あと二分、極上の幸せを(水×栄+西浦)
『ねぇ、栄口!
オレ、栄口のコト誰よりも大好きだよ!
ずっとずっと好きでいられる自信だってあるし、もし栄口が別れたいって言ったって、オレは別れたくないってワガママ言っちゃうかもしんない。
栄口の優しいとこも、寂しがりやなとこも、たまに叱ってくれるとこも、全部、全部大好き!
栄口と付き合えるオレは、きっと世界一幸せ者!
オレは栄口の為なら、火の海にだって水の中にだって飛び込んでいけるんだ。ホントだよ?
出来るコトなら、将来は栄口と結婚して、庭付き一戸建ての家を建てて一緒に暮らしたいな。
休日は子供と公園でキャッチボールしたり、家に野球部のヤツらを呼んでバーベキューとかしたり!
家が広ければ、犬とか飼ってみてもいいよね。アイちゃんみたいになついてくれる犬がいいなぁ!
この願いが叶うなら、オレはなんだってするよ!
だから、栄口。
オレのコト、ずーっとずーっと好きでいてね?
From.栄口のコトが大好きな水谷文貴』
あと二分、極上の幸せを
ある日の休み時間。
7組の教室で、頬を赤らめながら恥ずかしそうな声でオレが書いたラブレターを音読しているのは………
───泉と阿部。
「ぶはっ!!はっ、浜田ー!!何か飲むモンっ!飲むモン買ってこい!笑いすぎてノドかわいた…!!」
「ハイハイ…オマエらもいる?」
「あー浜田、オレもいる。榛名牛乳な。あと三橋に同じモン二つ」
「遠慮ねーなァ阿部…花井と田島は?」
「オレはいーっすよ!」
「オレ牛乳ー!!」
「はいよ!じゃーちょっと行ってくるわ!」
教室を出ながらヒラヒラと手を振った浜田は、購買に向かって歩いていく。
「オレは栄口の為なら…っ!!ひー!もーダメ!笑いすぎて読めねーよ!阿部パス!」
「オレだって口に出せねェよ!よくこんな恥ずかしーモン書いたなクソレ。つーかオマエ男同士で結婚できるとか本気で思ってんじゃねェだろーな。ついでに言っとくけど子供はもっと無理だぞ」
「ちょっ!!いくらオレでもそこまでバカじゃねぇって!!…てゆーかなんで阿部と泉がソレ読んでしかも笑ってんの!?それは栄口の為に徹夜して書いた大事な大事なラブレターなのに〜っ!!」
「マジで!?オマエコレ徹夜して書いたのかよ!?くはっ……!ヤベ、死ぬ…!マジ笑い死ぬ…!」
「花井、花井。これ英訳しろよ。ンで次の勉強会ン時使おーぜ」
「使えねーよ!テスト範囲の勉強しろよ!」
「オレも花井からラブレターもらいたい!!ゲンミツに!」
「ちょっと黙っとけ田島…」
「牛乳買ってきたぞー。ほい、泉…って泉!?どーしたんだよ!?」
泉は『く』の字で床に這いつくばって、腹を抑えている。
どうやら笑い過ぎて声も出ないらしい。
「サンキュー浜田。ほら、三橋」
阿部は浜田から牛乳を三つ受けとると、内二本を三橋に渡した。
とそこに、栄口と巣山が並んで廊下を歩いてきた。
理科の教科書や筆記用具を持っているところを見ると、次の時間は移動教室らしい。
「あっ!栄口〜っ!!」
それに逸早く気付いた水谷は、大型犬よろしく栄口の元に駆け寄っていく。
「あれ、みんなそろってんだ?…あ、そーだ水谷!授業中にメールすんのやめろよなー!ちゃんと授業聞かないと次のテスト赤点になるぞ?…ってあれ?泉どーしたの?そんなトコで寝て」
腹を抱えながら床に突っ伏している泉を見て、栄口が問う。
「さっ…栄口…っ!っくは…っ!…わ、笑いすぎてハラ痛ぇのっ…!」
「笑いすぎて?なんか面白いコトでもあったの?」
「…あー、栄口。コレ水谷からオマエ宛の手紙。…じゃ、オレら次の授業の準備あっから。三橋、オマエ次体育だろ?走り回ってケガすんなよ!」
「うっ、うん!わかったっ!」
三橋はコクコクと頷く。
その素直な様を見て阿部は破顔し、人目も憚らず三橋を抱きしめた。
「コラ阿部っ!ココ教室だっつの!」
花井はクラスメイトたちがクスクスと笑いながら此方を見ているのを気にしつつ言った。
「花井花井っ!オレももー行かなきゃだからさ!…はい!」
そう言って田島は花井のシャツの裾を掴み、目を瞑る。
「…?なんだよ?」
「何ってチューに決まってんじゃんっ!オレら体育の後は移動教室だから、この後二時間も会えねーんだぜ!?」
「バカかオマエはっ!ココ教室だぞ!?みんないんだぞ!?TPOって言葉知らねーのか!!」
「『てぃーぴーおー』ってなんだ?(`▽´*)」
「………オマエ、次の土曜の約束ナシな。その日は朝から晩までみっちり英語教えてやる」
「ええっ!?なんでっ!?ヤダよ!!花井が珍しくデートしようっつーから楽しみにしてたのにー!!」
「当たり前だろっ!っつーか教室でそーいうコト言うなっつの!!」
ギャーギャー喚く田島たちを余所に、栄口は阿部から受け取った手紙をじっと見詰めていた。
そして数分後、徐に顔を上げ、
「巣山、ワリ!先行ってて!」
と笑顔で言う。
巣山は苦笑しながら「早くしろよー」とだけ言い、理科室に向かって歩いて行ったのだった。
そこに残されたのは栄口と、手紙の感想を待っている水谷のみ。
「……ねぇ、水谷?」
「なっ、なぁに!?栄口!」
「コレ、みんなに見られたの?」
「…うっ…………うん……?」
水谷は栄口の笑顔にほんの少しの恐怖を感じながら頷く。
…そして、次の瞬間。
「………何書いてんのさこのバカっ!こんなのほとんど毎日言ってるんだからわざわざ手紙に書くコトないだろっ!コレ読まれたかと思うとオレ恥ずかしすぎてもうみんなと顔合わせらんないんだけど!もーホンット水谷のバカバカバカバカっ!!」
栄口は火山の噴火の如く一気に言葉を吐き出すと、ノートに何かを走り書きして、その部分を破って小さく折り畳んで、水谷の手に強引に渡した。
「はい、コレっ!!」
「こっ、コレなに……?」
「オレが今一番言いたいコト書いといたから!」
栄口はそう言い残すと、理科室に向かってバタバタと走っていった。
その場に取り残された水谷は、心臓をバクバクさせながら渡された紙を見詰めている。
…えっ!?えっ!?一番言いたいコトって…!まさか…まさか別れたいとかそーゆーコト…!?栄口、恥ずかしがり屋だし…っ!でっ、でもでも、あれは手紙をムリヤリ取り上げた阿部が悪いんだしっ!…ああっ!!でもさっき授業中にメールすんなって怒られたんだった!や、やっべぇ!オレマジで愛想尽かされちゃったかも!?うわあ〜どーしよどーしよ〜!?
グルグルとそんなコトを考えつつ、水谷は恐る恐る折り畳まれた紙を開いていく。
内心、とんでもない恐怖を感じながら。
そして開ききった紙を見ると、そこには栄口の可愛らしい文字で一言。
『オレも大スキ』
それを見た水谷は何秒か放心した後、両手でガッツポーズをとり、
「栄口〜〜〜っ!!もーホンット大好き大好き大好きっ!!」
と時間も場所も憚らぬまま叫び、何度も何度もそれを読み返したのだった。
──水谷が次の授業の担当教師に怒られるまで、あと二分──。
fin...
08.5.1
悠久幻想世界/雛月美里
あとがき(仝ω仝)
アンケートお礼小説第一弾、水栄です。
というよりは、水×栄+西浦ですね。
やっぱり水栄ほのぼのカップルは人気が高いですね。スキダ(´∀`)←
榛名牛乳は、ウチの近所に工場があります。
小学校の頃は給食に必ずこの榛名牛乳が出ていました(笑)
埼玉には多分出荷してませんけどね榛名牛乳…。←
それにしても完全にギャグですコレ。←
水谷の扱いが酷すぎる件!
/(^o^)\
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