしたら。


今まで築き上げてきた関係は、この星空の藻屑となって消えてしまうんだろうか。


──それとも、…ほんの少しの可能性だけれど、この大きく育ち過ぎた想いごと、掬い上げてもらえるんだろうか───。



伝わらぬ想い



「なー花井ー!今日オマエんち行っていー!?」

「はあ?アホかオマエ!今何時だと思ってンだよ!?」

「えーっと……9時!!」

カバンに入れっぱなしだった携帯を取り出して、ディスプレイを確認しながら言う。

空は既に真っ暗で、月明かりと夜空に散りばめられた星と、外灯だけがオレたち二人を照らしている。

「…あのなァ…。明日学校なんだぞ?朝練だってあンだぞ?わかってンのかよ?」

「わかってるって!ちょっとだけなんだからいーじゃんかー!」

「オマエの『ちょっと』は全然ちょっとじゃねェだろが!今まで散々同じコト繰り返してきたろ!オマエ、そのたんびにウチ泊まってンじゃねーか!」

「だって花井のベッドってチョー寝心地いーんだもん!」

「はあ?ンな良いベッドじゃねェだろ?つーかオマエがベッドで寝てっと、オレが床で寝るハメになんだけど」

「だからー!一緒に寝りゃいーだろっていつも言ってんじゃん!」

「アホか!!シングルベッドなんだぞ!?いくらオマエがフツーよりチビでも狭ェんだよ!大体男同士で一緒に寝ンのなんか気色悪ィだろ!」

「なんで!合宿とかで一緒に寝てんじゃんかー!
……つーか花井、女となら寝んのかよ?」

「なっ…!そっ、そーいうコトじゃねェだろ!?」

「そーゆーコトじゃんか!花井のエロ坊主ー!」

「んなっ…!?…オっマエなぁ!!」

「なーなー!早く行こーぜー?オレハラへったしさー!」

「だーっから!オマエは自分の家に帰れっつの!チャリ一分だろ!オレんち行くより早ェじゃねーか!」

「………だってさー」

「…?…何だよ?」

花井の腕を引いて、耳元に顔を近付けて。
なるべく侘しさを装って言う。


「…オレんち、今日みんな出掛けてて誰もいねーんだもん」


「…っ!」

それを聞いた花井は、悪いコト聞いた、と言わんばかりに表情がどんどん歪んでいって。

少しだけ考える風な仕草の後、花井の口から恐る恐る言葉が紡がれる。

「…あー…、ったく……!
………わーったよ!ホラ、さっさと行くぞ!」

「へへっ!やっりー!!花井大好きっ!!」

歩き出した花井の広い背中に飛び付いて、その温もりを存分に体感する。

暖かくて、優しくて、心地好くて。

「あちーよバカ!」って言われたけど、離してやんない。
ゲンミツに!

無理矢理引き剥がされたら、今度は腕を絡めて歩くんだ。


…花井は、オレが寂しがり屋なのわかってっから、放っとけない。

──そんな、誰よりも優しいヤツ。


花井は常識人だから、オレの気持ちになんかこれっぽっちも気付いてくれないけど。


…だから、報われないその気持ちの分、小さなウソの一つや二つや三つくらい、許してもらえるよな?

…あれ?…オレ、もっといっぱい花井にウソついてるかも。


……でも、どんな手段を使ってでも、一秒でも長く花井と一緒にいたいから。

花井の匂いと温もりに包まれて、幸せな気持ちのまま眠りたいから。



───いつか、この想いを打ち明けられる日が来るのなら。


その時は、とびっきりの笑顔で言おう。


花井のコト、大好きだって───。


その時は、ぜってー逃がさねぇから!!


覚悟しろよなっ!花井っ!!



fin...



あとがき(仝ω仝)
アンケお礼小説です。
久々のタジハナ!というか、花←←田!(笑)
身体的なリバは私の中では無いですけれども、花←←←←田はめちゃくちゃ有りです(笑)
「リバも有り」って表記していたのはサイト開設当初だけだったにも拘わらず、覚えていてくださった方がいらっしゃって感動致しました!!
本当に有難うございます!
少しでも、貴女のお気に召されます事を祈って───



08.5.5
雛月美里



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